夜間当直、心肺停止で搬送された患者に全力で蘇生を行うも、死亡確認。ご家族に「なぜ亡くなったのか」を説明しようとして、言葉に詰まった経験はないだろうか。日本では死因究明のための解剖率がわずか2.7%しかない。裏を返せば、97%以上の死亡例で、我々ER医は解剖なしに死亡診断書・死体検案書を書いていることになる。
この「解剖なき死因究明」というギャップを埋める手段として、すでに全国の3割超の医療機関で実施されているのがAi(Autopsy Imaging、死亡時画像診断)である。全身CTを1回撮るだけで、外因死のスクリーニング、医療事故の可能性の評価、遺族への説明材料の確保ができる——にもかかわらず、体系的に教わる機会は少ない。
本シリーズは全5回で、Aiの総論から実践的な読影ポイント、法医学的な視点、そして限界まで、ER医が明日から使える形で整理する。第1回は「Aiとは何か」「なぜ必要なのか」という総論と、Aiを支える法制度・実施体制を扱う。
この記事でわかること
- Aiとは何か、なぜ日本の死因究明にAiが必要とされてきたか
- 解剖とAiの違い(同意取得、時間、費用、証拠能力)と、解剖6種類の使い分け
- Aiを支える法制度(死因・身元調査法、死因究明等推進基本法、医療事故調査制度)と異状死の判断
- どういう事例でAiを撮るべきか、時系列のどこで撮ると意味があるか
- 自施設でAiを始める・運用するために知っておくべき実務(体制、費用、Ai情報センターの活用)
1Aiとは何か
Ai(Autopsy Imaging、オートプシー・イメージング)=死亡時画像診断とは、死亡した患者・遺体に対してCT(主に)やMRIなどの画像検査を行い、死因や死因の種類、損傷の有無を評価する検査を指す。日本では「死亡時医学検索」=解剖+画像診断、として発展することが期待されてきた概念である。
なぜAiを行うのか。主な理由は3つある。
- 非破壊検査である遺体を傷つけない
- 客観的な証拠保全が可能後で誰でも見返せる。解剖は執刀者しか分からず、開けた部位しか分からない
- 遺族の納得が得られやすい「死因を知りたい」というニーズに、解剖より低いハードルで応えられる
Aiで分かることの例として、頭部の挫滅、心臓破裂、頸椎骨折といった外傷性変化は解剖所見との一致率が約86%と報告されている(Scholing M, et al. Eur Radiol. 2009)。内因死においても、くも膜下出血、脳出血、大動脈解離、大動脈瘤破裂といった出血性病態は死因として検出可能である。
図1:死後CTで診断可能な致死的病変の例(左:左頭頂葉の脳出血と大脳鎌下ヘルニア/中:ステントグラフト後の胸部大動脈瘤破裂による右血胸/右:腹部大動脈瘤破裂と広範な後腹膜出血)
出典:Ishida M, et al. Jpn J Radiol. 2023;41:1039-1050(CC BY 4.0)Fig.4を転載
図2:「体表検査+解剖」という従来の死亡時医学検索に、Aiという新しい柱が加わる関係
2なぜAiなのか — 日本の死因究明の現状
Aiが必要とされてきた最大の背景は、日本の解剖率の低さである。2009年の人口動態統計では、総死亡数1,141,865体のうち解剖ありは30,939体、解剖率はわずか2.7%にとどまる。警察が取り扱った遺体(交通事故除く)約17万体に限っても、解剖率は約11%である。
| 国 | 解剖率 |
|---|---|
| 日本 | 2.7% |
| 英国 | 45.8% |
| フィンランド | 72.8% |
| スウェーデン | 89.1% |
| アメリカ合衆国 | 12.5% |
出典:警察庁「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方について」研究会資料
日本の年間死者を100人とすると、病院死亡が85人、警察が扱う死亡(いわゆる異状死)が15人、そのうち解剖されるのはわずか3人という試算もある(Ai情報センター資料より)。つまり、ER医が日々経験する「死因がはっきりしないまま看取る」「予期せぬ急変で亡くなる」という状況の大部分は、解剖なしに医学的な説明を求められるのが日本の現実である。この構造的なギャップを埋める現実的な選択肢としてAiが位置づけられてきた。
表1:解剖とAiの比較(Ai情報センター資料を改変)
| 項目 | 解剖 | Ai |
|---|---|---|
