ERで出会う急性陰嚢症は大きく分けて3つである。
・精巣捻転症
・精巣上体炎
・付属器捻転症
特に精巣捻転は精巣機能の不可逆的な喪失に繋がるため、必ず拾い上げ適切な対応をしなくてはならない。
【1】精巣捻転
(1)疫学
新生児と思春期の二峰性の後発を辿り、特に後者。中学生が最多である。
寒冷環境がリスクとされ、入眠時、起床時に好発である。
解剖上の問題で左が好発であり、右の2.5倍程度とされる。
一度なった患児はリスクがあり、自然解除も頻度が高いため、同様の症状が以前あったか聞いてみることも有効である。
(2)経過
主訴は陰嚢痛、腫脹、悪心嘔吐で来院する。
これらは殆ど高頻度で認める。
上記の疫学が問題なのであるが、好発それぞれが訴えない年齢であることが挙げられる。
(新生児→描出困難、啼泣のみにとどまる/思春期→恥ずかしがって我慢してしまう患児が一定数いる)
特に必要な所見は下記
①患側精巣の挙上、高位、横位
→軸がずれているの違和感を一番最初に持つことが多い印象。
②精巣挙筋反射の消失
→大腿内側をなぞるように刺激すると、精巣挙筋が収縮するため、精巣が挙上する。
捻転がある場合、消失する「ことがある」。
※Prehn sign
精巣を挙上した際に症状増悪もしくは不変であれば陽性。
改善すれば陰性。(陰性であれば精巣上体炎の可能性が高いとされる)
(3)TWIST score
2013年にBarbosaらが提唱した精巣捻転の予測scoringである。
・精巣(陰嚢ではない!)の腫脹 2点
・硬い睾丸 2点
・精巣挙筋反射の晶質 1点
・悪心嘔吐 1点
・精巣の高位 1点
上記で判断する。
0-2点 低リスク(エコーなしで除外可能)
3-4点 中リスク(エコー検査推奨)
5-7点 高リスク(エコーなしで確診)
上記2点、5点でのカットオフによって
陽性的中率、陰性的中率がそれぞれ100%であった。
(Sn 76%、Sp81%)
※鑑別としての、、、
鼠径ヘルニアやIgA血管炎など、腹部症状を反映しているパターンがあるため注意する。
逆に、小生は腹部症状で来た患児も殆ど全例で鼠径部、陰嚢は確認することにしている。
【2】精巣上体炎
精巣の上部背側に位置する精巣上体の炎症。
全身症状としての発熱を呈することがある。
発赤、熱感、腫脹、発熱、同部位の硬結が主訴である。
膿尿、細菌尿は感度が低く、検査にて否定は全くできない。(膿尿 16.9/細菌尿 14.9)
エコーにて血流増加と腫脹を確認する。
精巣の高位、軸が問題なく、精巣上体の圧痛を認め、挙筋反射が陽性であれば上体炎と診断できる。
少なくとも一般的なUTIと原因菌は似通っており、E.coliが最多。
これらをカバーするような内服抗生剤を処方し、泌尿器科へのフォローアップを依頼する。(成人例ではSTDを考慮してカバーすることLVFXなどがいいか)
【3】付属器捻転症
上記2つと比べて頻度はそれほど多くない。
基本的には精巣垂以外の捻転しうる付属器が全患児に存在するわけではないことが挙げられる。
精巣上体垂の捻転なども考慮されうるが、精巣上体垂そのものの有形頻度が34%程度とされる。
【4】急性陰嚢症を見た際の動き
イメージは精巣捻転症かそれ以外かで分けるでよい。
極論は捻転のみ見逃さなければよいとさえいえる。
そのために精巣超音波ができるようになっておくといいが、、、
【5】精巣エコー
設置面の大きいリニア型のプローブを使用する。まずは両側を揃えて観察する。
①左右のエコー輝度が違う?
→捻転による虚血を示唆。もちろん発症初期では出ないこともある。
②左右の大きさが違う?
→腫脹の反映。結局は静脈の還流ができなくなってしまっているので、鬱滞による浮腫像や精巣周囲の液体貯留を認めることが多い。
③カラーが入るか?
→捻転では入らない。患側で精巣上体の血流が増多している場合は上体炎を考慮したい。
④精巣上体を見る
→血流増多での精巣上体炎。また、精巣捻転では精巣上体上部でwhirlpool signを認める。これは精索のねじれをみていることになるが、観察は難度が高い。
rtの血流の途絶、腫脹が見て取れる。
whirlpool signを呈する。