ER-症候別

CT読影の基礎知識ー①頭頸部

【1】頭部

BBBが存在し、造影効果が見られないため、本来は基本的には単純のみであるはずである。
そんな中造影が有効なケースが二つある。
①BBBが破壊されている
脳腫瘍などBBBが破壊されているケースは実質に造影効果を認めることがある。
②血管にfocusしたい場合
BBBで乗り越えないはもちろんだが、その前の血管には当然造影剤が回る。そのため脳血管の造影、脳梗塞の局在、変化を見るpesufison CTは十分に意味がある。
また読み方は、

(1)WL 35 WW 70で出血および高吸収/低吸収の評価をする。

(2)実質以外(SAH,硬膜外/下など)の評価をする。

(3)脳室の評価をする。
(4)(余裕があれば…)眼、骨、耳鼻科領域の評価を。
大脳皮質(灰白質)のCT値が35であり、ここを中央値に設定し、そのままその「大脳皮質と比較してどうか」ということを評価したい。

(1)高吸収の評価

「どれくらい高吸収か」
1)すごい高吸収→骨と同じレベル=石灰化
これはほぼ間違いない。
特に、淡蒼球、松果体、脈絡叢、大脳鎌、くも膜顆粒は生理的な石灰化が生じることの多い部分であり、こちらを考慮する。
壁内石灰化として、動脈瘤や脳動静脈奇形(AVM)なども頻度として少なくないので、疑われる部位、形状であれば考慮すること。
2)やや高吸収=CT値50-80→出血
粘度、経時によって変化するも、概ねこの範囲内。
超急性期は新鮮(50-70)→急性期は少し粘度上がる(65-80)→亜急性期以降は血球成分が壊れ実質と同じレベルまで(35-45)
Feを反映して高吸収となる。そのためHt値が上昇すれば、CT値も上がる。
①との分類するためにWWを変化させると良い。
このレベルであれば概ね出血だが、その原因が高血圧性のものなのかどうかを判断する必要がある。
※CT値≦94????
Ht=100の時の血液成分のCT値=94なので、原則としてこれを超えることはあり得ない。
①高血圧性出血
低吸収域は殆ど伴わず、血腫の周りは殆ど実質と同レベル。
もちろん少しはあるが、血腫による圧迫に伴う軽度浮腫を反映している。
HTであり、血管リスク高く、場所が被殻(40%)、視床(30%)、皮質下(10%)、脳幹(5%)、小脳(5%)であればこちらだろう。
②非高血圧性
血腫の周りに広範な低吸収域を伴う。
①と違い、血腫がメインなわけではなく、梗塞、腫瘍、炎症性疾患、血管奇形など背景疾患に伴って見えているものであることが多い。イメージとしてはこちらは低吸収のところに高吸収ができている感じ。
またこちらはその低吸収のもの次第なので、(1)と比較して範囲が綺麗じゃない。
(d/d)
出血性脳梗塞、AVM、もやもや病、静脈洞血栓症、脳動脈瘤破裂、アミロイドアンギオパチー、脳炎など
3)ちょっと高吸収→CT値40-50→腫瘍?
境界明瞭にCT値がほんの少し高いという場合はこちらを考慮すること。

(2)低吸収の評価

①細胞性浮腫
基本的には脳梗塞や炎症性疾患を考慮。
こういった疾患に伴い、脳細胞への酸素供給が滞った場合に好気代謝ができず、Na/K-channelが回らずに細胞内Na濃度が上昇する。水も上昇して浮腫が生じる。
early CT signではこの細胞性浮腫を反映したものであり、比較的想起から出現する。
(d/d)脳梗塞超急性期、低酸素脳症、MELAS、ヘルペス脳炎
②血管性浮腫
何らかの原因でBBB(血液脳関門)が障害されることで、血管内からAlb等の蛋白が漏れ出る。一緒に水分が引っ張られることによって3rd spaceでの浮腫が起こる。
(d/d)脳梗塞急性期以降、脳腫瘍/膿瘍周囲の浮腫、脳挫傷、MELAS、PRES、静脈洞血栓症、Wernicke脳症、抗生剤関連脳症、CJD、神経膠腫、NMO
脳梗塞においてDWI-FLIAR mismatchなどあるが、これは超急性期には細胞性浮腫が生じ、その後は血管性浮腫も生じるところに起因する。
※fogging effect
10d-2w程度の亜急性期脳梗塞において低吸収域が一転正常範囲の灰色に転じる時期がある。このくらいの時期では再開通や側副血行路ができ、炎症細胞の浸潤で一過性にCT値(X線吸収量)が増えるからと言われている。
1ヶ月以上経つと再度黒色へと変化し、我々が陳旧性脳梗塞を読めるのはこのため。10-2w前の症状変化など病歴聴取をしっかりとすることが重要。
同様にここでMRI撮像すると、ADCが一過性に上昇しており、shine throughに写るだろう。

(3)脳室評価

脳室の狭小化は
①小児例などで満ち満ちている
②梗塞など浮腫から圧排されている
の2択。
②は上記浮腫に基づいて考察すること。
ここでは脳室の拡大について考察する。
①萎縮
②水頭症
のいずれなのかを判断すること。
①脳溝が拡大、円蓋部までスカスカ
②脳溝が消失、円蓋部はパンパン
※水頭症の評価
原因検索を行うが、簡単に以下の2分して行う。
①交通性水頭症
簡単にいうと、①くも膜下腔で通過障害が起きているか、②くも膜顆粒において髄液吸収がなされないのいずれか。
SAH髄膜炎によって起こる。
②非交通性水頭症
こちらは閉塞によるもの。Monro、中脳水道、第3/4脳室によるもの。
周囲の梗塞による浮腫性圧排か、周囲の腫瘍によるもの。
やはり水頭症だと判断した場合には、上記の明らかな原因を単純CTで判断できなかった場合は、(後日でも良いので)造影CT、MRI(脳外科コンサルト)など考慮すべきであると考える。

【2】頸椎

椎体なので、レントゲンで十分そうにみえるが、口や顎骨などで正面像がかぶる。(そのためレントゲン正面像は開口位でみることが必要。小児の回旋位固定などがこれにあたるが、上位頸椎の場合は必ず開口位撮影を依頼すること。)逆に下位頚椎の側面像は肩に被って見づらいことが多々ある。当然CTの方が解像度が高く、外傷例の中心性脊髄損傷、頸椎損傷が考慮される場合は小生は概ね全例CTを選択してしまっている。

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