ER-症候別

心不全advanced③ー心腎連関

GDMTを止める理由の多くは、心臓そのものではなく併存症から来る。腎機能が落ちた、カリウムが上がった。その判断が正しいとは限らない。

本記事は、2025年改訂版「心不全診療ガイドライン」(日本循環器学会/日本心不全学会合同)の第10章 併存症から、GDMTの継続を左右する3つ――CKD・心腎症候群高カリウム血症貧血と鉄欠乏――を扱う。

先に結論を書くと、ガイドラインは高カリウム血症に起因するRAAS阻害薬の減量・中止が、その後の心血管イベント発生リスク上昇と関連するとし、さらにRAAS阻害薬の過小投与自体が予後不良因子である可能性にまで踏み込んでいる。「安全のために減らす」という判断が、そのまま安全とは限らない。

この記事でわかること

  • CKDステージ別に、どの心不全治療薬がどこまで使えるか(表49)
  • β遮断薬だけがCKDステージG5でも○である理由と、ビソプロロールの注意点
  • SGLT2阻害薬がG4でも◎で、eGFR 20まで使えること
  • 高カリウム血症でRAAS阻害薬を減らすことのリスクを、ガイドラインがどう書いているか
  • RALES試験で血清カリウム5.5 mEq/Lまで有効性が維持されること
  • 鉄欠乏の定義に貧血が含まれないこと、それでも静注鉄剤は貧血がないと保険適用外であること
  • 貧血に対するESA投与がクラスIII No benefitであること

1心腎連関という枠組み

心不全患者の約35〜70%に慢性腎臓病を合併していることが報告されており、急性・慢性心不全いずれでも腎機能は最も強力な予後規定因子である。

表48:心腎症候群(CRS)分類

タイプ 要因 概要
タイプ1 急性心腎症候群 急性心不全による腎機能障害
タイプ2 慢性心腎症候群 慢性心不全に伴う腎機能障害
タイプ3 急性腎心症候群 急性腎不全による心機能障害
タイプ4 慢性腎心症候群 慢性腎不全による心機能障害
タイプ5 二次性心腎症候群 全身状態の影響を受けて心と腎が同時に機能障害をきたす

eGFRだけを見ない

eGFR値およびeGFRの変化率が心血管リスク・心不全リスク・死亡率の強力な予後予測因子であることに加えて、ガイドラインはアルブミン尿および尿中アルブミン/クレアチニン比は日常診療で測定できる簡便な検査であり、心血管死・心不全増悪リスクの重要な指標であると書いている。CKDの重症度は、原因(C)・腎機能(GFR 6区分)・蛋白尿(アルブミン尿 3区分)による18段階のCGA分類で評価される。

2CKDステージ別の薬剤選択

ガイドラインは、CKDステージごとにどの薬剤が使えるかを表49で3段階に整理している。まず前提として、多くの臨床試験で腎機能が低下した症例は除外されてきたため、CKDステージG4・G5に関するエビデンスがもともと少ない。そのうえで、腎機能やカリウム値を慎重にモニタリングしながら使用する必要がある、という書き方になっている。

図1:CKDステージ別の腎機能を考慮した薬剤の選択

CKD G1〜3eGFR ≧30 mL/分/1.73m²CKD G4eGFR 15〜29 mL/分/1.73m²CKD G5eGFR <15 mL/分/1.73m²ACE阻害薬 / ARBβ遮断薬ARNIMRASGLT2阻害薬eGFR ≧20イバブラジンベルイシグアト十分なエビデンスがあり投与可能十分なエビデンスはないが、有用性が安全性を上回る場合には投与を検討してよい十分なエビデンスがなく、明確な結論が得られていない表49をもとに作成。多くの大規模試験が腎機能低下例を除外してきたため、G4・G5のエビデンスはもともと少ない

この表の読みどころ

G4でSGLT2阻害薬とイバブラジンだけが◎。SGLT2阻害薬はeGFR 20 mL/分/1.73m²までという条件付きで、主要試験の除外基準がそのまま反映されている。②β遮断薬だけがG5でも○で、他の心保護薬が△に落ちるなかで一段強い。③ACE阻害薬/ARB・ARNI・MRA・ベルイシグアトはG5で△、つまり「明確な結論が得られていない」であって、禁忌と書かれているわけではない。

3薬剤ごとに腎臓での振る舞いが違う

ACE阻害薬 / ARB

HFrEFを対象とした試験ではCKDステージG3の患者が含まれていたが、主要評価項目において腎機能による交互作用は認められなかった。一方でG4・G5を対象とした無作為化比較試験は存在しない。投与開始初期に急速なeGFRの低下(initial drop)や高カリウム血症に陥るリスクがあり、慎重なモニタリングが要る。

中止すべきかどうかは、まだ決着していない

観察研究ではACE阻害薬の中止により全死亡と心血管リスクが増大することが報告されているが、無作為化比較試験では同様の結果は認められず、継続にあたってはリスクも含めた総合的な判断が必要、というのがガイドラインの書き方である。なおHFpEFでは、ACE阻害薬やARBの腎保護作用や予後改善効果は認められていない。

β遮断薬

他の心保護薬と対照的に、腎機能のinitial dropや腎機能への長期的なリスクは少ない薬剤と考えられている。CKDステージG3・G4を合併したHFmrEF・HFrEFで全死亡率をプラセボと比較して有意に低下させることが報告され、透析のHFrEF症例でもカルベジロールの内服が生命予後を有意に改善するという小規模RCTの報告がある(HFpEF患者では同様の効果は認められていない)。

薬剤ごとに代謝経路が違う

カルベジロールは脂溶性で肝代謝であるのに対して、ビソプロロールは脂溶性・水溶性を併せもち腎排泄も関わるため、重度の腎機能低下症例では投与量を調節する必要がある。「β遮断薬は腎臓に優しい」で止めず、どちらを使っているかまで見る。

ARNI

ナトリウム利尿薬が体液貯留改善とともに腎血流とGFRの低下を伴うのに対して、ARNIによって分解が抑制されるナトリウム利尿ペプチド系には、軽度のナトリウム利尿作用による体液貯留改善とともに腎血流量とeGFRが上昇することが報告されている。

腎複合イベントも抑制する

ARNIは心血管イベント・心血管死または心不全入院の低減に加えて、腎複合イベント(eGFR 50%以上の低下、末期腎不全の発症、腎疾患による死亡)を有意に抑制し、腎機能低下速度の軽減効果も示した。効果は糖尿病性腎症およびCKD症例で特に顕著だった。一方で低血圧と尿中アルブミンの増加が認められている点は押さえておく。

MRA

CKDステージG3レベルまでであれば、CKDの有無にかかわらずHFrEF患者の予後を改善することが示されている。ただし大規模臨床試験ではG4以上が除外されているため、そのグループのエビデンスは少ない。

ACE阻害薬/ARBとの併用で高カリウム血症をきたしやすい

MRAをACE阻害薬やARBと併用すると、高カリウム血症や腎機能の悪化をきたしやすいため注意を要する。なお第三世代のMRAである非ステロイド型のエサキセレノンとフィネレノンは、それぞれ高血圧、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に対して保険適用承認されている。フィネレノンはFIDELIO-DKDとFIGARO-DKDの統合解析(FIDELITY研究)で、心血管複合アウトカムを14%、心不全入院を22%、腎複合アウトカムを23%低減した。

SGLT2阻害薬

心保護効果の機序の1つとして、腎保護効果による心腎連関へのベネフィットが挙げられている。糖尿病合併の有無、心血管リスクの有無、アルブミン尿の有無、腎機能にかかわらず、CKDまたは心不全患者における腎機能の低下を遅らせ、急性腎障害のリスクを低減させることが報告されている。

推奨表69:CKDを合併した心不全患者に対する薬物治療

推奨 クラス レベル
CKD*1を合併した心不全患者に、心不全入院または心血管死リスク低減を目的として、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジンあるいはエンパグリフロジン)を投与する I A
CKD*2を合併したHFrEF患者に、心不全入院または心血管死リスク低減を目的として、MRA、ARNI、β遮断薬を投与する I A
CKDを合併した心不全患者では血圧、腎機能、K値を定期的に測定する I A

*1 eGFR 20 mL/分/1.73m²以上 / *2 MRA、ARNIはeGFR 30 mL/分/1.73m²以上

脚注のほうが実務では効く

この表は脚注まで読まないと危ない。SGLT2阻害薬の推奨はeGFR 20 mL/分/1.73m²以上が前提で、MRAとARNIに至ってはeGFR 30 mL/分/1.73m²以上という条件が付く。つまり表49でMRA・ARNIがG4(eGFR 15〜29)で○どまり、G5で△になっていることと、この脚注は同じことを言っている。「CKD合併心不全にMRA・ARNIはクラスI・A」だけを覚えて帰ると、G4以降で条件を外してしまう。

4高カリウム血症:減らすこと自体がリスクになりうる

高カリウム血症は、RAAS阻害薬の減量や中止(あるいは投与期間の短縮)につながることが多い。ここでガイドラインが書いていることが、この記事でいちばん重要な部分である。

減量・中止は、その後のイベント上昇と関連する

心不全患者における高カリウム血症に起因するRAAS阻害薬の減量または中止は、その後の心血管イベント発生リスク上昇と関連するという報告もあり、RAAS阻害薬の過小投与自体が、高カリウム血症を合併した心不全患者の予後不良因子である可能性も示唆されている。「カリウムが上がったから減らす」という判断は、それ自体がリスクを持ちうる、ということになる。

5.5 mEq/Lまでは効果が維持される

根拠として2つの試験が引かれている。RALES試験では、MRAのHFrEFに対する予後改善効果は血清カリウム値5.5 mEq/L以下では維持されること。EMPHASIS-HF試験では、MRAはプラセボと比較して高カリウム血症(>5.5 mEq/L)の発生率が高かったが、死亡率は低かったこと。カリウムが5.0台に乗った時点で反射的に切ると、得られるはずの予後改善を手放すことになる。

推奨表71:高カリウム血症を合併した心不全患者に対する治療

推奨 クラス レベル
高カリウム血症を合併したRAAS阻害薬服用中の心不全患者に対して、RAAS阻害薬(特にMRA)による治療最適化のために、カリウム吸着薬の使用を考慮する IIa B-R

つまりRAAS阻害薬を減らす代わりに、カリウムのほうを下げにいくという選択肢が推奨として立っている。血清カリウム値や腎機能のモニタリングを行い、高カリウム血症を認めた場合は原因検索に加えてカリウム吸着薬などによる適切な早期介入を行うことで、RAAS阻害薬の投与量や投与期間が最適化されることが期待される、という書き方である。

ただし優先順位は決まっていない

ガイドラインは正直に、カリウム吸着薬による治療とRAAS阻害薬の減量・中止のどちらを優先して行うかは定まった見解はないとしたうえで、血清カリウム値に応じた対応が推奨される(図47の管理アルゴリズム)としている。「どちらか一方が正解」ではなく、値と状況に応じて判断する領域である。

5貧血と鉄欠乏

わが国の観察研究では、心不全急性増悪による入院患者の約60%、慢性心不全で外来通院する患者の約35%に貧血を認め、いずれの患者群でも独立した予後規定因子である。

図2:心不全患者における鉄欠乏の定義と、静注鉄剤の位置づけ

血球数・血清フェリチン・TSATを測る(クラスI)血清フェリチン <100 ng/mLこれだけで鉄欠乏血清フェリチン 100〜300 ng/mLかつ TSAT <20%の場合に鉄欠乏鉄欠乏あり(貧血の有無は問わない)ただし静注鉄剤は、わが国では鉄欠乏性貧血のみに保険適用貧血がない鉄欠乏の症例に対しては保険適用外。推奨クラスIIa・B-Rが付いているのは貧血の有無を問わない鉄欠乏に対して

鉄欠乏の定義に「貧血」は入っていない

心不全患者の鉄欠乏の基準は、血清フェリチン<100 ng/mL、または血清フェリチン100〜300 ng/mLかつTSAT<20%と定義されることが多い。ヘモグロビン値は定義に含まれない。実際ガイドラインは、QOLや運動耐容能に対する効果は必ずしも貧血の改善を介したものではなく、貧血を有さない患者でも有効性が報告されていると書いている。

推奨表70:貧血・鉄欠乏を合併した心不全患者の治療

推奨 クラス レベル
心不全患者に対する血球数、血清フェリチン濃度、トランスフェリン飽和度(TSAT)による貧血、鉄欠乏のスクリーニングを行う I C-EO
鉄欠乏を有するHFrEF/HFmrEF患者に対する心不全症状や運動耐容能改善を目的とした静注鉄剤(カルボキシマルトース第二鉄、デルイソマルトース第二鉄)を考慮する* IIa B-R
高度貧血を有する心不全患者に対する心血管イベントの抑制を目的とした赤血球輸血を考慮してもよい IIb C-LD
貧血を有する心不全患者に対する心血管イベントの抑制を目的としてのESA投与は推奨されない III No benefit B-R

*静注鉄剤はわが国では鉄欠乏性貧血のみに保険適用であり、貧血がない症例に関しては保険適用外

ここにも推奨と保険のずれがある

推奨クラスIIa・B-Rが付いているのは「鉄欠乏を有するHFrEF/HFmrEF患者」に対してで、その鉄欠乏の定義に貧血は含まれない。ところが静注鉄剤はわが国では鉄欠乏性貧血のみに保険適用であり、貧血がない症例に関しては保険適用外である。このシリーズで繰り返し出てきた構図が、ここにも現れる。あわせてガイドラインは、心血管イベント抑制効果に関する有効性は海外データを主としている点にも注釈を付けている。

鉄欠乏の定義自体が議論されている

HEART-FID試験では、階層的複合主要評価項目でも副次評価項目でも有効性を認めなかった。一方、HEART-FIDを含むメタ解析ではTSAT 15〜20%未満の群で心血管イベント抑制効果が強いことが報告されており、静注鉄剤の有効性における鉄欠乏の再定義を含めた議論がある。なお鉄過剰は酸化ストレスや悪性腫瘍との関連も報告されており、鉄投与に際しては定期的な血算等のフォローが必要とされている。

6電解質のその他(低K・低Na)

低カリウム血症

通常、血清カリウム値<3.5 mEq/Lと定義される。慢性心不全患者では不整脈、突然死、総死亡率の上昇と関連する。低カリウム血症を認めた場合、まずは偽性低カリウム血症の除外を行い、その後さらなる原因検索を進める。持続する場合や、心電図異常・筋力低下など早急な補正を必要とする場合には、経口カリウム製剤(経口が不可能な場合は経静脈投与)を行う。

低ナトリウム血症

通常、血清ナトリウム値<136 mEq/Lとして定義され、軽度(130〜135)、中等度(125〜129)、重度(<125 mEq/L)に分類される。急性心不全で入院した患者の約20〜30%に認められ、入院後に新規発症する患者が約15〜25%。心不全入院や死亡リスク増加と関連する。

トルバプタンにも保険適用の壁がある

心不全患者の低ナトリウム血症の原因はRAAS系の亢進、アルギニンバソプレシンの分泌亢進による希釈性、ループ利尿薬やサイアザイド投与による薬剤性など複合的である。選択的バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)はV2受容体をブロックして水の再吸収を抑制し血清ナトリウム濃度を上昇させるが、わが国では低ナトリウム血症に関してはSIADHのみが保険適用である。②で扱った心不全の体液管理としての適応とは別枠になる。

7やりがちな失敗

1eGFRが落ちたという理由だけでRAAS阻害薬を止める

観察研究では中止で全死亡・心血管リスクが増大する報告があり、高カリウム血症に起因する減量・中止はその後の心血管イベント上昇と関連する。過小投与自体が予後不良因子でありうる、とガイドラインは書いている。

2カリウム5.0台でMRAを反射的に切る

RALES試験ではMRAの予後改善効果は血清カリウム値5.5 mEq/L以下では維持される。EMPHASIS-HFでも高カリウム血症は多いが死亡率は低かった。カリウム吸着薬でカリウムのほうを下げる選択肢がIIa・B-Rで立っている。

3G4だからSGLT2阻害薬も無理だろうと考える

表49でG4は◎(eGFR 20 mL/分/1.73m²以上)。CKD合併心不全へのSGLT2阻害薬は推奨表69でクラスI・A。

4β遮断薬なら腎臓は気にしなくてよいと考える

カルベジロールは肝代謝だが、ビソプロロールは腎排泄も関わるため重度腎機能低下では用量調節が必要。

5貧血がないから鉄は測らない

鉄欠乏の定義(フェリチン<100、またはフェリチン100〜300かつTSAT<20%)に貧血は含まれない。スクリーニング自体がクラスI。ただし静注鉄剤は貧血がなければ保険適用外という制約は別にある。

