ER-症候別

PE/肺塞栓症

【1】症候と感度

胸痛 Sn 66-74
息切れ Sn 74 Sp 38
喀血 Sn 7-28
失神 Sn 8-35

【2】重症度分類

①massive PE→循環破綻、ショックをきたす広範型
②submassive PE→ショックはないが、右心負荷を認めるもの
③non-massive PE→血圧正常かつ右心負荷所見がないもの
に分類される。
massiveであることがt-PAや血栓除去の条件であるなど、瞬時にこれはpresentationできるようになっていた方がいい。

【3】診断

頭によぎったら
D-dimerの上昇(Sn98,Sp40=除外診断に有用)→but Wells 4点以上ではD-dimer陰性が否定材料にならないので即時の造影CTを
Wells≦4点+d-dimer陰性→Sn 94.5 Sp 51.0(BMJ 345 2012:e6564)
とはいえD-dimerは高ければ範囲が血栓の広い可能性を示唆しているのでそういう意味では有効
怖かったら造影CT(こっちは確定診断)、エコー
〈Well’s score〉=PE,DVTのscore管理-DVTsABC
*DVT sign;DVTの症状や臨床的なサイン:3点
*Vague Dx;他疾患よりPEが疑わしい:3点
*Tachycardia;HR>100:1.5点
*Surgery/immobolization;運動制限(安静3日以上)or 4w以内の手術:1.5点
*Again?;PE、DVTの既往:1.5点
*Bloody sputum;喀血:1点
*Cancer;悪性疾患がある:1点
>6点:PEの可能性大
2-6点:中等度
<2点:小

Q1.若年のリスクがなさそうな胸痛患者にCTを行くのか?

①(PERC/PE Ruled out Criteria)

・Hemoptysis
・Exogenous Estrogen
・Age>50
・Recent trauma/Surgery
・Tachycardia
・PMH DVT/PE
・Unilateral leg swelling
・Probability for PE
全て陰性であればSn 97.4
D -dimerの検査不要
JThromb Haemost.2008 May;6(5):772-80

②4PEPS (4-level pulmonary embolism clinical probability score)

cf. 37816274
・年齢関係なく使用できる
・very lowならrule outだが、少しでも疑った状態でvery lowに該当することはなさそう、、、

Q2、ABGは?

PaO2の低下(Sn 74)
A-aDO2の開大 (Sn 62-86)
呼吸性アルカローシス(CO2↓) (Sn 40)

Q3、ECGは?

特異度が高いものはないのでなんともいえない…

①S1Q3T3パターン

I誘導でのS波のhigh
III誘導でのQ波が深い
butSn 35 Sp 90程

②右側胸部誘導のT波陰転化

陰性T波@V1-3は良い
Sn 75 Sp 88
→右心負荷を反映して左前に陰性化が来る
V1-2+III,aVFのnegative T?
LR+10、Sn 18 Sp 98
これらは感度もよく、重症化も反映する
but前壁梗塞、左室肥大、ジギタリスでも起こるので特異的でない

Q4、CXRは?

Westermark sign (Sn 45)
Knuckle sign (Sn 15)
Hampton hump (Sn 15)
などあるがどれも感度悪く役に立たないので無視
Am J Respir Crit Care Med 159:864;1999

Q5、造影CTは?

@CT
右肺下葉枝、左肺上下葉枝起始部に塞栓
基本的には造影CTにて診断する。
加えて下肢静脈も含めて造影CTを行いDVTを検索することで感度が上がるとされる。
cf.PIOMED II(PMID 16738269)
その他の方法
①V/Q scan (確定にならない mismatch起こる疾患(胸水、PHT、肺炎、COPD etc)全て拾い上げるため)
②肺動脈造影(胸部造影CTで良いがこちらの方が確実)

【4】治療

①ヘパリン

とにかく(未分画)ヘパリン。
5000U i.v.し、18U/kg/hrの持続静注(3-5days)(静脈系はどろどろと凝固系を亢進させていく)
APTTを45-70secにコントロール(ACSの時は5-60sec程)
3時間ごと程度でモニタリングしていき、増減させる。
基本的には半減期の3倍程度で定常化のレベルが見れるはずなので(ヘパリンは40min程度)3時間くらいでのモニターがよいだろう。

②t-PA(クリアクター)

massive PE/循環動態の破綻を認める場合は適応である。
13750-27500IU/kgを投与する。
(80000IU/mlとなるようにNSで溶解し、10ml/minの速度で投与する。)
800000IUと400000IUの製剤がある。
60kg-13750で825000IUである、これを指標に調整する。
③IVCフィルター
抗凝固が禁忌の場合にはIVCフィルターが適応になる。
治療後は
ワーファリン、リクシアナなどにswitch。
※結局見つからなかった場合は?
造影までやって見つからなかった場合(つまりは疑わしいと思ってそこまで検査をやったのにもかかわらず)は1週間後下肢静脈エコーでフォローで帰宅
ベースとしての悪性疾患や凝固異常の存在は考慮する必要がある。
・APS
・プロテインC/S欠乏症
・AT欠乏症
など。

③VA-ECMO

massiveで循環破綻している状態では考慮される。
循環補助としてはIABPやimpellaが使用されることがあるが、これらは左心系の補助しかできず、右心の破綻もあるmassive PEにおいてはcardiac ECMOがいい適応である。
初動で循環が破綻している場合は、②or③になるが、これはそれぞれの病院でどちらのアクセスがよいかにも関わってくるだろう。
Q,COPDに合併して判断に困る症例
cf.JAMA. 2021;325(1):59-68.

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