転んで手をついた患者の手関節が腫れて変形していれば、X線で橈骨遠位端骨折と診断するところまでは迷わない。迷うのはその先の、整復するのかどうか、どの固定具を何週続けるのか、いつ整形外科に送るのかという判断である。
この記事は橈骨遠位端骨折の初療を、整復の要否を検証したRCT、手術と保存を比べたメタ解析、固定期間を比較した試験群から読む。
この10年で動いたのは、整復の目標そのものである。X線をきれいに戻すことと患者の機能が戻ることは、少なくとも高齢者では別物だとわかってきた。
この記事の芯
高齢者では、X線上の整復精度と12カ月後の機能に相関がない。WRISTの副次解析では84個の相関のうち有意だったのは2個だけで、その2個もMHQ総合スコアとは関連しなかった。24カ月でも、掌側ロッキングプレート・創外固定・経皮ピンニング・ギプスの4群に臨床的な差はない。ギプス群は59.1%が変形癒合するが、それが成績の差になっていない。
一方で若年者では手術に上乗せがある。手術と保存を比べたメタ解析で中期DASHが5.22点良好だが、60歳以上に限ると差が消える。年齢で答えが変わる領域である。
この記事でわかること
- AO/OTA 2018分類の観察者間一致は59.2%。初療の記録は細分類ではなく粗い軸で書く
- 手術と保存の中期DASH差は5.22点だが、60歳以上に限ると消える(−0.98、信頼区間が0をまたぐ)
- 60歳以上の不安定型は、掌側プレートでもギプスでも24カ月のMHQに差がない
- 高齢者ではX線上の整復精度と12カ月の機能に相関がない。84相関中2個のみ有意
- 整復して保存で管理すると13%が6週以内に整復位を失って手術になる
- 血腫内ブロックは整復中の疼痛で処置時鎮静に劣らない
- 転位がなければ固定は3週以下でよい。整復した骨折は4週を切れない
- 小児のtorus骨折は軟性包帯と即日帰宅で硬性固定と同等(965児)
1分類は細かく書かない ― AO/OTAは初療医どうしで一致しない
分類の役目は治療方針を決めることだが、初療では伝わるかどうかが先に来る。
| 分類 | 観察者間一致(観察者内一致) |
|---|---|
| Fernandez | 76.4%(77.3%) |
| AO/OTA 2018 | 59.2%(56.6%) |
表1:AO/OTA 2018版とFernandez分類の再現性(Rev Bras Ortop 2022)
AO/OTAの細分類は初療医どうしで一致しない。同じX線を見ても、6割しか同じ型にならない道具で申し送っても、相手の頭に同じ像は結ばれない。
図1:初療の記録はこの2軸で足りる
記録と申し送りは「関節外か関節内か」と「背側転位か掌側転位か」で書くほうが伝わる。この2軸だけでも紹介の緊急度が変わる。掌側転位は保存治療が破綻しやすく、関節内骨折は関節面の段差を測る必要がある。
2整復は何のためにするのか
整復の目的は3つある。疼痛を減らすこと、神経圧迫を解くこと、最終的な変形を減らすこと。このうち3つ目が揺らいでいる。
整復しない群を直接比べたRCTがある。背側転位した不安定型47例を、整復あり22例と整復なし25例に割り付けたところ、翌日の疼痛で整復しない群が非劣性だった。4〜6週後の感覚障害の頻度も同等(整復あり9.5%、なし9.1%)、12カ月のKrimmerスコアとDASHも劣らなかった。
この試験を一般化しない
対象は全例が手術予定例である。保存療法で完結させる症例には外挿できない。例数も47例にとどまる。整復をやめる根拠ではなく、整復の3つの目的のうち疼痛と神経の2つは、思ったほど整復に依存しないという読み方をする。
| 目的 | いまの根拠 | 判定 |
|---|---|---|
| 疼痛を減らす | 手術予定例では整復しなくても翌日の疼痛が非劣性(47例) | 根拠は弱い |
| 神経圧迫を解く | 同試験で感覚障害の頻度は同等。正中神経症状が出ている例は別枠 | 症状があれば別 |
| 最終変形を減らす | 高齢者ではX線精度と機能が相関しない。若年者では未確認 | 高齢者では薄い |
表2:整復の3つの目的と、それぞれを支える根拠の状態
小児は事情が違う。整復後の再転位の危険因子を調べたメタ解析(12研究・1,256例)では、初診時の完全転位(オッズ比4.69)と両骨骨折(オッズ比1.95)が独立した危険因子で、解剖学的整復が得られれば再転位は減った(オッズ比0.14)。術者の経験年数は再転位に影響しなかった。小児では整復の質が予後に効く。
3整復時の鎮痛 ― 血腫内ブロックで足りる
