ER-症候別

けいれん重積@小児

小児のけいれん重積は「止まっているように見えて実は止まっていない」ことが最大の落とし穴になる。postictal stateとの区別、ABCDE・原因検索・けいれん頓挫を同時並行で進める考え方、抗けいれん薬の段階的選択、そして群発するけいれんの裏に隠れているかもしれない胃腸炎関連けいれんやAESDまで、研修医が現場で迷うポイントに絞って整理する。

この記事でわかること

  • けいれんが「止まっている」かをどう判断するか、NCSEを見逃さない視点
  • ABCDE評価・原因検索・けいれん頓挫を同時に進める実務的な動き方
  • 第一〜第四段階の抗けいれん薬とその用量
  • 入院適応の判断基準
  • 胃腸炎関連けいれん、AESDという「群発するけいれん」の裏にある2つの鑑別

1定義とタイムスケール

てんかん重積状態(status epilepticus, SE)は、①発作を止める機構の破綻、②発作を誘発し続けるtriggerの持続、のいずれかによって発作が異常に遷延した状態を指す。

臨床的に重要なのは時間軸である。

SEの時間軸(t1・t2)

t1(およそ5分):これを超えると発作は自然には止まりにくくなる
t2(およそ30分):これを超えると不可逆的な神経学的後遺症のリスクが上がる

厳密には、t1以内に自然に頓挫したものは「重積状態」とは呼ばない。型と持続時間に応じて、神経細胞死・神経回路網の障害という長期的な後遺症をきたしうる、というのがこの時間軸の臨床的な意味になる。

図1:発作開始からt1・t2までの時間軸(小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023に基づく著者作成の簡略図)

時間自然に頓挫しうる自然には止まりにくい不可逆的後遺症リスク上昇発作開始0分t1約5分t2約30分t1以内に自然に頓挫したものは「重積状態」とは呼ばない

2対応:まず「止まっているか」を評価する

まず確認すべきは「けいれんは本当に止まっているか」である。

成人と同様、けいれんの活動期から改善に向かう過程にはpostictal state(発作後もうろう状態)が存在する。意識は0か100かではなく、なだらかに回復していく。ここが失神との決定的な違いである(失神は意識の改善が速い)。

この意識障害遷延のため、本人のけいれんが止まっているかの判断は実際には難しい。

  1. 首、四肢は固くないか
  2. 眼球は正中位か
  3. 頻脈は発作時と比べて落ち着いているか
  4. 舌根沈下は? ABCは保たれているか

NCSEを見逃さない

NCSE(非けいれん性てんかん重積状態)というけいれんの見た目を伴わない病態がある。「体動がない=(広義の)けいれんが止まっている」ではない。この誤解は危険なので、運動症状がなくても意識レベルの評価とABCの評価は継続して行う。

以上を踏まえ、次の3本柱を同時並行で進めるのが実務の骨格になる。

  1. ABCDEの評価・対応
  2. けいれんの原因検索
  3. けいれんを止める

ABCDE

項目 所見 対応
A(気道) 舌根沈下、分泌物・吐物の有無 肩枕・下顎挙上での気道確保、吸引。改善なければエアウェイ・挿管を考慮
B(呼吸) 誤嚥、低換気/無呼吸 酸素投与。必要ならバッグバルブマスクで用手換気
C(循環) 循環不全、頻脈、高血圧(交感神経刺激) モニター装着、静脈路確保
D(中枢神経) けいれん、意識障害、瞳孔散大、対光反射消失、筋緊張亢進 抗けいれん薬投与
E(体温) 発熱 発熱があれば髄膜炎・脳炎を念頭に置く

原因検索

病歴聴取:発熱の有無(有熱性なら髄膜炎・脳炎、無熱性なら頭蓋内損傷を考慮)、持続時間、前駆症状(外傷、発熱、頭痛、悪心嘔吐、下痢)、既往・薬剤歴(抗けいれん薬の増減・中止・怠薬)、予防接種歴、家族歴。

身体所見:バイタルサイン、外傷痕(①外傷後に頭部外傷・出血から痙攣した場合、②けいれんして受け身を取れず受傷した場合、の2パターンがあるため、受傷の順序を保護者から聴取する)、髄膜刺激症状の有無。

検査:採血(CBC、生化学[Na/Ca/Mg, BUN/Cre, CK, 肝機能, アンモニア]、血糖、血液ガス、抗けいれん薬血中濃度)、血液培養・尿培養(有熱時)。頭部CTは、頭蓋内圧亢進症状・頭部外傷や虐待を疑う所見・凝固能異常・焦点発作・15分以上のけいれん遷延、のいずれかがあれば撮影する。髄液検査は有熱性かつ髄膜刺激症状または30分以上の意識障害があれば必ず施行する。乳酸・ピルビン酸・アミノ酸分析は必須ではないが、代謝疾患を疑う病歴・家族歴があれば検討する。

