cf. MKSAP
(1)VPA/valproateとLEV/levetiracetam
商品名でいうと、デパケンとイーケプラ。
本邦でてんかん患者のコントロールに使われている薬剤として圧倒的2強。
それぞれ勿論いい所、悪いところがあるので列記する。
①デパケン(400-1200mg/day)
・超絶安価。
・全般性にはイーケプラに非劣勢、focalでは劣勢のため基本的にはイーケプラに譲るが、十分に使う価値はある(報告のはずだが)なぜだか、focalの選択肢にVPAが入ることはないように思う。(LTG, それでもダメなら、TPMなど)
・催奇形強い
・LTG, CBZとの併用でこれらの薬剤の血中濃度が上昇するためコントロールは難しい。
②イーケプラ(1000-3000mg/day)
・高価。VPAの約20倍。
・geneにもfocalにも使用可能。
・少なくともfocalでは1st。geneではVPAと二分する。
・妊婦に使用できる。
・warfarinとの併用可能。
・副作用少ない。
基本的に、現在イーケプラに傾きつつあるのは、薬価以外欠点が殆どないからである。
ここでfocalとgeneralizedの選択肢を列記する。
①focal
1st LCM
2nd LEV or LTG
ここでLTGについて。
Lamotrigine(ラミクタール®︎) (100-200mg/day)
generalizedにも適応は十分にある。
LEVに劣るところは副作用であり、特に皮疹が挙げられる。
Stevens-JohnsonのVPA, CBZに継ぐ頻度であり、VPAと良く併用した患者が居たが、有意に頻度が高かった。
そのため、本邦においては皮疹を避けるために25mg/dayから漸増していくことが推奨される。上記の維持量に達するまでには4週はかけることとされる。
②gene
以下を考慮して選択する
(2)特定の患者に対して気をつけなければいけないケース
①肝障害
・重度であればVPAは使用しない。
②腎障害
・LEV、GBP、pregabalinは腎機能に伴って減量すること。
③妊婦
・LEVとLTGは催奇形性が低い。
・LTGはミオクローヌス悪化などのリスクはある。
・そのため基本的には妊婦はほぼLEV一択。その他は基本的に禁忌だと考えて差し支えない。特にVPAは強い催奇形があり(10.3%の頻度)絶対禁忌。もしどうしてもVPA出なくてはいけない場合は、家族に説明の上で70μg以下にキープする。
・ルーチンとして抗てんかん薬を妊婦に処方する場合は葉酸を同時に投与する。殆どの抗てんかん薬が葉酸量を減らすとされているためである。
(フォリアミン5mg3xで良いと思う)
2ndはLTG(ラミクタール)で。
他に最悪選択肢になりうるならTPM, ZNSだろうか。
④高齢者
・GBP、LTG、LEVが第一選択。
・全般予防ならVPAを選択するので良い。骨粗鬆症の副作用に注意する。
⑤精神疾患を考慮する場合
・全般発作の場合にはLTGが良い。LTGは双極性障害にもFDAで承認されている。
・部分発作の場合にはVPA、PHT。
(3)その他の副作用
①骨粗鬆症
・CBZ・PHB・PHT・VPAは骨粗鬆症のリスクあり。
・カルシウムやビタミンD製剤を内服しても、抗癲癇薬による骨粗鬆症は予防できないかもしれない。
(Clin Neurol Neurosurg 2011 Sep;113(7):548, PMID: 21507568)。
②皮疹
・PHT、CBZ、PHB、LTGは皮疹のリスクが高い。
・特にLTGはStevens-Johnson syndrome(SJS), toxic epidermal necrolysis(TEN)等のリスクがある。アジア人は(HLA-B * 1502対立遺伝子が陰性でなくても)避けることが望ましい。
③低Na血症
・CBZ、VPA、oxcarbazepineは誘発しうると考えて良い。
(略語)
フェノバルビタール(PHB)、フェニトイン(PHT)、バルプロ酸(VPA)、カルバマゼピン(CBZ)、ラモトリギン(LTG)、ガバペンチン(GBP)、トピラマート(TPM)、ゾニサミド(ZNS)、レベチラセタム(LEV)
※focalとgeneralizedの違いについては別項で説明する。
注意だが、私はてんかんを専門にしている医師ではない。細やかなコントロールは数ある分野の中でも非専門医にとって敷居の高いところだと考える。ただ数あるガイドラインから抽象化したつもりで外すことはないと思われる。が、現場の肌感覚としてこちらの方が効くけどねみたいなspecialtyに富んだことは言えないが御容赦頂きたい。
むしろ、ここはこうでは?という指摘があれば個人的に研鑽のためにいただければ有難いと思います。