血腫内ブロックと処置時鎮静を比べたメタ解析(5研究、成人3・小児2)では、整復中の疼痛に差がなかった。整復後の疼痛は成人で血腫内ブロックのほうが良好だった。
処置時鎮静は人手と監視を要する。血腫内ブロックで足りるなら、夜間の救急外来の回し方が変わる。報告された有害事象は悪心や嘔吐が中心だった。
4手術か保存か ― 答えは年齢で変わる
| 集団 | 中期DASHの差(手術−保存) | 読み |
|---|---|---|
| 全体(23研究・2,254例) | −5.22(95%信頼区間 −8.87〜−1.57) | 手術が良好 |
| 60歳以上に限った研究のみ | −0.98(95%信頼区間 −3.52〜1.57) | 差がない |
| 60歳以上限定でない研究 | −7.50(95%信頼区間 −12.40〜−2.60) | 手術が良好 |
| 合併症率 | リスク比1.03(0.69〜1.55) | 差がない |
表3:手術と保存のメタ解析(JAMA Netw Open 2020)。サブグループ差はP=.02。異質性は大きく(I2=84%)、観察研究が15件含まれる
全体で見えている手術の上乗せは、60歳未満を含む研究が引き上げたものである。60歳以上だけを見ると差は消え、信頼区間は0をまたぐ。
整復後の管理についてはDRAFFT2がある。36施設・500例を、徒手整復のあと保存255例とK鋼線固定245例に割り付けた試験で、12カ月のPRWEに差はなかった(調整平均差−0.34、95%信頼区間 −4.33〜3.66)。それ以前の時点でも差はない。
整復して帰した13%が6週以内に手術になっている
保存群では33例(13%)が最初の6週で整復位を失い、手術が必要になった。K鋼線群の再手術は1例である(オッズ比0.02、95%信頼区間 0.001〜0.10)。整復してシーネで帰すなら、13%が破綻する前提で再診の間隔を決めてから帰す。
5高齢者ではX線をきれいにしても機能は変わらない
WRISTの副次解析は、60歳以上(平均70.9歳)でX線パラメータと12カ月のMHQの相関を84個計算した。有意だったのは2個だけで、しかもその2個もMHQ総合スコアおよび機能スコアとは関連しなかった。
著者らは、高齢者では手関節の正確な解剖学的再建が患者の成績に結びつかないと結論し、厳密な再整復より患者の希望と資源の効率的な使い方を優先してよいと述べている。
| 治療 | 24カ月のMHQ総合 | 変形癒合 |
|---|---|---|
| 掌側ロッキングプレート | 88(95%信頼区間 83〜92) | 4例(8.0%) |
| 創外固定 | 83(78〜88) | 8例(17.0%) |
| 経皮ピンニング | 85(79〜90) | 4例(9.8%) |
| ギプス | 85(79〜90) | 26例(59.1%) |
表4:WRIST 24カ月成績(JAMA Netw Open 2021、60歳以上182例)。群間差はP=.70、疼痛もP=.45で差がない。変形癒合の差はP<.001
変形癒合率59.1%を成績と混同しない
ギプス群の変形癒合率は59.1%で、他群の8.0〜17.0%より明らかに高い。それでも24カ月の成績差にはつながっていない。X線の見た目と患者の機能を同じものとして扱わない。
6何を当てて送るか ― シーネの選び方
整形外科につなぐまでの固定を表にする。範囲は骨指標で書く。ギプスは紹介先で巻かれるものなので、ここでは扱わない。
| シーネ | 主な適応 | どこからどこまで | 肢位 | 性質 |
|---|---|---|---|---|
| シュガートング | 橈骨遠位端骨折、尺骨遠位端骨折、手関節・肘関節の骨折 | 中手指節関節の近位背側から肘を回って遠位手掌線まで | 肘90°、前腕は回内も回外もさせない。手関節はわずかに背屈(10〜15°) | 浮腫を許容し回内外を制限 |
| リバースシュガートング | 同上。重なり部分が肘の保護になる | 肘から腕の両側を回って指先まで。母指と示指の間の水かきを通して包帯を巻く | 肘90°。余った材料を肘の下に折り込む | 浮腫を許容し回内外を制限 |
| サムスパイカ シュガートング |
第1中手骨基部骨折、舟状骨骨折疑い、母指尺側側副靱帯損傷 | 母指周囲を完全に覆う形に副子を当てる | 母指を把持できる位置 | 母指をほぼ完全に固定 |
| 尺側ガッター | 第4・第5中手骨骨折 | 前腕尺側から環指・小指を含めて当てる | 第4・第5中手指節関節を90°屈曲 | 副子内で整復できる |
表6:初療で当てるシーネ。範囲と肢位は標準的な装着手技による。リバースシュガートングは製造販売元による装着手技の動画による