カテゴリ 代表的な原因
感染症 髄膜炎、脳炎、脳症
代謝異常 低血糖、低酸素、高二酸化炭素血症、高浸透圧、尿毒症、肝不全
電解質異常 低ナトリウム、低マグネシウム、低カルシウム
内分泌疾患 副甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症・低下症
外傷 脳挫傷、びまん性軸索損傷、頭蓋内出血
中枢神経疾患 脳血管障害、脳腫瘍、熱性けいれん、胃腸炎関連けいれん
てんかん 良性乳児けいれん、BECTS、Panayiotopoulos症候群、欠神てんかん、West症候群など
薬剤 向精神薬離脱、血糖降下薬、リチウム、イソニアジド、テオフィリン、局所麻酔薬など
中毒 CO中毒、コカイン、重金属(鉛)、農薬、銀杏

表1:けいれん重積の原因疾患一覧

頓挫しない場合は本章冒頭の枠組みに立ち返り、「triggerが強力なのか、止める機構の不全なのか」を考える。頻度としては脳炎・髄膜炎が多いが、それ以外の鑑別も簡単に捨てないこと。

3薬剤:抗けいれん薬の段階的選択

段階 薬剤 用量 備考
第一段階 ミダゾラム
(ドルミカム®)1A=10mg(2mL)
0.1mg/kgを静注。5分おきに2〜3回まで
例:1AをNS 8mLで希釈し10mLとし換算
ルート確保困難時は筋注・鼻腔内が代替(原液0.2mg/kg)。ジアゼパムは筋注では吸収が不安定で代替にならない
第二段階 フォスフェニトイン
(ホストイン®)750mg/1V(10mL)
初回22.5mg/kg(3mg/kg/minまたは150mg/minの低い方以下)
維持5〜7.5mg/kg/day(1mg/kg/minまたは75mg/minの低い方以下)
例:0.3mL/kgをNSで5倍希釈し10分以上かけて静注。副作用としての血圧低下に注意
第三段階 フェノバルビタール
(ノーベルバール®)250mg/1V
負荷15〜20mg/kgを100mg/min以下、10分以上かけて静注
例:1VをNS 10mLで希釈(25mg/mL)、15mg/kgなら0.6mL/kg
必ず挿管の準備をしてから投与する
第四段階 チオペンタール
(ラボナール®)300mg/1V
バルビツール昏睡療法として使用。用量は施設プロトコルにより幅がある
例(自施設プロトコルの一例):1VをNS 12mLで希釈(25mg/mL)、5mg/kgを緩徐に静注
脳波モニタリングと専門科(小児科・集中治療科)へのコンサルトが前提

表2:抗けいれん薬の段階的選択(用量は添付文書に基づく。第四段階は施設差が大きい)

「NETT trial」ではなくRAMPART試験

病院前のけいれん重積に対しIM midazolamとIV lorazepamをランダム化比較したSilbergleit R, et al. N Engl J Med 2012;366(7):591-600(n=893)は、NETT(Neurological Emergency Treatment Trials)ネットワークが実施した研究だが、試験そのものの名称はRAMPART試験(Rapid Anticonvulsant Medication Prior to Arrival Trial)である。けいれん頓挫率などに有意差はなく、IM midazolamの非劣性が示された。

4けいれんが止まった後

重積・群発としてコントロールに難渋した症例は、基本的に入院で経過観察する。「少しover」なくらいでちょうどよい。

短時間のけいれんであっても、以下のいずれかがあれば入院とする。

  • 意識障害の遷延、新たな神経症状の出現
  • 頭蓋内圧亢進症状、髄膜刺激症状
  • 呼吸循環不全

有熱性のけいれんであれば単純な熱性けいれんの可能性が十分あるが、無熱性であった場合、てんかんの家族歴や頻回のエピソードがあれば、てんかんの精査を開始したほうがよい。小児科への適切なフォローアップにつなげる。

5胃腸炎関連けいれん

6か月〜3歳ごろに多く、ノロウイルス・ロタウイルスなどを契機に発症するけいれん。発熱がない、あるいは消化器症状が乏しい状態でも発症しうる。下痢・嘔吐の出現から概ね1〜2日程度でけいれんが出やすいとされる。

ダイアップ(ジアゼパム)が効きにくい

熱性けいれんに使うダイアップが効きにくいという点が特徴的である。短時間のけいれんが群発しやすいことも念頭に置く。

6AESD(けいれん重積型二相性脳症)

Acute Encephalopathy with biphasic Seizures and late reduced Diffusion。6か月〜1歳代に多く、日本では年間100〜200人ほどが新規発症する、小児の急性脳症の中で最も頻度が高い病型である。

