〜胸部〜
評価すべき項目は大きく分けて
・肺野
・骨
・縦隔
・血管
前者二つは、単純で十分。
後者二つは、造影。
どっちもいるケース。
①急性大動脈解離
血栓閉塞型の血栓化している偽腔は単純CTにて早期は高吸収として描出される。
偽腔開存型においてもflapが指摘できることもあるので、単純CTを撮影した場合には必ず他の主訴であっても読影する。
以下今回は肺野について説明する。
【1】小葉中心性とは
まず大前提として
①気管支と肺動脈とリンパ管がセット、肺静脈とリンパ管がセットで走る。
②二次小葉は終末細気管支に代わった部分からを、一次小葉(細葉)は末梢の呼吸細気管支からを指す。
通常であれば呼吸細気管支はCTにおいて見えないため(ここが見えていれば肥厚、ひいては異常所見であるはず)
よく小葉中心性病変の代表例として
・細菌性肺炎
・肺結核
が挙げられるが、これは経気管的に細菌が入ってきて、ここまでたどり着いて分布することで、ここに小さな粒状影や結節影を作る。
これはつまり、一次小葉(細葉)に広がる陰影を小葉中心性分布と呼ぶのである。
ちなみにこの細葉のある部分は胸膜から距離を持って存在しており、胸膜と明らかに離れてうつる。
この時点でわかるのは、よくいう「末梢がspareされる」という表現はこの胸膜との距離、すなわち細葉までに陰影が留まっている事を示唆する。
※大葉間裂→臓側胸膜で構成し、各肺葉をおおうもの。
これが、斜裂とも呼び、左肺を上葉と下葉に分断する。右肺なら、上+中葉と下葉に分断する。
完全に斜めに入っていくため、X線の正面像では確認することができない。(側面像であれば難しいが可能、CTならeasy)
※小葉間裂→逆にこちらは水平裂とよび、足底と平行と考えれば良い。
これが綺麗な水平である患者は少なく、その場合は正面像では斜裂と同様に目視できない。
※奇静脈間裂
縦隔に沿って見られる間裂に奇静脈間裂がある。
これは奇静脈の発達異常によるものであり、病的意義はない。
その他上下に副葉間裂として、上副葉間裂、下副葉間裂があるが、こちらも病的意義はない。
【2】牽引性気管支拡張
周囲の肺胞が破壊されて、線維化を起こしている
その結果引っ張られたもの
【3】consolidationかすりガラスか
大まかにいうと、含気があるか、ないかである。
(1)consolidation
広がり方によって大きく2つに分類する。
・肺胞性肺炎
・気管支肺炎
これらはいずれも「細菌が経気道的に広がっていく」という点では一致している。
その中で、
①気道の流れを無視して肺胞を通じて広がっていく肺胞性肺炎
②気道の流れに必ず沿って区域性に広がっていく気管支肺炎
の2つに分かれる。
①肺炎球菌、マイコプラズマ、クレブシエラ、レジオネラ
②ウイルス性肺炎、マイコプラズマ、その他肺胞性肺炎の初期
※肺胞を通じて?なのに経気道??
まず経気道的に肺胞まで達する。その後、肺胞→肺胞で広がっていく。
つまり、経気道的に肺胞に達した瞬間を見れば、肺胞性肺炎になる細菌群でも画像上気管支肺炎を呈するように映ることがある。
肺胞と肺胞は隔壁がありながらもKohn孔で繋がっている。細菌で満ちた浸出液が移動していくため広がっていく。
だからこそ、気管支肺炎が、割と縦の広がりを見るのに対して、肺胞性肺炎は横の広がりを見る。
肺胞性肺炎は横に広がる、それは非区域性/大葉性であるとも言える。
PCPなどGGOのみ呈する感染症もあるので、「consolidationがあれば基本的には感染症」というのは戴けないが、例外を覚えた上でざっくりならそれでも良いと思う。
(2)すりガラス陰影
すりガラスを見たら
基本的には最悪のケースとしてのIIPsを想起するところから。(そこからのムーブでよく、そう思えば帰宅させることはないだろう)
それをおいて
ニューモシスチス肺炎とウイルス性肺炎を鑑別に入れておく。
前者は状態の悪さ、compromised hostという背景などがあれば考慮し、検査をする。
後者であれば、インフルエンザやCOV2などを考慮して検査をする。
増悪し始めれば鑑別は容易だが、病初期であればこれら2つを鑑別することは非常に困難。
【4】CT halo sign
結節影の周囲をすりガラス影がまるまる取り囲んでいる所見
出血 もしくは 強い炎症が波及している
と疑う
代表的なものは侵襲性アスペルギルス症
その他
・敗血症性肺塞栓症
・GPA/Wegener肉芽腫
・肺クリプトコッカス
・好酸球性肺炎
・転移性肺腫瘍、malignant Lymphoma(腫瘍細胞の浸潤でも起こりうる)
【5】造影剤アレルギー
※造影剤アレルギー患者にどうしてもCTを撮影したい場合、ステロイドの前投与は効果があるか?
結論からいうと、明確なエビデンスはない。
しかし、例えば強く、肺塞栓や大動脈解離を疑っており、背に腹は変えられないケースも存在するだろう。
その場合は「一応」投与してから撮影することにしている。
ACRのプロトコール(ACR Commitee on Drugs and Contrast Media 2021)をここに記載しておく。
①プレドニン 50mg を撮影13時間前、7時間前、1時間前に経口投与する。
②メチルプレドニン32mgを撮影12時間前、2時間前に経口投与する。
③デキサメタゾン7.5mg、ベタメタゾン6.5mgを点滴投与する。
※1 ①、②については抗ヒスタミン剤を併用することが考慮される。
実際には小生はデキサメタゾンを使用する。
造影ルートがあるため経口である必要がないこと、また造影剤アレルギーを考慮しなくてはいけないケースにactiveな喘息患者があると思うが、その場合、アスピリン喘息例を失念してはならない。
その場合、コハク酸エステル型のステロイドは禁忌である。
そのためリン酸エステル型ステロイド、即ち、リンデロンやデキサメタゾンを使用したい。①で経口も問題ないだろう。
※ちなみに喘息患者はどれくらい造影剤アレルギーがでるのか?
10倍のリスクとされる。通常例で0.03%で喘息患者なら0.3%である。
これとbenefitを考慮した時にどうか、、である。
cf.PMID 2343107