「LVEFが40%以下だからHFrEF」。それ自体は間違っていない。ただし、その分類は一度測ったら固定されるものではないし、LVEFが保たれているからといって心エコーの仕事が終わるわけでもない。
このシリーズは、2025年3月に発行・同年12月に更新された「心不全診療ガイドライン」(日本循環器学会/日本心不全学会合同)をもとに、急性心不全の診療を組み立て直す全5回シリーズ。①ではクリニカルシナリオの相対化と3軸評価、②では急性期の薬物治療を扱った。今回③は診断――LVEFによる4分類、BNP/NT-proBNPの使い方、心エコーで何を見ているか――を扱う。
結論を先に言うと、心不全の分類は経時的に変わりうるものであり、BNPは万能の検査ではなく、心エコーは「LVEFを測る検査」以上の情報を持っている。
この記事でわかること
- LVEFによる4分類(HFrEF/HFmrEF/HFpEF/HFimpEF)と、その境界値・経時的な移り変わり
- BNP/NT-proBNPは「外来」と「入院・増悪時」でカットオフが違うという基本
- BNPを読み違えやすい場面(肥満・腎機能低下・心房細動など)
- HFpEFの診断がなぜ難しいか、H2FPEFスコア・HFA-PEFFアルゴリズムという道具
- 心エコーで何を測っているか(LVEFの測り方、拡張能、右室機能、心房機能)
1LVEFによる4分類:HFrEF/HFmrEF/HFpEF/HFimpEF
日米欧の心不全学会が提唱したUniversal definition and classification of heart failureを参考に、ガイドラインは初回評価時のLVEFと経時的な変化をあわせて4つに分類する。
図1:LVEFによる心不全の4分類とHFimpEFへの経時的な移り変わり
| 表現型 | LVEF |
|---|---|
| HFrEF(LVEFの低下した心不全) | 40%以下 |
| HFmrEF(LVEFの軽度低下した心不全) | 41〜49% |
| HFpEF(LVEFの保たれた心不全) | 50%以上 |
| HFimpEF(LVEFの改善した心不全) | 初回40%以下かつ経過で10%以上改善し40%を超える |
HFmrEFは「中間」ではなく「HFrEFに近い」
HFmrEFに属する患者の年齢・男女比・心房細動合併率は、HFrEFとHFpEFの中間的なデータを示す。一方で基礎心疾患の分布はHFrEFに近く、虚血性心疾患の占める割合が高い。予後については、HFmrEFはHFpEFに近くHFrEFよりよいとする報告がある。なお経時的な移行については、HFrEFの2〜4割程度がHFmrEFあるいはHFpEFに移行し、HFmrEFの2〜4割程度がHFpEFに移行することが示されている。
HFimpEFは「治った」ではない
経時的なLVEFの改善は予後良好因子で、HFimpEF患者の予後は比較的良好である。しかしHFimpEFは疾患が根治し投薬が不要になることを意味しない。薬物治療を中断・減量するとLVEFが再低下し、左室が再拡大することが報告されている。ガイドラインは「HFimpEFは基本的にHFrEFの治療薬の継続を行う」としている(次回④で扱うGDMTがそのまま続く)。
ただし推奨表25は拡張型心筋症に限定されている
HFimpEFの薬物治療の推奨表(推奨表25)に載っている項目は1行だけで、「拡張型心筋症に関しては左室駆出率改善後も短期間での心不全治療薬の減量、中止をすべきではない」(クラスIII Harm・B-R)である。根拠となったTRED-HF試験が拡張型心筋症を対象としていたためで、ガイドライン本文は「病態が異なるHFimpEFについては明確な答えはない」と明示的に留保している。周産期心筋症では心保護薬の中止が心不全入院やLVEF低下に至らないというデータもある。「HFimpEFなら一律に継続」ではなく、拡張型心筋症では短期間での中止・減量が明確に非推奨、それ以外は個別判断、と理解しておく。
カットオフ値自体への留保
心エコーのdisk summation法によるLVEF計測には誤差があるため、HFrEFとHFpEFからHFmrEFを区別するほど正確に定量化できない可能性があり、恣意的なカットオフ値を定める必要がないのではという意見もある、とガイドライン自身が留保を付けている。
2診断プロセスの全体像
心不全の診断では、自覚症状・病歴・身体所見・心電図・胸部X線・血液検査をまず検討する。ある特定のスコアリング分類だけで診断を進めるものではない。
図2:心不全の診断プロセスの全体像
病歴では、心不全発症のリスク因子となる既往歴(冠動脈疾患、高血圧、糖尿病、心房細動、化学療法歴など)や家族歴(遺伝性疾患の有無)を聴取する。非代償性心不全と診断されたら、増悪因子を推定するための病歴(心筋虚血、不整脈、貧血、感染、急性肺血栓塞栓症、薬剤、血圧の過度な上昇、甲状腺疾患など)も聴取する。これは①(表23)で扱った増悪因子の一覧とそのまま対応する。
NYHA心機能分類
心不全の自覚症状の重症度を示す分類にNYHA心機能分類(I〜IV度)があり、その変化は病状の進行や治療の効果をあらわすのに用いられる。適正な治療下でも高度な(III度)あるいはいかなる身体活動も制限される(IV度)心不全症状は、治療抵抗性心不全を示唆する所見である。
3BNP/NT-proBNP:カットオフ値と使い方
BNP、NT-proBNP値はともに血行動態とよく相関し、外来の心不全疑い患者や緊急入院時の心不全の診断補助に有用である。特に陰性的中率が非常に高いため(94〜98%)、心不全の除外に有用である。
表13:ナトリウム利尿ペプチド上昇のカットオフ値
| 外来でのカットオフ値 | 入院/心不全増悪時のカットオフ値 | |
|---|---|---|
| BNP | ≧35 pg/mL | ≧100 pg/mL |
| NT-proBNP | ≧125 pg/mL | ≧300 pg/mL |
心原性の肺うっ血、あるいは全身性(体)うっ血の客観的エビデンスが明らかであれば、BNP/NT-proBNPの測定は診断上必須ではない。ただし急性呼吸促迫症候群など他疾患との鑑別のためには測定を推奨する。
入院時測定と退院時測定、どちらも意味が違う
入院時測定は、HFrEF・HFpEFにかかわらず院内死亡などの短期的予後と関連する。退院時の値は、退院後の死亡や心不全再入院などの長期的予後と関連する。退院後の予後予測には、入院時測定よりも退院時測定のほうが有用だったと報告されている。入院時から退院時までにNT-proBNP値が30%以上上昇したうっ血性心不全患者は、入院中に30%以上低下した患者に比べて、退院後の死亡あるいは心不全再入院リスクが約6倍に上昇したという報告もある。
4BNP解釈の落とし穴
血中BNP、NT-proBNP値は心不全以外の要因にも影響を受ける。「基準値を超えている=心不全」「基準値未満=心不全ではない」と単純に読むと外れる場面がある。
| 分類 | ナトリウム利尿ペプチドが上昇する要因 |
|---|---|
| 心原性 | 急性冠症候群・急性心筋梗塞/肺塞栓症/心筋炎/肥大型心筋症/弁膜症/先天性心疾患/上室性・心室性不整脈/心臓挫傷・浸潤・悪性腫瘍/除細動後・ICD作動後/心膜疾患/侵襲的あるいは外科的心臓手技/肺高血圧症や右心不全 |
| 非心原性 | 心筋炎・炎症性心筋症/高齢者/貧血/腎疾患/敗血症/虚血性あるいは出血性脳卒中/肺疾患(肺炎、COPD、閉塞性睡眠時無呼吸)/肝疾患/重症貧血/重症熱傷/重症代謝性疾患(甲状腺中毒症、糖尿病性ケトーシス) |
低下する要因もある
肥満あるいはBMIの増加でナトリウム利尿ペプチドは低下する。肥満を合併したHFpEFでは、値が正常範囲のことがある。心膜疾患・心膜液のある患者でも低いことがあり、心嚢穿刺によって上昇する。加えて、eGFR 30 mL/分/1.73m²未満では上昇の程度が大きくなる。値だけで安易に心不全を除外・肯定しないことが重要である。
5HFpEFの診断はなぜ難しいか
労作時呼吸困難や運動耐容能の低下が主訴の患者では、安静時の左房圧は正常範囲内で、運動などの負荷時のみに左房圧の上昇を呈する場合が多い。つまり安静時の検査だけでは異常が出ないことがある。
H2FPEFスコア
年齢、BMI、降圧薬の数、心房細動の有無と、心エコー検査によるE/e’比・推定収縮期肺動脈圧によって点数づけをした合計点で、HFpEFの検査前確率を判断するスコア。
HFA-PEFFアルゴリズム
4段階でHFpEFの診断を進める。ステップ2で心エコー検査とBNP/NT-proBNP値からHFA-PEFFスコアを算出しHFpEFの検査前確率を評価し、診断が曖昧な場合にはステップ3で運動負荷試験を追加する。
診断が曖昧な場合の運動負荷試験には、運動負荷右心カテーテル検査と運動負荷心エコー検査がある。前者は負荷で上昇する左房圧(肺動脈楔入圧)を直接測定できる長所があるが侵襲的である。