図2:AESDの二相性の臨床経過(小児急性脳症診療ガイドライン AESD章に基づく著者作成の簡略図)

病日意識レベルearly seizure第1病日意識障害いったん改善(lucid interval)第2〜5病日late seizure(焦点発作の群発)第3〜7病日:再増悪緩徐に回復第7病日〜2か月

本質は「いったん改善→再増悪」の二相性

第1病日:発熱に伴うけいれん重積で発症(early seizure)
第2〜5病日:意識障害はいったん改善傾向を示す(この「一度良くなる」時期を挟むのが診断上の重要なポイント)
第3〜7病日:焦点発作の群発、意識障害の再増悪(late seizure)
その後、数週間かけて緩徐に神経機能が回復し、3か月以降はてんかん発作が問題になりやすい

治療について、現時点でエビデンスの確立した特異的治療はない。代謝異常症が否定される前の、原因不明の急性脳症全般に対する経験的治療として、ビタミンB1・B6製剤やカルニチン製剤が使われることがある(推奨グレードC1=科学的根拠はないが行うことを考慮してよい)。ビタミンB6単剤の早期投与(1〜1.5mg/kg/日、early seizure後3〜36時間以内)で良好な経過を得たとする報告があるが、症例数9例・エビデンスレベル5の報告にとどまる。

体温管理療法(36℃を目標とした早期の体温管理)は、発症後24時間以内に開始することが前提で、AESDへの進展・後遺症リスクを下げる可能性があるとして弱く推奨されている(推奨度2、エビデンスの確実性D)。いずれも「弱い推奨」であり、確立した標準治療ではないことは明記しておく。

胃腸炎関連けいれんとAESDの見分け方

  胃腸炎関連けいれん AESD
好発年齢 6か月〜3歳ごろ 6か月〜1歳代
先行する感染症 ノロ・ロタなどの胃腸炎 発熱性疾患全般(インフルエンザ等を含む)
けいれんの経過 短時間のけいれんが群発(発症1〜2日目) 第1病日にけいれん重積 → いったん改善 → 第3〜7病日に再増悪
ダイアップへの反応 効きにくい (初期は通常のSE対応に準じる)
意識障害の経過 発作間欠期は比較的清明なことが多い いったん改善したのち再び悪化する二相性が特徴
予後 基本的に良好 神経学的後遺症を残しうる。てんかん発症が問題になることも

表3:群発するけいれんの鑑別として押さえておきたい2疾患の比較

7やりがちな失敗とTake home

1体動がないことを「けいれんが止まった」と判断してしまう

NCSEを見逃す典型的なパターン。運動症状がなくても意識レベルの評価とABCの評価は継続する。

2postictal stateを「けいれんが続いている」と誤認する

意識のなだらかな回復過程を誤読し、不要な抗けいれん薬を追加投与してしまう。

3抗けいれん薬の投与順序・用量を現場の感覚で決めてしまう

段階的プロトコルから外れると、効果判定や次の一手の判断が難しくなる。

4群発するけいれんを見て安易に「てんかん重積」と決めつける

胃腸炎関連けいれんやAESDという「群発する別の疾患」を見逃す。表3の鑑別を思い出すこと。

5AESDのビタミン療法を確立した標準治療のように説明してしまう

実際は経験的治療(グレードC1)にとどまる。過度に期待させる説明は避ける。

Take home

  1. けいれんが止まっているかの判断は、postictal stateとNCSEの両方を念頭に置いて慎重に行う
  2. ABCDE評価、原因検索、けいれん頓挫は同時並行で進める
  3. 抗けいれん薬は段階的プロトコル(ミダゾラム→フォスフェニトイン→フェノバルビタール→バルビツール昏睡療法)に沿って動く
  4. 群発するけいれんをみたら、胃腸炎関連けいれんとAESDの2つを鑑別に入れる
  5. AESDの治療は現時点で経験的なものにとどまることを理解しておく
参考文献
  • 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023.日本小児神経学会監修.診断と治療社,2023.
  • Silbergleit R, et al. Intramuscular versus Intravenous Therapy for Prehospital Status Epilepticus(RAMPART試験). N Engl J Med 2012;366(7):591-600.
  • ホストイン静注750mg 添付文書.
  • ノーベルバール静注用250mg 添付文書.
  • 小児急性脳症診療ガイドライン(AESD章).日本小児神経学会.
  • 石井ちぐさ, 小田新, 石川涼子, 野田雅裕, 大場邦弘.けいれん重積型急性脳症への早期ビタミンB6投与経験.日本小児救急医学会雑誌 2009;8:35-41.

あわせて読みたい

ABOUT ME
aas
野戦寄りの病院で救急医をしております。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA