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市中肺炎update①総論

ERで最も多い感染症であり、いちばん「いつもどおり」で処理されやすい疾患でもある。だがこの1年に出た総説を読むと、いつもどおりでよくない点が3つある。胸部X線の位置づけ、抗菌薬を続ける日数、そして退院後である。

本記事は2025年11月にLancetに掲載された市中肺炎のSeminarを軸に、日本の成人肺炎診療ガイドライン2024と突き合わせて読む。重症市中肺炎(sCAP)に特化した内容は、姉妹記事として次回(37本目)に分けた。この記事は外来から一般病棟までを扱う。

この記事でわかること

  • 重症度スコアは「帰していいか」と「ICUに上げるか」で使い分けが決まっていること
  • 胸部X線の特異度は49%しかなく、ATS 2025が肺エコーを代替として明示的に認めたこと
  • CRPとPCTは抗菌薬を始める判断には使えないが、やめる判断には使えること
  • 病原体が同定できるのは半数未満で、血液培養の陽性率は7%であること
  • 入院例で反応が良ければ5日で足りること。7日を超えるのは特定の適応だけであること
  • 重症度だけを理由に広域抗菌薬を使わない、という点で国際総説と国内ガイドラインが一致していること
  • 誤嚥があっても嫌気性菌カバーは不要で、むしろ有害でありうること
  • 退院時に炎症が残っている患者が多く、その後の心血管イベントが予後を決めること

1重症度スコアは目的で使い分ける

市中肺炎の重症度評価には複数のスコアがあり、それぞれ得意分野が違う。ここを取り違えると、道具のせいではなく使い方のせいで判断を誤る。

図1:日本のA-DROPと国際的なIDSA/ATS基準は、聞いていることが違う

A-DROP(成人肺炎診療ガイドライン2024)A年齢男性70歳以上/女性75歳以上D脱水BUN 21 mg/dL以上、または脱水ありR呼吸SpO₂ 90%以下(PaO₂ 60 Torr以下)O意識意識変容ありP血圧収縮期血圧 90 mmHg以下0=軽症 1〜2=中等症 3=重症 4〜5=超重症ショックがあれば1項目のみでも超重症IDSA/ATS 重症CAP基準大基準(1つで重症)・昇圧薬を要する敗血症性ショック・人工呼吸を要する呼吸不全小基準(3つ以上で重症)・呼吸数 30回/分超・P/F比 250未満・多葉浸潤影・意識混濁・失見当識・BUN 20 mg/dL以上・白血球 4000/µL未満・血小板 10万/µL未満・低体温(深部体温36℃未満)・積極的輸液を要する低血圧帰していいか/入院かA-DROP・CURB-65・PSIICUに上げるかIDSA/ATS基準・SMART-COPどのスコアもICU入室と臓器サポートの必要性の予測は苦手で、そのなかではIDSA/ATS基準とSMART-COPが向くA-DROPは2017年版の定義。2024年版はA-DROPによる評価を「弱く推奨」(エビデンスの確実性C)としている

スコアには得意分野がある

CURB-65とPSI(Pneumonia Severity Index)は、低リスクの患者を同定することには有効だが、ICU入室の必要性は予測しない。ICU入室を要する患者の早期同定には、IDSA/ATS基準とSMART-COPのほうが適している。つまり「帰していいか」を決めるスコアと「ICUに上げるか」を決めるスコアは別物である。日本のA-DROPは前者にあたる。

成人肺炎診療ガイドライン2024はA-DROPを「弱く推奨」している

日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドライン2024は、CQ01で「市中肺炎の重症度評価はA-DROPスコア、CURB-65スコア、PSIスコアのいずれが推奨されるか」を立て、「A-DROPスコアによる重症度評価を弱く推奨する」(エビデンスの確実性C)と答えている。つまりCURB-65やPSIに対する優越性が示されたわけではなく、簡便性と国内での普及が根拠になっている。

もうひとつ実務的に効くのが、A-DROPの重症度分類に付いた但し書きである。0項目が軽症、1〜2が中等症、3が重症、4〜5が超重症だが、ショックがあれば1項目のみでも超重症とされる。ガイドラインのフローチャートでも、敗血症性ショックの有無の判断が重症度スコアと並ぶ最初のステップに置かれている。(A-DROPの各項目のカットオフは2017年版の定義による。2024年版の本文からは当該表を直接確認できなかったが、重症度区分の枠組みは維持されている)

