集中治療

輸液と生理学②補稿/血漿増量剤について

(1)まず適応のはなし。

前項の復習だが、ボルベンの方がへスパンダーに比べて適応が広い。
一般的にボルベンの方を使うことが多いのでこちらを説明する。

 

①生理食塩水が基材
②出血の有無に関わらず使用可能
③血管内にほとんど100%残留する
④50ml/kg/dayまで使用可能(ヘスは1Lまで)

 

つづいて、Alb製剤。
幅広い適応があり、使うとよいのだが、HES製剤と比べて圧倒的高価であることがデメリットとして挙げられる。適応などについては「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」がよくまとまっており一読されたい。
よく使うケースとして想定される
・Hypovolemic shock
・septic shock
についての記載を読むと、どちらも推奨されないとされる。
特にsepsisにおいては、Albではなく、晶質液を使用するように記載されている。
これはALBIOS studyなどのRCTにてAlb製剤による死亡率減少を認めず、晶質液と有意差がないことに起因する。

(2)アルブミン製剤

①デメリット

・Alb製剤は一般的な輸液のみと比較して、予後を改善しない。
それどころか、熱傷や低アルブミン血症の患者に対しては予後をかえって悪くする
PMID:9677209

②メリット

・Alb製剤は投与することで抗炎症作用をもたらす。
cf. Critical care 2015;19:156
・Alb製剤は一般的な輸液のみと比較して、敗血症性ショックの患者に対して死亡率を下げる。PMID: 37762860
デメリットのRCTは1998、メリットのmetaは2023であるが、現時点でどちらが正しいかといいきるのは難しい。
実際、中身もいいもの悪いものとされるものが分散されており、判断に苦慮する。
包括して考えると、sepsisはよさそう、熱傷は悪そう、である。
基本的にはアルブミンは先述の通り、「血管内」にすべて留まるはずである。
しかしながらそうはいかないのは、細胞間質に漏れ出る経過を辿るからである。
それはなぜか、下図のよる、間質との間にはGlycocalyxという線毛のようなものが存在している。
下図のintactつまり、健常なglycocalyxが保たれている時には、凝固のコントロールや、アルブミンが漏れ出るのを防ぐことができる。(左)
しかしながら、敗血症やその他の重症病態の患者ではそうはいかず、Degraded(中央)のglycocalyxとなる。Glycocalyxが剥げ落ちていき、細胞間接着が緩んでいく。
その結果、Alb含めた種々の蛋白質などが漏れ出てしまうのである。
そのため、Alb製剤などを用いていきたい重症病態では特に、これらの製剤が計算通りにうまく機能しないことを頭にいれておく必要がある。

 

(3)へスパンダー

リンゲル液とHESで比較した場合、HES使用の方が死亡率が高いとされる。
また高容量は低容量と比較して死亡率が高いとされる。
これらがなぜ起こるかは下記の結果から推測される。

上記を見てみると、HES使用にて腎障害が起きやすくなるからであると考えられる。
HESなどの超高分子量の物質にて腎性のAKIが新規におこるためであると考える。
cf.N Engl J Med 2008;358:125-139
結論として、いってもいいが、いかなくてもいい。明確な差を設けることは現時点でのstudyからは難しい。
sepsisでは少し行くか悩むが、熱傷などその他の病態に関しては少なくとも現時点では優位性なく、晶質液にて管理し、その他の全身状態としての管理に注力すべきである。
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野戦寄りの病院で救急医をしております。

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