たとえば、重症例でICUに上げたあとの話である。抗菌薬の選び方は整理されてきた。だがステロイドは、3つの大規模試験がそろって別のことを言ったまま止まっている。
本記事は2026年1月にIntensive Care Medicineに掲載された重症市中肺炎(sCAP)のNarrative Reviewを軸に、日本の添付文書と突き合わせて読む。外来から一般病棟までを扱った36本目の姉妹記事にあたる。診断・重症度評価・退院後のフォローはそちらを参照してほしい。
なお本記事における重症CAPの定義は、ERS/ESICM/ESCMID/ALATガイドラインに従ってICUに入室した市中肺炎とする。IDSA/ATSの基準(大基準1つまたは小基準3つ以上)も広く使われるが、小基準を満たす患者のかなりの割合が一般病棟で管理されている、という実務上の問題が指摘されている。
この記事でわかること
- 重症CAPの30日死亡は約30%、1年死亡は47%で、晩期死亡の主因が心血管イベントであること
- 広範に調べても重症CAPの最大49%で病原体が同定できないこと
- リスク因子別の初期レジメンと、PVL産生黄色ブドウ球菌を疑う臨床像
- ACCESS試験で、クラリスロマイシンの上乗せが免疫調節として評価されたこと
- そのクラリスロマイシンのレジメンが、日本ではそのまま再現できないこと
- ステロイドの3大試験(CAPE COD・ESCAPE・REMAP-CAP)が食い違っている実際
- REMAP-CAPが示した「害の確率84〜91%」という数字
- ヒドロコルチゾンの添付文書が、感染性ショックへの有効性は確認されていないと明記していること
1重症CAPの重さを数字で見る
疫学と予後
| 入院を要するCAP | CAP患者の40%が入院を要し、そのうち5%がICUに入室する |
| 米国の重症CAP | 年間およそ35万人(成人10万人あたり145例) |
| 30日死亡 | 約30% |
| 1年死亡 | 47% |
| 人工呼吸+ショック | 死亡は30%を超える |
| 晩期死亡の主因 | 心血管イベント、COPDの進行、がん、感染症(新たな肺炎を含む) |
退院時に炎症は終わっていない
この総説がいちばん強調しているのが、臨床的な回復より生物学的な回復のほうが遅れるという点である。全身性炎症は臨床所見が消えたあと何週間も持続することが示されており、退院時点で臨床的に安定している患者の多くでIL-6とD-dimerが高いまま残る。そしてそれが1年死亡と、晩期の心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中)を独立して予測する。
重症CAPは、病原体を排除したかどうかだけでなく、宿主反応の大きさ・持続・収束のしかたが転帰を決める疾患である ― 制御不能な全身性炎症の病態として捉え直されつつある、というのが総説の立場になっている。
重症度スコアの使い分け(36本目の再掲)
PSIとCURB-65は低リスクの同定には有効だが、ICU入室の必要性は予測しない。ICU入室を要する患者の早期同定には、IDSA/ATSの重症CAP基準とSMART-COPのほうが適している。SMART-COPは呼吸・循環サポートの必要性を予測する設計で、0〜2が低リスク、3〜4が中等度(8人に1人)、5〜6が高リスク(3人に1人)、7点以上が非常に高リスク(3人に2人)とされる。
2病原体は最大半分が不明のまま
重症CAPの病原体分布を専門に調べた大規模な疫学研究は存在しない、と総説は断っている。そのうえで、複数の研究から見えることを整理している。
主な研究が示した病原体
| EPIC研究 | ICU入室例のうちウイルス単独が22%、細菌単独が19%、混合が4%。広範なウイルス検査を行うと、ウイルスのほうが細菌より多い可能性が示された |
| 単施設コホート | 重症CAP 664例中、病原体が分離された336例では肺炎球菌55%、呼吸器ウイルス16%、レジオネラ9%、緑膿菌7%、黄色ブドウ球菌6%(メチシリン感受性の内訳は不明)。17%で複数病原体 |
| GLIMP研究 | 54か国222施設3702例。肺炎球菌が最多(全患者の8.2%)でペニシリン耐性は0.5%。分離された病原体のうち緑膿菌4.1%、MRSA 3.0%(米国が西欧より有意に高い)、腸内細菌目6%(アフリカでは18%)。ただし系統的な原因検索を行っておらず、ICU限定の研究でもないため、重症CAPへの一般化には限界がある |
| レジオネラ | CAP全体の5%を超えないが、重症度のためICUでは過剰に代表される |
ウイルスが出ても、細菌の合併を捨てない
EPIC研究で混合感染が4%だったことには実務的な意味がある。ウイルス検査が陽性だった場合でも混合感染の可能性を考える必要があり、細菌の共感染は転帰を有意に悪くする。「インフルエンザだったから抗菌薬は要らない」と即断できない理由がここにある。
検査を尽くしても半分は分からない
高品質喀痰(扁平上皮10個未満かつ白血球25個超)は得ること自体が難しく、診断収率は14%まで低いことがある。侵襲的サンプリングは喀痰より収率が高い(56%対39%、p=0.018)が、従来法を組み合わせても重症CAPの最大49%で病原体が同定できない。
多項目PCRについては、ERS/ESICM/ESCMID/ALATガイドラインが条件付きで推奨している ― 技術が利用可能であれば、標準的でない抗菌薬を処方するか検討する場合に、下気道検体を多項目PCRに提出する。緑膿菌やMRSAが否定されれば、高い陰性的中率を根拠に安全にde-escalationできる可能性がある。ただし抗菌薬適正使用の助言と組み合わせなければ、投与期間を短縮した研究は今のところない。
PVL産生黄色ブドウ球菌をどう疑うか
まれだが、緊急の対応を要する病態として総説が具体的に記述している。重症の敗血症として、しばしばウイルス感染後の文脈で、喀血・白血球減少・皮疹・壊死性の所見(多発結節と空洞像)を伴い、若年者に起こる。抗毒素効果が期待される薬剤(クリンダマイシン、リネゾリド、リファンピシン)による治療を急ぐ必要がある。
3リスク因子別の初期レジメン
薬剤耐性菌のリスクがない患者では、β-ラクタムとマクロライドまたはキノロンの併用が基本になる。レジオネラによる重症CAPではキノロンが好まれる。
図1:重症CAPの初期経験的治療
原因菌が判明したあとの標的治療
| 病原体 | de-escalation先 |
|---|---|
| 肺炎球菌 | アモキシシリン 2 g×3回/日 |
| レジオネラ | レボフロキサシン 500 mg×1〜2回/日 |
| 緑膿菌 | 感受性検査に従って調整する |
| MSSA(PVLなし) | オキサシリン、フルクロキサシリン、またはセファゾリン |
| MRSA(PVLなし) | リネゾリド、バンコマイシン、セフタロリン、またはセフトビプロール |
| MSSA(PVLあり) | (オキサシリン、フルクロキサシリンまたはセファゾリン)+(クリンダマイシンまたはリファンピシン) |
| MRSA(PVLあり) | リネゾリド、または(バンコマイシン+クリンダマイシンまたはリファンピシン) |
de-escalationは病原体の同定と耐性表現型に基づいて行うが、共感染の可能性には引き続き注意する。オキサシリン・フルクロキサシリン・セフタロリン・セフトビプロールは国内では使えない
ガイドラインがキノロンよりマクロライドを推す2つの理由
ERS/ESICM/ESCMID/ALATガイドラインは、細胞内寄生菌に対する併用薬としてマクロライドを優先している。理由は2つで、キノロンによる重篤な心血管イベントのリスクと、一部のマクロライドが持つ免疫調節作用である。後者については次の節で扱う。
緑膿菌とMRSAのリスク因子
市中発症の緑膿菌肺炎の主なリスク因子は、この病原体による定着または感染の既往で、多くはCOPD・気管支拡張症・嚢胞性線維症の患者である。通常、過去12ヵ月以内の入院と抗菌薬治療を伴っている。
黄色ブドウ球菌によるCAPは、インフルエンザなどウイルス性肺炎の合併症として現れることが最も多い。メチシリン感受性か耐性かは地域の菌の分布に基づいて評価する。MRSA株は、過去12ヵ月以内の感染・定着、入院、抗菌薬治療がある場合に分離されやすい。
新しい抗菌薬の位置づけ
MRSAの経験的カバーが妥当に正当化される場面では、セフタロリンとセフトビプロールがRCTと観察研究の両方で有効性を示しており、優先されうるとされている。デラフロキサシン、レファムリン、オマダサイクリンは非劣性試験に基づいてFDAが承認したが、重症CAPでは評価されておらず位置づけは未確定である。
ただしこの5剤は、2026年8月時点でいずれも日本では承認されていない。日本で抗MRSA薬として選べるのは、この文脈ではリネゾリドとバンコマイシンになる。
4日本では用量がそろわない
ここは原著にはない、日本の読者向けの節である。図1のレジメンをそのまま持ち込もうとすると、いくつかの薬剤で添付文書の壁に当たる。
国際推奨と日本の添付文書
| 薬剤 | 国際推奨 | 日本の添付文書 |
|---|---|---|
| クラリスロマイシン | 500 mg×2回 =1000 mg/日 |
一般感染症は1日400 mgを2回に分けて経口投与。そして国内に静注製剤がない |
| セフォタキシム | 2 g×3回=6 g/日 | 1日1〜2 gを2回に分けて。難治性・重症で1日4 gまで |
| レボフロキサシン点滴 | 500 mg×1〜2回/日 | 1回500 mgを1日1回 |
| セフェピム | 2 g×3回=6 g/日 | 1日1〜2 gを2回に分けて。難治性・重症で1日4 gまで |
| メロペネム | 1 g×3回=3 g/日 | 通常1日0.5〜1 gを2〜3回に分割。重症・難治性感染症では1日3 gまで増量できる |
| ピペラシリン・タゾバクタム | 4.5 g×4回/日 | 肺炎では1回4.5 gを1日3回。症状に応じて1日4回に増量できる(承認内) |
| セフトリアキソン | 2 g/日 | 1日1〜2 g。難治性・重症で1日4 gまで(承認内) |
| リネゾリド | 600 mg×2回/日 | 1日1200 mg(1回600 mgを12時間ごと)で一致 |
2026年8月時点で確認した各製剤の電子添文による。バンコマイシンは添付文書の標準量が1日2 gで、TDMの目標達成のために実臨床で用いられる用量がこれを超えることがある
ACCESS試験のレジメンは、日本ではそのまま再現できない
いちばん大きいのがクラリスロマイシンである。国際推奨は1000 mg/日だが、日本の添付文書の一般感染症の用法・用量は1日400 mgを2回に分けて経口投与。1日800 mgが明記されているのは非結核性抗酸菌症だけである。
そして用量以上に効いてくるのが剤形で、日本にクラリスロマイシンの静注製剤が見当たらない。国内で静注できるマクロライドはエリスロマイシンとアジスロマイシンになる。つまり重症例でβ-ラクタムに静注マクロライドを足すなら、日本での選択肢は実質的にアジスロマイシン点滴静注500 mg/日である。次節のACCESS試験はクラリスロマイシンで行われた試験なので、その結果をそのまま日本の実務に移せるわけではない。
メロペネムは「通常量」に引きずられない
日本のメロペネムは通常量が1日0.5〜1 gと、国際的な重症例の用量と桁が違う。ただし添付文書自身が「重症・難治性感染症には、1回1 gを上限として、1日3 gまで増量することができる」と書いている。重症CAPは明示的に「重症・難治性感染症」として3 g/日を選ぶ場面であり、通常量のまま走らせる理由はない。
5マクロライドは抗菌薬か、免疫調節薬か
β-ラクタムにマクロライドを足す根拠が、細胞内寄生菌のカバーだけではなくなってきている。
ACCESS試験
β-ラクタム(レジオネラ感染例ではモキシフロキサシン)に、経口クラリスロマイシン7日間かプラセボを上乗せした二重盲検RCT。
主要評価項目は、治療開始72時間以内の「呼吸器症状スコアの低下」+「SOFAスコアまたはプロカルシトニンの低下」の複合で、クラリスロマイシン群67.9%に対しプラセボ群38.3%(p<0.0001)。
副次的には、呼吸不全への進行が6.0%対17.3%、二次性敗血症が13.4%対24.1%、生存退院が79.1%対62.4%。ステロイドを投与された患者でも同じ利益が観察され、免疫学的な検討ではクラリスロマイシン群で免疫麻痺の是正が支持された。
ただしLancet側は慎重である
姉妹記事で扱ったLancet Seminarは、同じACCESS試験について「代替アウトカムでのこれらの改善が、QOLの向上、機能回復の早さ、死亡率の低下といった患者にとって実感できる利益に翻訳されるかは、なお不確実である」と釘を刺している。
実際、別のRCTでは、非ICU病棟に入院したCAPにおいて、β-ラクタム単剤を優先する戦略が、β-ラクタム+マクロライドやキノロン単剤に対して90日死亡で非劣性だった。マクロライドの上乗せが効くとしたら、それは重症例に限られる可能性が高い、という読み方になる。