どのスコアもICU入室の予測は苦手

Lancet Seminarは、スコアが死亡予測には優れる一方で、ICU入室と臓器サポートの必要性の予測は概して不得手であると正直に書いている。ICU入室の予測に最も有効だったのはSOFAスコアだったが、それは多くの場合「来院時点ですでに臓器障害が出ている」ことを拾っているにすぎない、とも指摘されている。スコアで先を読もうとしすぎない、ということだと思う。

2胸部X線はもう基準ではない

この1年でいちばん明確に変わったのがここだと思う。数字を並べると分かりやすい。

図2:肺炎の診断における胸部X線と肺エコー

胸部X線感度92%特異度49%肺エコー感度92%特異度89%Lancet 2025;406:2371-88より。胸部X線 感度92%(95%CI 86-95)・特異度49%(40-58)/肺エコー 感度92%(88-95)・特異度89%(81-95)原文は肺エコーが感度でも優れるとするが、点推定は同値。実際に差がつくのは特異度である

感度は92%で同等である。差がつくのは特異度で、胸部X線は49%(95%CI 40-58)、肺エコーは89%(81-95)。胸部X線は、肺炎でない影も肺炎に見せる

ATS 2025が肺エコーを代替として認めた

Lancet Seminarは、ATS 2025ガイドラインが、地域に技術と機材があれば肺エコーを胸部X線の代替として明示的に認めたと書いている。とくに画像へのアクセスが限られる環境で意味を持つ。所見としてはdynamic air bronchogramが肺炎の病理学的所見とされ、最も多いのは肺の圧密像または間質パターンである。

ただし肺エコーで肺炎を否定はできない

救急室やICUでは有用だが、肺炎を除外するには感度が不十分で、術者の経験と技量に依存するという但し書きが同時に付いている。「あるかどうかを見る」道具であって「ないことを言う」道具ではない。なお診療報酬上は、肺エコーに独立した項目はなく、D215超音波検査の「2 断層撮影法 ロ(1) 胸腹部」530点で算定する(レセプト摘要欄に検査対象領域の記載が要る)。

CTはいつ撮るか

IDSA/ATSは、診断が不確実または結論が出ない症例にCTを勧めている。臨床的に肺炎が強く疑われるのに胸部X線に浸潤影がない場合、免疫不全、治療失敗、膿瘍などの合併症が疑われる場合が典型である。なお胸部X線は、CTと比べて感度が低いことも指摘されている。

そもそも浸潤影は必須なのか

2024年に発表された重症肺炎の診断に関する国際調査では、ICU医の3分の1が「画像上の浸潤影を肺炎の診断に必須とは考えていない」と答えている。ガイドラインと実務の距離が、ここにも出ている。

3CRPとPCTは、やめるために使う

2022年のメタ診断解析による診断性能は、率直に言って高くない。

CRPとPCTの診断性能

検査 カットオフ 感度 特異度
CRP 50 mg/L 75% 75%
プロカルシトニン 0.5 µg/L 44% 93%

抗菌薬を始める判断には使えない

この性能は抗菌薬治療の開始を導くには不十分であり、米国のガイドラインも欧州・南米のガイドラインも、抗菌薬の開始をバイオマーカーで判断することを推奨していない。PCTの感度44%という数字が意味するのは、「PCTが低いから細菌性ではない」と言えないということである。

やめる判断には役割がある

一方でPCTは、重症市中肺炎を含む重症感染症のde-escalationでは役割が確立している。バイオマーカーで導いたアルゴリズムは、入院患者の抗菌薬期間を大きく短縮した。抗菌薬投与日数の中央値は、CRP群4.0日、PCT群5.5日に対して対照群7.0日。ただしCRPについては、PCTほど役割がはっきりしていない。

発症からの日数で読み方が変わる

この節でここだけ、姉妹記事の一次資料である重症CAPの総説(Intensive Care Med 2026)から引く。CRPは症状の持続期間によらず上昇するが、持続が長いほど値も高くなる。一方PCTは、症状の持続が3日以上になると50%を超えて低下する。「来院が遅れた患者のPCTが低い」ことに意味を持たせすぎない、ということになる。

治療開始後の推移も情報になる。生存者では3〜4日目までにCRPがベースラインから30〜40%低下するのに対し、非生存者ではほとんど変化しない。急速な低下と緩徐な低下は、二相性の反応や無反応より予後がよい。