| 遺族の承諾 | 遺体損壊のため得にくい | ほぼ100%得られる |
| 情報提供までの時間 | 数か月を要する | 数時間後に提供可能 |
| 第三者による評価 | 追試不可 | 客観的評価が可能 |
| 検査費用 | 高価 | 廉価 |
| 検査時間 | 半日以上 | CT30分、MRI60分 |
| 遺体状態の保存 | 破壊検査のため不可 | そのまま保存可能 |
| 市民への情報提供 | 刺激が強く困難 | 提供可能 |
3Aiの歴史 — どのように広がってきたか
- 1985年筑波メディカルセンター病院で救急死亡例の全例CT撮影を開始(PMCTの先駆け)
- 1989年死後CTについて日本救急医学会で学会発表
- 1995年慈恵医大法医学教室・高津教授による3DCTの実施
- 2000年重粒子医科学センター・江澤氏による「Ai」の概念提唱
- 2003年Ai学会設立
- 2008年千葉大学医学部附属病院にAiセンター創設
- 2009年(財)Ai情報センター創設
- 2010年厚生労働省「死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会」開催
- 2012年6月15日死因究明二法(死因・身元調査法など)成立
- 2014年6月18日医療法改正
- 2015年10月1日医療事故調査制度開始
- 2020年4月1日死因究明等推進基本法 施行
レントゲンによる死後画像検査自体は古くから行われてきたが(1898年に死体に対する画像検査を実施した記録が残る)、体内の情報をより詳細に、かつ短時間で得られるCTが普及した2000年以降にAiは急速に広がったとされる(Ai情報センター・山本正二先生の講演より)。
千葉大学医学部附属病院のAiセンター創設年については、同じ研修会資料内でも2006年とする記載と2008年とする記載があり、本稿では2008年を採用した。
4死因究明を支える法制度
ER医が押さえておくべき法制度は主に3つある。
4-1. 死因・身元調査法(2012年成立)
犯罪死の見逃し(平成19年の時津風部屋事件が契機)を防ぐために、死因究明二法の一つとして成立。第5条で、警察署長が死因を明らかにするために必要と認めるときに実施できる検査として「死亡時画像診断(磁気共鳴画像診断装置その他の画像による診断を行うための装置を用いて、死体の内部を撮影して死亡の原因を診断すること)」が明記された。
4-2. 死因究明等推進基本法(2020年4月施行)
死因究明及び身元確認の推進を、生命の尊重・個人の尊厳の保持、紛争の未然防止、公共の秩序維持に資するものと位置づける理念法。死体の科学調査(病理学的検査、薬毒物検査、死亡時画像診断=Aiなど)の活用を進める連携協力体制の構築を求めている。厚生労働省に死因究明等推進本部の設置も明記された。
4-3. 医療法改正と医療事故調査制度(2015年10月施行)
2014年6月18日の医療法改正により、2015年10月1日から医療事故調査制度が始まった。ここでいう医療事故とは、「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかったもの」を指す(医療法第6条の10)。条文の役割分担は以下の通り。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第6条の10 | 医療事故が発生した場合、管理者は医療事故調査・支援センターへ報告しなければならない |
| 第6条の11 | 管理者は速やかに原因を明らかにするための院内調査(医療事故調査)を行わなければならない |
| 第6条の15第1項 | 医療事故調査・支援センターの指定に関する規定 |
| 第6条の17 | 管理者または遺族からの依頼があったとき、センターが調査を行うことができる |
この院内調査においてAiの活用が期待されている点は、ER医にとって最も実務的に重要なポイントである。
4-4. 異状死と警察への届出
Aiを語る前提として、「異状死」の判断はER医が日常的に迫られる実務である。ここで押さえておきたいのは、異状死の判断は体表の所見だけで決まるものではないという点である。亀田総合病院・伊藤憲佐先生は、異状死の判断にあたり考慮すべき要素として次を挙げている。
- 死体外表面の異常所見の有無
- 死体が発見されるに至ったいきさつ
- 死体発見場所、状況等の諸般の事情
つまり、外表に異常がなくても、発見の経緯や状況によっては異状死と判断すべき場合がある。異状死と判断した場合には警察への届出が必要となる。Ai-CTは外因死の約90%を検出できるとされ、この「異状死かどうか」の判断材料としても機能する。
なお2021年1月6日付の通知(令和2年厚生労働省令第208号関連)により、死亡診断書・死体検案書の押印は廃止され、直筆の署名(電子署名を含む)が重視される取扱いとなった。
また、解剖には複数の種類があり、根拠法・目的・遺族同意の要否がそれぞれ異なる(鳥取大学法医学・飯野守男先生の講演より整理)。
表2:解剖の種類
| 種類 | 根拠法 | 対象 | 執刀者 | 目的 | 遺族同意 |
|---|---|---|---|---|---|
| 系統解剖 | 死体解剖保存法 | 献体 | 医学生・解剖学者 | 医学教育 | 必要 |
| 病理解剖 | 同 | 診療中・診療後の患者遺体 | 病理医(臨床医立会い) | 臨床診断の確認・治療効果判定 | 必要 |
| 承諾解剖 | 同 | 異状死体(非犯罪死体、監察医制度地域以外) | 法医 | 死因究明 | 必要 |
| 行政解剖 | 同 | 特定地域の異状死体(非犯罪死体) | 法医(監察医) | 死因究明(監察医制度地域内) | 不要 |
| 調査法解剖 | 死因・身元調査法 | 異状死体(犯罪性不明) | 法医 | 死因究明・犯罪死見逃し防止 | 不要 |
| 司法解剖 | 刑事訴訟法 | 犯罪死体 | 法医(鑑定人) | 鑑定(死因・成傷器・死後経過時間・個人識別等) | 不要 |
監察医制度がある地域は、東京・大阪・(名古屋)・神戸に限られ、その人口の合計は総人口の約13%(名古屋を除くと約11%)に過ぎない。裏を返せば、日本の人口の9割近くが住む地域では、異状死体であっても遺族の承諾なしに解剖されることは原則ない(調査法解剖・司法解剖を除く)。この「解剖に届かない大多数の死」を画像でカバーするのがAiの実務的な役割である。
5Aiの実施体制と費用の現状
5-1. どのくらいの施設で行われているか
2009年の日本医師会Ai検討委員会アンケートでは、患者死亡時・死亡後、または警察からの依頼で何らかの画像撮影を行ったことのある医療機関は876施設(35.8%)。2011年の日本病院会調査では、不慮の死亡例に対するAi実施率は48.8%、実施病院の37.7%では病院側が費用を全額負担していたと報告されている。
5-2. 費用は誰が負担しているか
Aiの実態把握アンケート(2次中間報告)によれば、有効回答855施設のうち半数を超える445施設が「自施設の負担」、次いで「遺族等の負担」。警察からの依頼による実施の場合は、警察46.3%、遺族38.2%、実施施設14.7%という負担割合が報告されている。日本医師会は2010年の答申で、Ai実施費用を52,500円と試算した上で、国費による負担を提言している。
5-3. Ai情報センターという選択肢
自施設に読影医がいない場合、(財)Ai情報センター(2009年創設、2010年4月に活動開始)に読影を依頼できる。CTなどの撮影装置は持たず、読影専門の第三者評価機関として、複数の読影医が独立して読影した結果を統合し、一つの鑑定書を作成する体制をとっている。年間の鑑定件数は2010年の3件から2010年代を通じて増加し、2018年の273件をピークに、近年は年間200件前後で推移している(2022年228件)。医療事故案件は13万円+税、1〜2週間で報告書が作成される。
依頼にあたっては、次の情報提供が求められる。死後変化の評価に死亡日時が不可欠である点は、依頼側が見落としやすいので注意したい。
| 項目 | 備考 |
|---|---|
| 死亡日時 | Aiまでの時間=死後変化の評価に必要 |
| 現病歴 | |
| 救急蘇生措置の内容 | |
| 処方 | |
| 生前画像 | |
| 採血結果 |
5-4. Ai認定施設という枠組み
Ai学会はAi撮影参加施設の登録制度を設けている。基準となる2つの撮影対象は、①自施設内で死亡が確認(心肺停止の救急事案を含む)された遺体、②自施設外で死亡が確認された遺体(他の医療機関、警察等からの依頼)である。
| 区分 | 撮影対象 | 施設数(2022年9月時点) |
|---|---|---|
| 施設A | ①②の両方が施行可能 | 80施設 |
| 施設B | ①のみ施行可能 | 34施設 |
| 施設C | ②のみ施行可能 | 4施設 |
参加要件は、Ai学会主催のAi研修会を受講した医師・歯科医師が在籍すること、あるいはAi認定診療放射線技師が在籍し医師・歯科医師の下で撮影が可能な施設であること。
6ERで実際どう動くか
亀田総合病院・伊藤憲佐先生(Ai学会理事長)の講演をもとに、ER医の視点から整理する。
日本の年間死亡数は約157万人。突然死は外因死を含め全死亡の約10%、救急搬送される心肺機能停止傷病者は年間約14.2万人で、約1か月後生存率は約10.3%にとどまる(総務省消防庁 令和5年統計)。つまりERで心肺停止のまま亡くなる患者は年間十数万人規模であり、これらの症例は病歴・既往歴の情報が乏しいまま死亡診断を迫られることが多い。
Ai-CTは外因死の90%を検出できるとされる(ガス中毒、液性薬剤、異常環境などは検出できない)。ERでのAiの役割は大きく3つに整理できる。
- 病態の評価・診断異状死かどうかの判断材料になる
- 治療方針・治療手技の評価気管挿管などのチューブ類は抜去せず、留置したまま撮影する(体液漏出のリスクがある場合は鉗子で閉塞)。誤挿入の有無や治療効果の判定に使え、次の患者の診療にも還元できる
- 遺族・警察・医療スタッフの橋渡し死因説明、異状死判断、医療事故調査の資料として機能する
撮影の実務ポイントとして、頸部の撮影を忘れないことが繰り返し強調されている(絞殺、窒息、頸椎損傷など死因になりやすい部位であり、矢状断再構成画像を作成しておくと良い)。また、Aiと通常の生体CTは撮影の考え方が異なる点にも注意したい。生前は被ばく低減・部位を絞った撮影が原則だが、死後は被ばくを考慮する必要がなく、全身を撮像して客観的データを残すことが証拠保全の観点から重要になる。
6-1. 「Aiを撮るべき事例」をどう線引きするか
三重大学医学部附属病院・兼児敏浩先生は、医療安全管理部の立場から、規模を問わずすべての医療機関でAiが施行できる体制の整備を求めた上で、Aiが必須となる事例を次の3つに整理している。
- 医療事故調査制度の対象となる可能性がある事例
- 院内の事故による死亡事例自殺、転倒・転落死
- 小児の外来死亡確認事例
3番目はER医が直接向き合う領域である。小児死亡例には虐待が背景にある症例が一定数含まれ、体表所見だけでは判断できない(この点は第4回で詳述する)。
6-2. 医療事故調査制度下でのAiの実態
一方で、制度の運用実態は理想には届いていない。医療事故調査制度が2015年10月に始まって以降の報告件数は平均で月30件程度にとどまり、兼児先生は「3つの想定外」を指摘している。
- 報告件数が少ない
- Aiや解剖が実施された事例が少ない
- 医療事故として届けるかの判断材料にとどまりがちAiや解剖の所見を事故調査そのものに活用するよりも、その傾向が強い
実際、報告事例におけるAi実施率は約30〜38%、解剖実施率は約28〜38%で、両者とも未実施の事例が40〜47%を占める(医療安全調査機構の公表資料より)。死因究明の手段を持たないまま院内調査を行っている事例が、なお相当数あるということである。
6-3. Aiは「時系列のどこで効くか」で意味が変わる
兼児先生は、医療事故調査制度におけるAiの位置づけを、イベント発生から死亡までの時間経過に応じて3つに整理している。ER医が撮影を判断する際の思考の枠組みとして有用である。
- 死亡時点で報告の要否が既に決まっている場合報告すると決めた事例ではAiは院内事故調査の有力な資料になり、報告不要と判断した事例ではその判断が誤っていないことの確認ツールになる
- 死亡時点で報告の要否が未定の場合イベントから死亡までに余裕がない場合、Aiは報告するか否かを決定するための有力な資料になる
- Aiによって初めて不自然な経過と認識した場合自然な経過での死亡と思われていた事例が、Aiによって初めて医療事故の可能性が判明することがある
つまり、判断がついていない段階こそAiを撮る価値がある。「事故かどうか分からないから撮らない」ではなく、「分からないから撮る」が正しい順序になる。
7やりがちな失敗
医療事故の可能性がある場合にAiを後回しにする:改正医療法下では、Aiは院内事故調査の有力な資料になる。判断に迷う段階でも「報告するか否かを決めるための材料」として先に撮影しておく価値がある