日本人には日本人用のスコアが要る
日本人と欧米人のHFpEFには肥満の頻度など背景に大きな違いがあり、日本人に特化したリスクスコアが必要である、とガイドライン自身が課題として明記している。H2FPEFスコア・HFA-PEFFアルゴリズムをそのまま日本人に当てはめてよいかは、今後の検証が要る領域である。
6心エコー①:左室収縮能・拡張能
心エコーは心不全診療における最も基本的かつ重要な画像診断である。推奨表4は「心不全が疑われる患者に、心機能・形態・弁膜症や心筋症などの併存疾患の評価のために心エコーを行う」(クラスI・C-EO)と「心不全患者は、全例で左室駆出率の評価を行う」(クラスI・B-NR)を別項目として立てている。全例でのLVEF評価が求められるのは、心不全と診断された患者のほうである。
LVEFの測り方
LVEFの計測に関して、Teichholz法は心不全のような場合は推奨されず、2D disk summation法が標準的である。3Dによる解析は良好な画像が取得できれば正確で再現性に優れる可能性がある。近年ではAIを用いた自動計測も行われるようになり、こちらも良好な画像が取得できれば再現性や客観性の面で優れる可能性がある。
LVEFの値そのものが病態で歪む
計測法だけでなく、値の解釈にも前提がある。ガイドラインは弁膜症やシャント疾患の存在下では正常値が通常よりも高くなること、肥大心では収縮能を過大評価することを注意点として挙げている。有意なMRやASのある患者、肥大心の患者で「LVEFは保たれている」と読んだときは、この補正が要る。
GLS(global longitudinal strain)
スペックルトラッキング法を用いたGLSは、一般的に初期心内膜筋の障害を捉えると考えられ、再現性がよく、LVEFより予後予測能が高いとされる。心不全のタイプを問わず、リスク層別化のために計測を考慮してもよい。ただし、機種による差や画質依存性の問題があることを認識したうえで使用する。
拡張能の評価
左室拡張能は、左室弛緩能・左室スティッフネスからなり、それらが障害された結果としての左室充満圧上昇を評価することが臨床的に重要になる。1つのパラメータで評価することは困難で、複数の指標とアルゴリズムを用いて総合的に判断する。
| 指標 | 意味・注意点 |
|---|---|
| e’ | 左室弛緩を表す指標で、拡張能の最も基本となる。年齢によって正常値が大きく異なる |
| E/A | 左室弛緩と左房圧によって規定される。左室機能正常例では左房圧の指標とならないが、拡張障害/収縮障害がある場合は左房圧の指標として有用 |
| E/e’ | 左房圧と相関する指標で、簡便で広く使われるが、その相関は比較的疎である |
| 左房容積係数(LAVI) | 直接的な拡張能ではないが、積年の左房圧上昇による構造的変化を反映する。心房細動や僧帽弁疾患があると拡張能や左房圧と無関係に拡大しうる |
| 三尖弁逆流最大速度 | 右室-右房圧較差を表し、肺動脈弁狭窄症のない場合に収縮期肺動脈圧を反映する |
アルゴリズムだけに頼らない
これらの指標を統合したアルゴリズムが米国心エコー図学会(ASE)等で推奨されているが、高齢者でも画一的なe’のカットオフを使うことや、他の原因による左房容積拡大の可能性を考慮しきれないといった問題点もある。アルゴリズムのみによる画一的な拡張能・左房圧の評価は難しく、各指標の特性を理解したうえで症例ごとのアセスメントが必要になる。
参考:ステージB(構造的心疾患)における左室内圧上昇の目安
| 区分 | 目安 |
|---|---|
| 形態 | LAVI>34 mL/m²/LVMI>115(男性)・95(女性)g/m²/相対的壁厚RWT>0.42/左室壁厚≧12 mm |
| 左室収縮能 | LVEF<50%/GLS<16% |
| 左室拡張能 | E/e’>14/中隔e’<7 cm/s/側壁e’<10 cm/s/三尖弁逆流速度>2.8 m/s/推定収縮期肺動脈圧>35 mmHg |
| バイオマーカー | BNP≧35 pg/mL/NT-proBNP≧125 pg/mL(心房細動・高齢者・CKD患者ではより高い閾値が推奨される) |
7心エコー②:右室機能・心房機能・血行動態
右室機能の評価
右室機能はHFpEF・HFrEFどちらにおいても予後因子として重要であり、右室機能が優位に障害される疾患ではさらに重要になる。右室は三日月型の複雑な形態をしており評価が難しいため、複数のパラメータで包括的に検討する。