シュガートングか、リバースか
どちらが優れているかを示した試験はない。両者を直接比較した研究は見当たらず、リバース型を扱った比較試験も比較相手は短上肢ギプスである。どちらで研修したかで手が覚えている型が違うだけなので、慣れているほうと、施設に置いてある材料で選べばよい。
いずれを当てても三角巾を併用する。帰宅前に弾性包帯を一度外して巻き直し、きつすぎないか確かめる。
初日に全周性の固定をしない
受傷直後は腫脹が進む。全周を囲む固定は初日には向かない。シーネで当てて弾性包帯で留め、挙上を指示して帰す。最終的な固定は紹介先が決める。
図2:固定をどう決めるか
固定をどれだけ続けるかは紹介先が決めるが、見通しを患者に伝えられると説明が楽になる。転位がなければ3週以下で足り、非整復の安定型なら1週で外せた試験もある。整復した骨折は合併症のリスクから4週を切れない。肘を含めるかについては、6つのRCTをまとめたメタ解析でDASHにもradial heightにも差がなく、肘を含めない固定で足りるとされている。
小児のtorus骨折は固定しなくてよい
FORCE試験は23施設・965児(4〜15歳)のtorus骨折を、軟性包帯と即日帰宅に割り付ける群と硬性固定の群に分けた。3日後の疼痛は3.21対3.14で、事前に定めた同等性マージン1.0に対し調整差−0.10(95%信頼区間 −0.37〜0.17)。6週の追跡中、疼痛も機能も差がなかった。
7手関節が痛いのに橈骨が折れていないとき
橈骨遠位端が折れていなければ帰してよい、とはならない。潜在性の舟状骨骨折が残る。
臨床所見の診断精度を調べた系統的レビューでは、解剖学的嗅ぎタバコ入れの圧痛がないことが潜在性舟状骨骨折の可能性を下げた(感度92.1%、特異度48.4%、陰性尤度比0.2)。逆に、回内位から回外位へ抵抗に抗して動かす検査は感度100%・特異度97.9%、陽性尤度比45.0(95%信頼区間 6.5〜312.5)と報告されている。
数値の扱い
原著の陰性尤度比0.2は、併記された信頼区間(0.4〜0.7)が点推定を含まず整合していない。方向性は確かだが、この数値を引くときに信頼区間まで持ち出さないほうがよい。
8やりがちな失敗
観察者間一致は59.2%。関節外か関節内か、背側転位か掌側転位かで書く
84個の相関のうち有意は2個。整復の精度は12カ月の機能と相関しない
血腫内ブロックで整復中の疼痛は同等。人手と監視のコストを見直す
13%が6週以内に整復位を失って手術になる。再診の間隔を決めてから帰す
965児のRCTで軟性包帯と即日帰宅が同等だった
Take home
- 記録は関節外か関節内か、背側か掌側かで書く。AO/OTAの細分類は一致しない
- 高齢者ではX線上の整復精度と機能が相関しない
- 手術の上乗せは若年者にはあるが、60歳以上では消える
- 整復後の保存は13%が6週以内に破綻する。フォローを決めてから帰す
- 転位がなければ3週以下。整復したら4週以上。肘を含めない固定で足りる
参考文献
- Carula GA, et al. Evaluation of Intra- and Interobserver Reproducibility of the New AO/OTA Classification for Distal Radius Fractures. Rev Bras Ortop. 2022;57(6):948-954. doi:10.1055/s-0041-1740471
- Löw S, et al. The Requirement for Closed Reduction of Dorsally Displaced Unstable Distal Radius Fractures. Dtsch Arztebl Int. 2020;117(46):783-789. doi:10.3238/arztebl.2020.0783
- Sengab A, et al. Risk factors for fracture redisplacement after reduction and cast immobilization of displaced distal radius fractures in children: a meta-analysis. Eur J Trauma Emerg Surg. 2020;46(4):789-800. doi:10.1007/s00068-019-01227-w