異状死の判断を体表所見だけで済ませる:発見の経緯・場所・状況といった「諸般の事情」を含めて判断する必要がある
熱心な医師と協力的な技師の”個人プレー”でAiを回す:兼児先生は「Aiは組織全体のシステムの一環として実施すべきもの」と明確に述べている。属人的な運用は、結果の説明責任を果たせる体制にならない
カテーテル・チューブ類を抜いてから撮影する:治療手技の評価ができなくなる。留置したまま撮影するのが原則
頸部を撮り忘れる:絞殺・窒息・頸椎損傷など死因に直結する部位を評価できなくなる
費用の出所を曖昧にしたまま運用を始める:自施設負担か遺族負担か、事前に院内でルールを決めておかないと現場が混乱する
「Aiで異常なし=医療ミスなし」と短絡的に判断する:これは第5回で扱うAiの限界の話であり、非致死的所見の見落としや死因不明のケースも多いことを踏まえておく必要がある
8Take home
Aiとは、死亡した患者に対するCT等の画像検査であり、日本の低い解剖率(2.7%)を補う死因究明の柱として位置づけられてきた。
監察医制度がある地域は総人口の約13%にとどまり、大多数の地域では異状死体でも遺族の承諾なしに解剖されることは原則ない。
解剖に比べ、同意取得・時間・費用の面でハードルが低く、客観的な証拠として第三者が後から検証できる利点がある。
死因・身元調査法、死因究明等推進基本法、医療事故調査制度という3つの法制度がAiの実施を後押ししている。異状死の判断は体表所見だけでなく、発見の経緯・場所・状況等の諸般の事情を考慮して行う。
Aiが必須な事例は「①医療事故調査制度の対象となりうる事例 ②院内の事故による死亡 ③小児の外来死亡確認事例」。もっとも、医療事故調査制度の報告事例でもAi実施率は約30〜38%にとどまり、Ai・解剖とも未実施が40〜47%を占めるのが実態である。判断がついていない段階こそAiを撮る価値がある(「分からないから撮らない」ではなく「分からないから撮る」)。
自施設に読影医がいなくても、Ai情報センターなど外部の第三者評価機関を利用できる。ERでの実務ポイントは「全身撮影」「頸部を忘れない」「チューブ類は留置したまま」の3点である。
次回(第2回)は、死後CTに特有の「死後変化」「蘇生術後変化」の読影と、基本的な読影プロトコルを扱う。
参考文献
- Scholing M, et al. The value of postmortem computed tomography as an alternative for autopsy in trauma victims: a systematic review. Eur Radiol. 2009;19(10):2333-41.
- Kaneko T, et al. Postmortem computed tomography is an informative approach for prevention of sudden unexpected natural death in the elderly. Risk Manag Healthc Policy. 2010;3:13-20.
- 警察庁「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方について」(犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会)
- 死因究明に資する死亡時画像診断の活用に関する検討会報告書(2011年7月)
- 平成21年人口動態統計
- 死因究明等推進基本法(令和2年4月1日施行)
- 死因・身元調査法(警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律)
- 改正医療法(平成26年6月18日成立、平成27年10月1日施行)第6条の10、第6条の11、第6条の15、第6条の17
- 日本医師会「医療・医学における死亡時画像診断活用に関する検討委員会報告書」(平成22年3月)
- 厚生労働省「令和6年度版 死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」
- 一般社団法人日本医療安全調査機構「医療事故調査制度 現況報告」
- 厚生労働省 令和5年(2023年)人口動態統計の年間推移
- 総務省消防庁 令和5年版(2023年)救急救助の現況