| 指標 | 特徴 |
|---|---|
| TAPSE、s’ | 簡便な指標だが、右室の弁輪部だけの評価であることに注意 |
| 右室面積とFAC | 右室自由壁の動きも加味されるが、断面依存性が高く再現性にも問題がある |
| 3D右室容量・駆出率 | 右室全体を評価でき望ましいが、普及率・解析の煩雑さ・画質依存性に問題がある |
| 自由壁の長軸方向ストレイン | さまざまな疾患で予後と相関するが、3D同様に普及率・解析の煩雑さ・画質依存性に問題がある |
心房機能の評価
心房機能もHFrEF・HFpEFを問わず重要な予後因子である。心房の大きさは前後径と必ずしも一致しないため、心不全症例ではなるべく左房容積係数を測定する。左房ストレイン(特にリザーバーストレイン)は、息切れ症例でHFpEFか非心原性息切れか悩ましい場合の鑑別に有用な可能性がある。
心房細動があるときの計測
心房細動では心拍ごとに心腔容積・駆出率・心腔内圧が変動する。ガイドラインは前拍および前々拍のRR間隔が一定である拍で測定するか、5〜10拍の平均をとることで予後推定などに有用な評価ができるとし、現状ではこれらの方法を用いることが妥当としている。Af rapidのまま当てた1拍だけで判断しない。
血行動態の評価
心エコーの重要な役割として、流量と圧の推定を中心とした血行動態評価がある。左室流出路の径とドプラ法で求める速度時間積分値を用いて1回拍出量を評価できる。心内圧の推定には、三尖弁逆流最大速度(収縮期肺動脈圧)、下大静脈の長軸像における径と呼吸性変動(右房圧、全身の循環体液量の反映)を用いる。
心エコー以外のエコー:肺と腎
ガイドラインは、心エコーとは別に「その他のエコー指標」として肺エコーと腎内静脈エコーを扱っている。ベッドサイドで完結する評価であり、救急・集中治療の現場との相性がよい。
肺エコー(Bライン)
1視野に3本以上のBラインは異常とされている。心不全を疑う状況で、肺うっ血の有無を評価するために肺エコーを考慮してもよい。簡便で非常に素早く撮像でき、陰性的中率も高い。ただし肺炎や非心原性肺水腫でもBラインは陽性となるため、他疾患との鑑別には注意を要する。退院前のBラインで残存うっ血を評価することがリスク層別化に有用との報告もある。
腎内静脈エコー
心不全の腎うっ血を評価するため、エコーによる腎内静脈血流の評価を考慮してもよい。腎内静脈の波形パターンは右房圧を反映して変化し、連続波→二峰性→単峰性と変化するにつれて予後が悪化することが示されている。
心エコーを行うタイミング
初診時や、薬物治療・デバイス治療を行う前に心エコーを記録しておくことが重要である。心臓再同期療法や心不全の薬物治療による逆リモデリングはおおむね6ヵ月以内に現れることが多いため、6〜12ヵ月程度の時期にフォローアップすることが妥当とされる(クラスIIa・C-EO)。うっ血の評価とリスク層別化のために、心不全増悪による入院の退院前に心エコーを考慮してもよい(クラスIIb・C-EO)。なお構造的心疾患に対する非薬物療法を行った場合の退院前心エコーは、これとは別項目でクラスIIa。安定していて変化のない患者に、目的のはっきりしない定期的な心エコーは不要な場合が多い。
8やりがちな失敗
LVEFは経時的に変化しうる。特にHFimpEFのような改善は、GDMTを中断・減量すると再低下しうるため、「治った」と誤解して減薬しない。
肥満やBMI増加では低めに、eGFR 30未満では上昇の程度が大きく出る。カットオフ値も外来と入院・増悪時で異なる。
労作時呼吸困難が主訴の患者では、安静時の左房圧は正常範囲内で負荷時のみ上昇するパターンが多い。H2FPEFスコアやHFA-PEFFアルゴリズムでの評価を検討する。
心不全診療では2D disk summation法が標準。Teichholz法は推奨されない。
心房の大きさは前後径と必ずしも一致しない。なるべく左房容積係数(LAVI)を測定する。
9早見表とTake home
| 領域 | 押さえること |
|---|---|
| LVEFによる4分類 | HFrEF≦40%/HFmrEF 41〜49%/HFpEF≧50%/HFimpEFは初回≦40%→10%以上改善し40%超 |
| HFimpEF | 「治った」ではない。拡張型心筋症では短期間での減量・中止がクラスIII Harm。それ以外は明確な答えがない |