- Tseng PT, et al. Hematoma block or procedural sedation and analgesia, which is the most effective method of anesthesia in reduction of displaced distal radius fracture? J Orthop Surg Res. 2018;13(1):62. doi:10.1186/s13018-018-0772-7
- Ochen Y, et al. Operative vs Nonoperative Treatment of Distal Radius Fractures in Adults: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open. 2020;3(4):e203497. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.3497
- Costa ML, et al. Surgical fixation with K-wires versus casting in adults with fracture of distal radius: DRAFFT2 multicentre randomised clinical trial. BMJ. 2022;376:e068041. doi:10.1136/bmj-2021-068041
- Chung KC, et al. Comparison of 24-Month Outcomes After Treatment for Distal Radius Fracture: The WRIST Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2021;4(6):e2112710. doi:10.1001/jamanetworkopen.2021.12710
- Chung KC, et al. Assessment of Anatomic Restoration of Distal Radius Fractures Among Adults 60 Years or Older. JAMA Netw Open. 2020;3(1):e1919433. doi:10.1001/jamanetworkopen.2019.19433
- de Bruijn MAN, et al. Cast immobilization duration for distal radius fractures, a systematic review. Eur J Trauma Emerg Surg. 2024;50(4):1621-1636. doi:10.1007/s00068-024-02494-y
- Boersma EZ, et al. Cast-OFF Trial: One Versus 4 to 5 Weeks of Plaster Cast Immobilization for Nonreduced Distal Radius Fractures. Hand. 2022. doi:10.1177/15589447211044775
- Raj S, et al. Comparison of above elbow and below elbow immobilisation for conservative treatment of distal end radius fractures. Chin J Traumatol. 2023;26(3):164-170. doi:10.1016/j.cjtee.2022.12.005
- Perry DC, et al. Immobilisation of torus fractures of the wrist in children (FORCE): a randomised controlled equivalence trial in the UK. Lancet. 2022;400(10345):39-47. doi:10.1016/S0140-6736(22)01015-7
- Coventry L, et al. Which clinical features best predict occult scaphoid fractures? A systematic review of diagnostic test accuracy studies. Emerg Med J. 2023;40(8):576-582. doi:10.1136/emermed-2023-213119
