循環器

Af:atrial fibrillation/心房細動

[0]原理

肺静脈の周囲の心筋の線維化/自動能の亢進→
多くは一箇所のリエントリー回路(@(左上)肺静脈が最多)をぐるぐるしたもの=circle in circle
→そのデタラメな電気信号がAV結節に伝わり結果として心室がデタラメに拍動する
micro re-entryであり、小さなリエントリーが数多く存在する。これは肺静脈なら肺静脈から発したものが心房内周囲の多数のリエントリー回路を刺激するために起きているのである。
このリエントリー回路が発生してしまうと持続的になってしまう。

疫学)75歳以上では3人に1人

原因は肺炎と手術の2台巨頭と言われる

それ以外としては
アルコール,MI,PE,甲状腺機能亢進症

アルコールは女性なら1U/day,男性なら2U/day以上でリスク

その他のリスクは
加齢,男性,冠動脈疾患,HT,肥満,喫煙,DM,SAS,一親等以内のAf

覚え方は[PIRATES]

PE
Ischemia,Inflammatory,Idiopathic
Rheumatic heart disease
Anemia,Alchohol
Thyroid disorder
Electrolyte(Mg↓), exacerbation
Sepsis, SAS

[1]症状

動悸,易疲労感,失神

呼吸困難←肺水腫,狭心症

各LR+
脳卒中 M 4.0 F 5.7
心不全 M 1.4 F 1.4
死亡率 M 2.4 F 3.5

[2]診断

「心房細動」の診断
①条件
・RR不整
・P波の消失
・細動波
(f波:300-600bpm)の存在(慢性化していると見えないこともある)
→P波、f波は判断難しい/ 特にII、V1誘導で判断しやすい

②分類
・初発Af
・発作性Af→発症7日以内に洞調律に戻るものを指す、多くは48時間以内に戻るもの。
・持続性Af→7日を超えるもの。
・永続性Af→除細動できないもの、薬剤や電気を試した上で診断する。
・孤発性Af→60歳以下で器質的心疾患/HTの既往がない患者に生じたもの。

1

)これはそのままでf/uでいい?      (rhythmやrateをどうするか?)

AFFIRM(NEJM2002)=無理やりrhythmを治すとrateコントロールだけより予後が悪い
AFーCHF(NEJM2006)=心不全のptでも不整脈を戻しても戻さなくても予後が不変

・CXRを撮影する
心不全に至っていないか、またPMなどが挿入されていればpacing不全なども原因としてあり得る。
肺炎がtriggerになることもあるのでこれも見にいくことができる。

2)今治療が必要なもの

・「まず最初に、橈骨を触れる
Tachyの度合いによって血圧が変動する
心房細動によって循環破綻していないかの確認をしなくては

・「頻脈性心房細動に伴って、循環動態が破綻している場合」→「いしき心配」で覚える
い 息切れ
し ショック
き 胸痛
+意識障害
心 心不全、心筋梗塞
配 肺水腫

→ここまで至らないように120bpm以下にするのだが
(150を超えると起きだす)
これら循環動態が破綻している場合、もしくは48時間以上症状持続している場合は電気的除細動を
またMI合併はない?それも確認しておく。
その後抗凝固を施行する。
ヘパリン を持続投与して、APTT を確認していく

終わった段階でワーファリンに切り替えていく

・HR>200??

無いことはないが、基本的にAf単身でここまでtachyることは少ない
pseudoVTではないか?という疑いの目を持って
WPW-basedではないのかをしっかりと確認する
→勿論rate controlerは使えないので!!!

3)今は必要ないが、近いうちに積極的治療が必要になるケース

ベースとしての心機能を確認するために後日TTEは入れておく。
弁膜症の有無、心不全の有無など確認できる。
またAfそのものが「48時間以上症状継続しており、3週間抗凝固療法がなされていない」場合、血栓の可能性がグッと上がりを否定できない。
そのためこちらの場合はTEEを推奨する。

Afによって心不全を起こしそうな人、そのAfが日常生活に支障をきたすほど不快で
ある人
→積極的に抗不整脈薬やカテーテルアブレーションを使うべき

→アブレーションは左上LVのところを焼く

rateはstrict(80以下)だと予後が悪い→80-110が目標になる

1st β-blo (喘息や心不全がないか確認すること)
①metoprolol
5mgを5minかけてi.v. 効果がなければmax 15mg/dayまでokだが…国内では未採用
①propranolol(インデラル®︎)
1A/2mg
2-10mgを経静脈的にゆっくり投与する。
②landiolol(オノアクト®︎)
心不全患者にはこちらを
1μg/kg/minで開始 10μg/kg/minまでは漸増可能
ex) 50kgの患者に
50mgの本剤を50ccに溶解し投与すると3cc/hrで1μg/kg/min
ガッツリ血圧落ちることもあるので、しっかりモニターしておくこと

※上記2剤のいいとこ・悪いとこ

インデラルは基本的に喘息や心不全には慎重〜禁忌。
オノアクトは使用できるが、モニターは厳密に。
これはβ1/2の選択性の違いに起因する。
プロプラノロールはβ1:2 が1:1.8
ランジオロールはβ1:2が277:1
このためβ2に作用することがないプロプラノロールは呼吸器合併症の患者にも使いやすい。
因みにランジオロールは元々術中管理として始まった薬である。これは半減期が4分と極めて切れ味が良いために、調節がin-outともにしやすかったという点に起因する。
またランジオロールの圧倒的に他の薬剤と違う点として膜安定化作用(キニジン様作用/membrane-stabilizing activity(MSA))がないことが挙げられる。
これはNaチャネルを遮断し、心収縮を抑制する役割を指す。これがないことにより、下記Ca-Bloの際に取り上げる陰性変力作用のように心機能をある種無視することができ、HFrEFでも使うことができる。
上記では挙げなかったが、エスモロール(ブレビブロック®︎)というこちらもβ1選択性が極めて高い(20:1)注射用β遮断薬が存在するが、これはMSAがあるために低血圧の危険性があり、喘息では使えるかもしれないが、循環動態が不安定な患者で使用することは難しいと考える。

2nd Ca-blo

※Ca-bloのうち選択するのはnon-dihydropyridine系(ワソラン(verapamil),ヘルベッサー(diltiazem))
は血管拡張作用が少ない→頻脈になりにくい
陰性変力作用(+)

逆にdihydropyridine系(アムロジン,ノルバスク,ペルジピン,バイロテンシン,アダラート,コニール,カルスロット)
は血管拡張作用が強く,低血圧になる→頻脈を惹起してしまうことがある
頻脈→酸素需要の増大→虚血性心疾患,心不全の増悪
となることがあるので、このケースでは基本的には使わない。
(使用するのであれば、β遮断薬との併用だがあまり望ましくない)

verapamil→5-10mgを5minかけて i.v.
diltiazem→0.25mg/kg  を5ccに溶いて i.v. bolus

4)脳梗塞のrisk

Afのptは左心耳のところに血栓ができやすい、エコーで見る

抗凝固を始めるタイミング…
→CHA2Ds2-VASC score 2点以上で 開始(脳卒中リスク2.2%/yrs)
・CHF(鬱血性心不全) 1点
・HT 1点
・Age>75  2点
・DM  1点
・Stroke 2点
・Vascular disease 1点
・Age 65-74 1点
・Sex category→ Female 1点

脳卒中リスク/yrs
0点 0% 6点 9.8% 7点 9.6% 9点 15.2%
4点以下は概ね点数と%が一致

[4]治療

DOAC or warfarin(2、9、10を止めに行く)
(抗血小板薬は役に立たなかった)
but頭蓋内出血のriskが2-5倍になるとされる(PT-INR 2-3にkeepした場合)
CHADS2 1点あれば治療開始して良いとされる
1st rate controler

ダビガトラン(トロンビン阻害)
リバロキサバン(第10a因子阻害)
しかし基本的には出血のriskという点が改善したわけではない

 

※抗凝固薬を詳しく

実際にワーファリンとDOACのどちらを選択するかを迫られた場合に、基本的にはDOACの方が有用なケースがほとんどである。
DOACのwarfarinへの優位性として
・INRの確認が不要
・投与量調節が不要
・出血リスク(特に頭蓋内)が低い
・ヘパリンブリッジが不要(半減期の差)
・他の薬剤との相互作用が少ない
ことが挙げられる。
基本的に以下のように考えて選択していけば良い。
(1)弁膜症か?
機械弁やリウマチ性MSなどによって起きた弁膜症性心房細動、またそれに伴うものとしての心原性脳塞栓症についてはDOACの適応がない
そのためwarfarinを選択する
Q、生体弁ならOK?
本来、非弁膜症に準じていくべきだが、未だにDOACの生体弁に対する確固たるエビデンスが存在しない
現状は3ヶ月間のワーファリン→その後からのDOACswitchが推奨されている
↓非弁膜症であれば(2)へ
(2)腎機能は問題ないか?
閾値としては基本的にはCCr>30
それ以上であれば基本的にDOACを使って良い
(3)CCr<30の症例には
この場合DOACが原則禁忌となり、基本的にはwarfarin推奨に戻る
リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンは15-30まではOKではあるが…
透析患者などではwarfarinはDI上、原則禁忌となっている
機械弁、脳梗塞など上記のように使用せざるを得ない状況ではやむなくwarfarinを選択する
(4)DOACはどれを使えばいいのか
・ダビガトラン(プラザキサ)
・リバーロキサバン(イグザレルト)
・アピキサバン(エリキュース)
・エドキサバン(リクシアナ)
ざっくりいうと、ダビガトランだけ異種な感じ。
・targetがこいつだけトロンビン(他はXa因子)
・プロドラッグ(加水分解されることで活性化)
・リバースできちゃう
・DVTにはこいつだけ適応がない
・腎機能への閾値が高い(こいつだけは殆どが腎排泄)
・カプセルなので粉砕できない
・DOACにしては半減期長目(>12hr)
・CYP3A4を唯一介さない
ただ一番古いだけあって(あまり変わらないはずだが)、一番エビデンスが多い(いい意味の)のも事実であり、DVT、腎機能、嚥下だけclearすることができれば使用で良いと思われる。
因みにイトラコナゾールは併用禁忌
著者は個人的にはリバーロキサバンが好き。
・1日1回で良い
・Bioavailabilityが100%
・細粒OK
・腎機能がある程度まで無視できる(CCr>15ml/min)
・減量基準が腎機能のみ
しかしやや高価であることはネック。
またアゾール系抗真菌薬は併用禁忌
また脳梗塞後の二次予防としてなら、個人的にはアピキサバンを選択する。
・脳梗塞や塞栓症状への優位性認めている
・腎機能がある程度許せる(脳梗塞患者は腎機能まで悪いことが多いため)
リクシアナは下肢DVT予防に関して言えば他剤より優位であり、こちらを選択する価値がある。
Low-Dose Edoxaban in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation(N Engl J Med 2020; 383:1735-1745)
という表題の研究があり、これは超高齢者のAf患者に対してDOAC使いたいけど、、、、そんな時に低用量でリクシアナ(15mg)を使ってみたらという研究である。CHADS2 2点以上のAfで、腎機能はCCr15を守って平均86.6歳の超高齢者に使った場合をみた。有意に血栓症は減少し、大出血の頻度は非使用群と有意差はなかった。
これに伴ってリクシアナ15mgが使用できるようになった。
抗血小板薬を使用している、NSAIDsの使用、CCr 15-30、大出血の既往、45以下の低体重のいずれかがあれば、その時点で超高齢の場合15mgの採用が望ましいとされる。
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aas
野戦寄りの病院で救急医をしております。

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