| BNPカットオフ | 外来:BNP≧35・NT-proBNP≧125/入院・増悪時:BNP≧100・NT-proBNP≧300(測定自体はクラスI・A) |
| BNPの落とし穴 | 肥満・BMI増加で低下、eGFR<30で上昇の程度が拡大。陰性的中率94〜98%で除外には有用 |
| HFpEFの診断 | H2FPEFスコア・HFA-PEFFアルゴリズムを活用。日本人特化のスコアは今後の課題 |
| LVEFの測り方 | 2D disk summation法が標準。Teichholz法は非推奨。弁膜症・シャントで高値、肥大心で過大評価 |
| 拡張能の指標 | e’、E/A、E/e’、LAVIを組み合わせて総合的に判断。アルゴリズムだけに頼らない |
| 肺エコー・腎エコー | 1視野に3本以上のBラインは異常。腎内静脈波形は連続波→二峰性→単峰性で予後悪化 |
| 心エコーのタイミング | 初診時・治療開始前(全例でLVEF評価はクラスI)、CRT等の6〜12ヵ月後フォロー(IIa)、退院前のうっ血評価(IIb) |
Take home
- LVEFによる4分類(HFrEF/HFmrEF/HFpEF/HFimpEF)は経時的に変わりうる。HFrEFの2〜4割がHFmrEF/HFpEFへ、HFmrEFの2〜4割がHFpEFへ移行する
- HFimpEFは根治ではない。拡張型心筋症では短期間での減量・中止がクラスIII Harmと明記されている一方、それ以外のHFimpEFについてはガイドライン自身が「明確な答えはない」としている
- BNP/NT-proBNPのカットオフは外来と入院・増悪時で異なる(35/125 vs 100/300)。陰性的中率が高く除外に有用だが、肥満で低め・腎機能低下で高めに出ることを踏まえて解釈する
- HFpEFは安静時の検査だけでは異常が出ないことが多い。H2FPEFスコアやHFA-PEFFアルゴリズムで検査前確率を評価する
- LVEFは2D disk summation法が標準。ただし弁膜症・シャントでは高く出て、肥大心では収縮能を過大評価する。GLSはLVEFより予後予測能が高いとされる
- 拡張能はe’・E/A・E/e’・LAVIを組み合わせて総合的に判断する。画一的なアルゴリズムだけに頼らない。心房細動があれば5〜10拍の平均をとる
- 肺エコー(1視野3本以上のBラインは異常)と腎内静脈エコーは、ベッドサイドでうっ血を評価できる手札として推奨に載っている
- 心エコーは初診時・治療開始前に加え、治療後6〜12ヵ月・退院前など、目的を持って繰り返し評価する
次回④は、慢性期GDMT編(4本柱・保険適用外4か所・β遮断薬用量差)を扱う。
参考文献
- 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure). 2025年3月28日発行・2025年12月19日更新.
- Bozkurt B, Coats AJS, Tsutsui H, et al. Universal Definition and Classification of Heart Failure. J Card Fail. 2021;27(4):387-413.
- Heidenreich PA, Bozkurt B, Aguilar D, et al. 2022 AHA/ACC/HFSA Guideline for the Management of Heart Failure. Circulation. 2022;145(18):e895-e1032.(表5の作表参考)
- Reddy YNV, Carter RE, Obokata M, Redfield MM, Borlaug BA. A Simple, Evidence-Based Approach to Help Guide Diagnosis of Heart Failure with Preserved Ejection Fraction(H2FPEFスコア). Circulation. 2018;138(9):861-870.
- Pieske B, Tschöpe C, de Boer RA, et al. How to diagnose heart failure with preserved ejection fraction: the HFA-PEFF diagnostic algorithm. Eur Heart J. 2019;40(40):3297-3317.