6貧血にESAを使う

貧血を有する心不全患者に対する心血管イベント抑制目的のESA投与はクラスIII No benefit・B-R。血栓塞栓症の発症も観察されている。

7アルブミン尿を測らない

eGFRと並んで、アルブミン尿および尿中アルブミン/クレアチニン比が心血管死・心不全増悪リスクの重要な指標として挙げられている。

8低カリウム血症をすぐ補正しにいく

まず偽性低カリウム血症の除外を行い、その後に原因検索を進める、という順序がガイドラインに書かれている。

8早見表とTake home

領域 押さえること
CKDの頻度と意味 心不全患者の約35〜70%に合併。腎機能は最も強力な予後規定因子。eGFRに加えてアルブミン尿・尿中Alb/Cr比も重要指標
CKDステージ別(表49) G4で◎はSGLT2阻害薬(eGFR≧20)とイバブラジンのみ。β遮断薬はG5でも○。ACE/ARB・ARNI・MRA・ベルイシグアトはG5で△
薬剤ごとの腎への振る舞い ACE/ARBはinitial dropと高K/β遮断薬はinitial dropが少ないがビソプロロールは腎排泄/ARNIはeGFR上昇・腎複合イベント抑制/MRAはG3まで
CKD合併心不全の推奨 SGLT2阻害薬がI・A(eGFR≧20)。MRA・ARNI・β遮断薬もI・AだがHFrEF限定で、MRA・ARNIはeGFR≧30が条件。血圧・腎機能・K値の定期測定もI・A
高カリウム血症 減量・中止はその後の心血管イベント上昇と関連。RALESでは5.5 mEq/Lまで効果が維持。カリウム吸着薬による最適化がIIa・B-R
鉄欠乏の定義 フェリチン<100 ng/mL、またはフェリチン100〜300 ng/mLかつTSAT<20%。貧血の有無は定義に含まれない
貧血・鉄欠乏の推奨 スクリーニング(血球数・フェリチン・TSAT)はI・C-EO、静注鉄剤はIIa・B-R(貧血がなければ保険適用外)、輸血はIIb、ESAはIII No benefit
低K・低Na 低Kは<3.5で不整脈・突然死と関連、まず偽性低Kの除外。低Naは<136で急性心不全入院の20〜30%。トルバプタンは低NaではSIADHのみ保険適用

Take home

  1. 高カリウム血症に起因するRAAS阻害薬の減量・中止は、その後の心血管イベント上昇と関連する。ガイドラインは過小投与自体が予後不良因子である可能性にまで踏み込んでいる
  2. RALES試験ではMRAの予後改善効果は血清カリウム5.5 mEq/L以下で維持される。カリウムが5.0台に乗った時点で反射的に切らない
  3. RAAS阻害薬を減らす代わりにカリウム吸着薬でカリウムのほうを下げる、という選択肢がIIa・B-Rで立っている。ただしどちらを優先するかに定まった見解はない
  4. CKDステージG4で◎なのはSGLT2阻害薬(eGFR≧20)とイバブラジンだけ。β遮断薬はG5でも○で、他の心保護薬より一段強い
  5. β遮断薬は腎機能のinitial dropが少ないが、ビソプロロールは腎排泄も関わるため重度腎機能低下では用量調節が要る
  6. ARNIは腎血流とeGFRを上昇させ、腎複合イベントも有意に抑制する。一方で低血圧と尿中アルブミン増加に注意
  7. 鉄欠乏の定義に貧血は含まれない(フェリチン<100、またはフェリチン100〜300かつTSAT<20%)。スクリーニングはクラスIだが、静注鉄剤は貧血がなければ保険適用外
  8. 貧血に対するESA投与はクラスIII No benefit。血栓塞栓症の発症も観察されている

腎機能とカリウムは、GDMTを続けるうえでいちばん頻繁に立ちはだかる。ガイドラインがこの章で繰り返し書いているのは、その壁を前にして「減らす」以外の手が用意されている、ということである。

参考文献
  • 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン. 2025年改訂版 心不全診療ガイドライン. 2025年3月28日発行・2025年12月19日更新. 第10章 併存症.
  • Ronco C, McCullough P, Anker SD, et al. Cardio-renal syndromes: report from the consensus conference of the Acute Dialysis Quality Initiative. Eur Heart J. 2010;31(6):703-711.
  • Pitt B, Zannad F, Remme WJ, et al. The effect of spironolactone on morbidity and mortality in patients with severe heart failure(RALES試験). N Engl J Med. 1999;341(10):709-717.
  • Zannad F, McMurray JJV, Krum H, et al. Eplerenone in patients with systolic heart failure and mild symptoms(EMPHASIS-HF試験). N Engl J Med. 2011;364(1):11-21.
  • Mentz RJ, Garg J, Rockhold FW, et al. Ferric Carboxymaltose in Heart Failure with Iron Deficiency(HEART-FID試験). N Engl J Med. 2023;389(11):975-986.
  • Agarwal R, Filippatos G, Pitt B, et al. Cardiovascular and kidney outcomes with finerenone in patients with type 2 diabetes and chronic kidney disease: the FIDELITY pooled analysis. Eur Heart J. 2022;43(6):474-484.
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