4病原体は半分しかわからない

広範な検査を行っても、特定の病原体が同定できるのは市中肺炎患者の半数未満である。この前提を共有しておかないと、培養結果を待つ意味づけを誤る。

各検査の実際の収率

血液培養 陽性率 7%
喀痰培養 陽性率 18%
尿中抗原 肺炎球菌とレジオネラで利用可能。陽性的中率は良好だが偽陰性が多く、他の共感染菌を除外できない。狭域化しすぎて再燃を招く懸念も指摘されている
核酸増幅検査(NAAT) SARS-CoV-2とインフルエンザは、流行時か曝露が疑われる場合に推奨。入院時に行うと抗菌薬使用までの時間、抗ウイルス薬開始、在院日数が短縮する
多項目パネル 入院市中肺炎での抗菌薬処方への影響は不確実で、試験結果が割れている

軽症例では培養そのものが要らない

地域で管理される軽症例では、結果が治療方針を変えないため、微生物学的検体の採取は一般に不要とされている(原文は「generally not required」で、例外を排していない)。逆に入院例では血液培養と喀痰培養が広く行われるが、上記のとおり収率は高くない。

なお日本の成人肺炎診療ガイドライン2024は、多項目遺伝子検査によって原因微生物の同定率が従来法の42.7%から67.5%に上がったことを取り上げている。同定率そのものは確かに上がるが、それが抗菌薬の使い方をどう変えるかは、国際的にもまだ結論が出ていない領域である。

5広げない、そして長く続けない

抗菌薬について、この総説がはっきり書いていることは2つある。重症度だけを理由に広げないことと、良くなっているなら長く続けないことである。

図3:治療場所別の初期治療と期間

外来経験的治療アモキシシリンまたはドキシサイクリン慢性肺疾患・無脾症ではAMPC/CVA or 経口セフェム+マクロライド or ドキシウイルスPCR陽性かつ併存症なし→経験的抗菌薬を避ける(ATS 2025)抗菌薬の期間3〜5日・ステロイドは使わない・最初から経口で・治療終了1週間後にフォロー一般病棟経験的治療β-ラクタム(ABPC/SBT or セフトリアキソン)+マクロライドアレルギーがあればレスピラトリーキノロンMRSA・緑膿菌の既往があれば抗MRSA薬+抗緑膿菌薬に振る抗菌薬の期間5〜7日・ステロイドは使わない・MRSA/緑膿菌が確定なら最低7日・膿胸・膿瘍などの合併症は7日超ICU経験的治療バンコマイシン or リネゾリド+セフェピム or PIPC/TAZ+オセルタミビル※ここは37本目で扱う抗菌薬の期間7〜10日・重症度基準を満たしたら・24時間以内にステロイド開始・インフルエンザ陽性なら使わないMRSA鼻腔スワブのリスク因子=MRSA既往/90日以内の入院/90日以内の静注抗菌薬/地域のMRSA高有病率Lancet 2025;406:2371-88の図2をもとに、国内で使える薬剤に絞って作成。ICUのレジメンは37本目で詳しく扱う

広げない

重症度だけでは、抗MRSA薬も抗緑膿菌薬も正当化されない

Lancet Seminarは、多剤耐性菌のリスク因子も保菌もない患者に対して、重症度だけを理由にピペラシリン・タゾバクタムやセフェピム+バンコマイシンのような薬剤を使うことは正当化されないと明記している。多剤耐性菌のリスク因子は、既知の保菌と、90日以内の入院中の静注抗菌薬使用。経験的に始めた場合は、スクリーニングが陰性なら速やかにde-escalationする。

ここは日本のガイドラインと完全に一致している

成人肺炎診療ガイドライン2024にも、「CAPへの初期の広域抗菌薬投与や抗MRSA薬のエンピリックな使用は予後を改善せず、むしろ有害である」と書かれている。このシリーズでは国際的な推奨と日本の事情がずれる話ばかり扱ってきたが、ここは国際総説と国内ガイドラインが同じことを言っている。逆に言えば、それだけ広域に振れやすい領域だということでもある。

誤嚥があっても嫌気性菌カバーは要らない

誤嚥があっても嫌気性菌を経験的にカバーする理由はない、と書かれている。重症例で誤嚥のリスク因子や目撃があっても病原体は誤嚥がない場合と同じであり、嫌気性菌が分離されることは非常にまれである。むしろ嫌気性菌カバーが健常な微生物叢を乱し、有害な転帰のリスクを上げる可能性が示唆されている。

長く続けない

抗菌薬の期間

場所 期間
外来 3〜5日
一般病棟 5〜7日
ICU 7〜10日
重症CAP(ICUにいる例、ATS 2025) 臨床的安定が得られたら最低5日。延長は特定の適応のみ ― 壊死性肺炎、膿胸、菌血症、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、レジオネラ疑い、臨床反応が遅い場合