長期予後との関連
あるコホート研究では、ICU入室後48時間以内のマクロライド投与が、6ヵ月および12ヵ月時点の死亡の有意な低下と関連していた。ただし総説は「現時点で、これらの長期アウトカムへの効果を示したRCTは存在しない」と明記している。またマクロライド同士を比較した試験もなく、薬物相互作用と心血管系の副作用を考慮して選ぶことになる。
なお、de-escalationを行った場合でもマクロライドは継続すべきとされている点は覚えておきたい。免疫調節を目的に足しているのであれば、原因菌が判明しても抜く理由がないからである。
6ステロイド ―3つの試験が食い違った
この記事の芯はここになる。ICUを対象にした3つの大規模多施設試験が、そろって別のことを言った。
図2:重症CAPに対するステロイドの3大試験
REMAP-CAPの数字は軽くない
死亡の相対リスクが1.52(95%CI 0.81-2.80)で、ベイズ解析での害の確率が84.3〜90.8%。これは「効かなかった」ではなく「悪くしたかもしれない」側の結果である。信頼区間が1をまたいでいるので有意ではないが、点推定が害の方向にあること自体は無視できない。
CRP 204 mg/L という数字
食い違いの説明は現時点では仮説の域を出ない、と総説は正直に書いている。方法とケースミックスの違いを超えて、これらの結果が示唆しているのはステロイドの恩恵を受ける患者の表現型をもっと明確に定義する必要があるということである。
その方向で、REMAP-CAPを含まない8試験の個別患者データメタ解析は、ステロイドによる死亡低下が初期CRP 204 mg/L超の患者に限られていたことを示唆している。つまり議論は「重症CAP全員に使うか」から「炎症が強く出ている患者を選べるか」へ移りつつある。
メタ解析はどう言っているか
3試験に加えて、CAPの他の試験、および敗血症・敗血症性ショック・ARDSの試験(CAPサブグループの死亡が分かるもの)を統合したメタ解析は、中等度の確実性でCAPの1ヵ月死亡を減らす(RR 0.82、95%CI 0.74-0.91)とし、高い確実性で侵襲的人工呼吸の必要性を減らす(RR 0.63、95%CI 0.48-0.82)としている。
また敗血症性ショックを合併した肺炎について、APROCCHSS試験のpost hoc解析は、ヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾンの利益が肺由来の敗血症性ショックに限られていたことを示唆している。
インフルエンザ肺炎には使わない
ほぼコホート研究のみのデータだが、インフルエンザ肺炎ではステロイドを受けた患者で死亡が増えることが示唆されており、この状況では処方すべきでない。ATS 2025も、重症CAPにはステロイドを提案する一方でインフルエンザ肺炎を明示的に除外している(条件付き推奨、低い質のエビデンス)。非重症CAPには推奨されない。
副作用は思ったより出ていない
重症CAPにおけるステロイドの忍容性は良好で、高血糖が増える以外は目立たない。とくにしばしば恐れられる二次感染のリスクは増加していないようだ、と書かれている。
病原体別のデータは乏しい。SARS-CoV-2による肺炎では、有効な抗ウイルス薬がなかった時期でも、酸素または人工呼吸を要する患者でステロイドが生存を改善した。免疫不全患者のデータはニューモシスチス肺炎を除いてない。
日本の添付文書は、名指しで釘を刺している
CAPE CODで用いられたヒドロコルチゾンだが、日本の添付文書との関係は率直に言って厳しい。ソル・コーテフ静注用の効能・効果は「急性循環不全(出血性ショック、外傷性ショック)及びショック様状態における救急」「気管支喘息」であり、敗血症性ショックも重症肺炎も含まれていない。
そのうえ重要な基本的注意に、こう書かれている。「本剤を感染性ショックに使用した場合の有効性は、確認されていない」。
つまり重症CAPに対するヒドロコルチゾンは、日本では適応外使用であるというだけでなく、添付文書自身が有効性未確認と注意喚起している構図になる。国際的なエビデンスが割れている領域で、国内の添付文書がさらにもう一段慎重、という位置関係を知っておきたい。
7呼吸サポート