入院例で良好な臨床反応があれば、5日が最もエビデンスに基づく推奨である。ただしこれは「適切な薬(正しい感染症に正しい薬)」かつ「適量(肺内で治療濃度が達成される)」であることが前提になる。7日超は、重症市中肺炎・黄色ブドウ球菌菌血症・ドレナージできない胸腔内貯留といった特定の適応を除いて避ける。

経口への切り替えと退院

経口への切り替えは、患者が改善していて経口を許容でき、その抗菌薬に経口剤形があれば速やかに行う。退院の目安として、3日目までに次の全項目を満たすことが挙げられている。解熱(37.8℃未満)、心拍数100/分未満、呼吸数24回/分未満、低酸素血症がない(SpO₂ 90%超またはPaO₂ 60 mmHg超)、収縮期血圧90 mmHg超。外来治療例では治療終了1週間後にフォローの受診を設定し、発熱の持続・頻呼吸・血圧低下があれば再受診するよう伝える。

6肺炎は「治って終わり」ではない

この総説がもっとも強調しているのがここで、市中肺炎を急性感染症としてのみ捉える従来の見方が、はっきり否定されている。

数字で見る予後

入院例の30日死亡 4.1〜9.6%(近年は低下している)
ICU入室を要する例の30日死亡 最大 49.4%
再入院率(2020年、全原因、米国) 30日 8.8%、180日 20.1%
入院例のうち重症の割合 13〜22%が重症市中肺炎で、しばしばICUを要する

心血管イベントが予後を決める

市中肺炎のあと数週から数ヵ月にわたって、心筋梗塞・不整脈・心不全・脳卒中のリスクが上昇することが一貫して示されている。全身性炎症、内皮障害、血栓形成傾向によると考えられている。

Seminarの推奨ははっきりしていて、市中肺炎から回復するすべての患者に定期的な心血管スクリーニングを行うべきで、とくに既存の心疾患や、糖尿病・高血圧・喫煙といったリスク因子を持つ患者では重要である、としている。

呼吸器と全身の後遺症

重症例では、ガス交換障害・肺活量低下・気管支拡張症やCOPD増悪のリスク上昇といった、遷延する呼吸機能障害がしばしば残る。呼吸理学療法を含む早期リハビリテーションが回復を早め、肺機能を改善し、再感染のリスクを下げうる。

さらに高齢者や集中治療を要した患者では、身体の脱力・認知機能障害・うつやPTSDといった集中治療後症候群(PICS)が問題になる。

フォロー画像をいつ撮るか

症状が5〜7日で消えた患者に、フォローの画像は推奨されない。一方で症状が持続する患者や肺癌のリスク因子を持つ患者では、治療後4〜6週での画像が推奨される。初回の肺炎で隠れていた悪性腫瘍を早期に見つけるためである。「影が消えたか」ではなく「影の下に何かなかったか」を見にいく撮影だと考えるとよい。

7やりがちな失敗

1CURB-65やA-DROPでICUに上げるかを決めようとする

CURB-65・PSI・A-DROPは低リスクの同定には有効だが、ICU入室の必要性は予測しない。そこにはIDSA/ATS基準かSMART-COPを使う。日本のガイドラインもA-DROPの評価は「弱く推奨」にとどめている。

2胸部X線に影があるから肺炎、と確定する

胸部X線の特異度は49%。肺エコーは89%で、ATS 2025は代替として明示的に認めた。ただし肺エコーで肺炎を否定することはできない。

3CRPやPCTで抗菌薬を始めるかを決める

CRP 50 mg/Lで感度・特異度とも75%、PCT 0.5 µg/Lで感度44%。開始判断には不十分で、米国・欧州南米のガイドラインとも推奨していない。やめる判断には使える。