総説は、重症CAPに固有のエビデンスが乏しいことを認めたうえで、低酸素性呼吸不全とARDSの大半が肺炎由来であることから、ARDSのガイドラインを妥当に適用しうるという立場をとっている。
図3:呼吸サポートの段階
HFNTとNIVの使い分け
どの患者がどの非侵襲的サポートから最も恩恵を受けるかは不確実である、と総説は書いている。そのうえで、HFNTが多くの患者で第一選択となりうるとされ、従来の酸素療法よりHFNTが強く推奨される(挿管リスクを減らす。ただし死亡は減らさない)。
NIVが相対禁忌になるのは、分泌物が多い場合、顔の構造や髭でリークする場合、コンプライアンス不良の場合。逆に呼吸仕事量の増加、強い呼吸困難、呼吸筋疲労、うっ血性心不全ではNIVのほうが好ましいとされる。陽圧が血行動態に有利に働くためである。フェイスマスクとヘルメットの優劣は形式的には証明されていない。
すべての呼吸サポートの目的は同じ
総説の一文が端的である。急性呼吸不全に対するすべての支持手段の目的は、抗菌薬治療が肺炎を治すまでの時間を稼ぐことにある。呼吸サポートそのものが肺炎を治すわけではない、という当たり前のことを、選択に迷ったときに思い出すとよい。
8やりがちな失敗
EPIC研究ではICU例の4%が混合感染だった。細菌の共感染は転帰を有意に悪くする。ウイルス陽性は細菌感染を否定しない。
従来法を尽くしても重症CAPの最大49%で病原体は同定できない。多項目PCRの高い陰性的中率を使って、緑膿菌やMRSAが否定されればde-escalationできる可能性がある。ただし適正使用の助言と組み合わせないと期間短縮の効果は出ていない。
国際推奨は1000 mg/日だが、日本の添付文書の一般感染症は1日400 mg分2で、しかも国内に静注製剤が見当たらない。静注マクロライドを足すならアジスロマイシン点滴静注になる。
日本の通常量は1日0.5〜1 gだが、添付文書自身が「重症・難治性感染症には1日3 gまで増量できる」と書いている。重症CAPはその場面である。
CAPE CODは陽性、ESCAPEは差なし、REMAP-CAPは死亡の相対リスク1.52で害の確率84〜91%。IPDメタ解析では利益は初期CRP 204 mg/L超に限られていた。
死亡が増えることが示唆されており、この状況では使わない。ATS 2025も重症CAPへの提案から明示的に除外している。
免疫調節を目的に足しているなら、原因菌が判明しても抜く理由がない。総説はde-escalation後もマクロライドを継続すべきとしている。
禁忌がなければ試してよいが、条件が付いている。悪化したらすぐ挿管できる、経験のあるチームによる綿密なモニタリング下であること。
9早見表とTake home
| 領域 | 押さえること |
|---|---|
| 定義 | ERS/ESICM/ESCMID/ALATではICUに入室したCAP。IDSA/ATSは大基準1つまたは小基準3つ以上 |
| 予後 | 30日死亡 約30%、1年死亡 47%。人工呼吸+ショックでは30%超。晩期死亡の主因は心血管イベント |
| 病原体 | EPIC研究のICU例でウイルス単独22%・細菌単独19%・混合4%。従来法を尽くしても最大49%が不明 |
| 初期レジメン | リスクなし=第3世代セフェム+マクロライド。緑膿菌リスク=抗緑膿菌β-ラクタム+マクロライド。MRSAリスク=これにリネゾリドかバンコマイシン |
| PVLを疑う像 | 重症敗血症、ウイルス感染後、喀血、白血球減少、皮疹、多発結節と空洞。若年に多い。クリンダマイシン・リネゾリド・リファンピシン |
| 日本の用量ギャップ | クラリスロマイシン(1000 vs 400 mg/日、しかも国内に静注なし)、セフォタキシム(6 vs 4 g/日)、レボフロキサシン点滴(2回 vs 1日1回)、セフェピム(6 vs 4 g/日) |
| 国内未承認 | セフタロリン、セフトビプロール、デラフロキサシン、レファムリン、オマダサイクリン |
| マクロライド | ACCESS試験で72時間の複合評価項目 67.9% vs 38.3%。呼吸不全への進行 6.0% vs 17.3%。de-escalation後も継続する |
| ステロイド | CAPE COD陽性(28日死亡6.2% vs 11.9%)、ESCAPE差なし、REMAP-CAPは害の可能性(RR 1.52、害の確率84〜91%)。IPDメタ解析では利益は初期CRP 204 mg/L超に限定。インフルエンザ肺炎には使わない |
| 日本のステロイド | ソル・コーテフ静注用の効能に敗血症性ショックも重症肺炎も含まれず、添付文書に「感染性ショックに使用した場合の有効性は、確認されていない」と明記 |
| 抗菌薬の期間 | 臨床的安定が得られたら最低5日。ただし患者の臨床状態と免疫状態によってはより長くなりうる。人工呼吸中は「臨床的安定」の定義自体が曖昧である点にも注意 |
| 呼吸サポート | HFNTが第一選択となりうる。従来の酸素療法よりHFNTが強く推奨され挿管を減らす(死亡は減らさない)。PEEP調整後の安定化期間を経てもP/F 150未満なら早期腹臥位16時間以上。リクルートメント手技は非推奨で、筋弛緩薬の持続投与もルーチンには行わない |
Take home
- 重症CAPの1年死亡は47%で、晩期死亡の主因は心血管イベントである。退院時にIL-6とD-dimerが高いまま残る患者が多く、それが1年死亡を独立して予測する
- 検査を尽くしても最大49%で病原体は分からない。ウイルスが出ても細菌の共感染を捨てない
- ACCESS試験でマクロライドの上乗せは免疫調節として評価されたが、そのクラリスロマイシンのレジメンは日本ではそのまま再現できない。静注製剤が国内にないためである
- ステロイドは3つの大規模試験が食い違ったままである。REMAP-CAPは死亡の相対リスク1.52、害の確率84〜91%を示した
- 議論は「重症CAP全員に使うか」から「炎症が強い患者を選べるか」へ移りつつある。IPDメタ解析が示した閾値は初期CRP 204 mg/L
- インフルエンザ肺炎にステロイドは使わない。ATS 2025も明示的に除外している
- 日本ではヒドロコルチゾンの添付文書自身が「感染性ショックに使用した場合の有効性は、確認されていない」と書いている
- すべての呼吸サポートの目的は、抗菌薬が肺炎を治すまでの時間を稼ぐことにある
診断・重症度評価・外来から一般病棟までの管理・退院後のフォローは、姉妹記事の36本目で扱っている。
参考文献
- Dequin PF, Torres A, Bassetti M, et al. Severe community-acquired pneumonia: current concepts and controversies. Intensive Care Med. 2026;52(1):118-130. DOI: 10.1007/s00134-025-08252-x.
- Reyes LF, Conway Morris A, Serrano-Mayorga C, et al. Community-acquired pneumonia. Lancet. 2025;406(10516):2371-2388.(姉妹記事の一次資料)
- Martin-Loeches I, Torres A, Nagavci B, et al. ERS/ESICM/ESCMID/ALAT guidelines for the management of severe community-acquired pneumonia. Intensive Care Med. 2023;49(6):615-632.
- Dequin PF, Meziani F, Quenot JP, et al. Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia(CAPE COD試験). N Engl J Med. 2023;388(21):1931-1941.
- Giamarellos-Bourboulis EJ, et al. Clarithromycin for early anti-inflammatory responses in community-acquired pneumonia(ACCESS試験).
- 日本呼吸器学会. 成人肺炎診療ガイドライン2024.
- ソル・コーテフ静注用 電子添文/クラリス錠200 電子添文/ジスロマック点滴静注用500mg 電子添文/メロペン点滴用 電子添文ほか(2026年8月時点).
市中肺炎シリーズ
- 市中肺炎update①総論
- 市中肺炎update②ー重症例(sCAP)(この記事)