4来院が遅れた患者のPCTが低いことに意味を持たせすぎる

PCTは症状の持続が3日以上になると50%を超えて低下する。CRPは持続期間によらず上昇し、長いほど高くなる。発症からの日数を必ず添えて読む。

5重症だからという理由で抗MRSA薬・抗緑膿菌薬を足す

リスク因子も保菌もなければ、重症度だけでは正当化されない。国内ガイドラインも「予後を改善せず、むしろ有害である」と書いている。

6誤嚥だから嫌気性菌をカバーする

誤嚥があっても病原体は同じで、嫌気性菌が分離されることは非常にまれ。むしろ微生物叢を乱して有害な可能性がある。

7良くなっているのに7日、10日と続ける

入院例で良好な反応があれば5日が最もエビデンスに基づく。7日超は壊死性肺炎・膿胸・菌血症・黄色ブドウ球菌・緑膿菌・レジオネラ疑い・反応不良のときだけ。

8退院したら終わりにする

肺炎後の数週から数ヵ月は心筋梗塞・不整脈・心不全・脳卒中のリスクが上がる。症状が持続する例や肺癌リスクのある例では4〜6週後の画像も要る。

8早見表とTake home

領域 押さえること
重症度の評価 帰宅可否はA-DROP・CURB-65・PSI、ICU入室の予測はIDSA/ATS基準かSMART-COP。A-DROPはショックがあれば1項目でも超重症
国内ガイドラインの立場 成人肺炎診療ガイドライン2024はA-DROPによる評価を「弱く推奨」(エビデンスの確実性C)。優越性ではなく簡便性と普及が根拠
画像 胸部X線は感度92%・特異度49%、肺エコーは感度92%・特異度89%。ATS 2025は地域に技術と機材があれば肺エコーを代替として明示的に承認(とくに画像へのアクセスが限られる環境で)。ただし除外には使えない
バイオマーカー 開始判断には使えない(CRP 50で感度特異度とも75%、PCT 0.5で感度44%)。de-escalationには使える。PCTは症状持続3日以上で50%超低下する(この1点のみ重症CAPの総説〔ICM 2026〕による)
病原体 半数未満でしか同定できない。血液培養7%、喀痰培養18%。軽症の外来例では培養そのものが不要
抗菌薬の選択 多剤耐性菌のリスク因子も保菌もない患者では、重症度だけを理由に広域にしない。誤嚥があっても嫌気性菌カバーは不要で、むしろ有害でありうる
抗菌薬の期間 外来3〜5日/一般病棟5〜7日/ICU 7〜10日。入院例で反応が良ければ5日が最もエビデンスに基づく(適切な薬で、肺内に治療濃度が達成されていることが前提
退院の目安 3日目までに全項目を満たす ― 37.8℃未満、心拍100/分未満、呼吸数24回/分未満、低酸素血症がない(SpO₂ 90%超またはPaO₂ 60 mmHg超)、収縮期血圧90 mmHg超
退院後 数週〜数ヵ月は心血管イベントのリスクが上がる。症状が5〜7日で消えた例に画像は不要。症状が持続する例や肺癌リスクのある例では4〜6週後に画像

Take home

  1. 重症度スコアは目的で使い分ける。「帰していいか」と「ICUに上げるか」は別のスコアの仕事で、どのスコアもICU入室の予測は得意ではない
  2. 胸部X線の特異度は49%しかない。ATS 2025は肺エコーを代替として明示的に認めたが、肺エコーで肺炎を否定することはできない
  3. CRPとPCTは、抗菌薬を始める判断には使えない。やめる判断には使える
  4. 良くなっているなら5日で足りる。7日を超えるのは特定の適応があるときだけ
  5. 重症度だけを理由に広域にしない。この点は国際総説と成人肺炎診療ガイドライン2024が一致している
  6. 誤嚥があっても嫌気性菌カバーは要らない。病原体は誤嚥がない場合と同じで、むしろ微生物叢を乱す可能性がある
  7. 肺炎は治って終わりではない。退院後の心血管イベントが予後を決める

この記事は外来から一般病棟までを扱った。ICUに上げたあとの話 ― 耐性菌リスク別のレジメン、マクロライドの免疫調節作用、そして食い違ったままのステロイド3試験 ― は、姉妹記事の37本目で扱う。

参考文献
  • Reyes LF, Conway Morris A, Serrano-Mayorga C, et al. Community-acquired pneumonia. Lancet. 2025;406(10516):2371-2388. DOI: 10.1016/S0140-6736(25)01493-X.
  • 日本呼吸器学会. 成人肺炎診療ガイドライン2024.
  • Metlay JP, Waterer GW, Long AC, et al. Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200(7):e45-e67.
  • Martin-Loeches I, Torres A, Nagavci B, et al. ERS/ESICM/ESCMID/ALAT guidelines for the management of severe community-acquired pneumonia. Intensive Care Med. 2023;49(6):615-632.
  • Dequin PF, Torres A, Bassetti M, et al. Severe community-acquired pneumonia: current concepts and controversies. Intensive Care Med. 2026;52(1):118-130.(姉妹記事の一次資料)
  • 厚生労働省. 診療報酬点数表 D215 超音波検査.

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  • 市中肺炎update①総論(この記事)
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