整形外科

足関節の骨折

足首をひねって腫れているが歩けはする患者を前にして、多くの人はとりあえずX線を撮る。この記事が扱うのはその先で、その1枚が本当に要るのかという判断と、骨折が見つかったあとに何を当てて、いつ誰に送るのかという選択である。

足関節骨折の初療を、Ottawa ankle rulesのメタ解析、固定法を比較した多施設RCT、安定型の固定期間を検証した非劣性試験の3系統から読む。整形外科に送る前に初療医が決められることは、思っているより多い。

この10年で変わったのは固定の考え方である。6週の固定という既定路線が、3週でも成績が変わらないという方向に複数のRCTで押し返されている。

この記事の芯

Ottawa ankle rulesは陰性なら撮らなくてよい水準の道具だが、感度100%の道具ではない。骨折の有病率15%なら陰性後確率は1.4%未満だが、近年のメタ解析では感度0.91という推定も出ている。撮らない言い訳には使えない。

骨折があっても、外果単独で距骨が動かなければ緊急の手術は要らない。初療でやることはシーネを当てて送ることに尽きる。ただし「安定型」の判定を非荷重X線1枚で済ませると、16%を取り違える。

この記事でわかること

  • Ottawa ankle rulesの陰性尤度比は0.08。有病率15%なら陰性後確率は1.4%未満。ただし感度は「ほぼ100%」から0.91まで推定に幅がある
  • 小児にはLow Risk Ankle Ruleがあり、実装で撮影が21.9%減る。感度100%だが信頼区間の下限は85.4%
  • エコーは感度0.96というメタ解析と、救急外来で感度80.0%という前向き研究がある。X線の代替ではなく補助
  • 内側の圧痛では三角靱帯損傷を当てられない。感度0.20〜0.90。gravity stress撮影かエコーを使う
  • 初診の非荷重X線で安定に見えたうちの16%が、荷重位X線で転位していた
  • 距骨転位が最小限の孤立性Weber Bは、手術しても機能が変わらず有害事象が2.3倍になる
  • 安定型Weber Bの固定は3週で6週に非劣性。患者への見通しの説明に使える

1分類は2つ ― Weberで記録し、Lauge-Hansenで機転を読む

足関節骨折の分類は2系統あり、初療では役割を分けて使う。

図1:Weber分類は腓骨骨折線とsyndesmosisの位置関係で決まる

CBAsyndesmosisより上 19%syndesmosisの高さ 42%syndesmosisより下 31%残り9%は圧迫骨折

図1:3,952例の内訳(Sci Rep 2020)。原文の記述に基づく著者作成の簡略図

Weber分類は腓骨骨折線とsyndesmosisの位置関係で3型に分ける。A型はsyndesmosisより下、B型はその高さ、C型はより上。3,952例ではB型42%、A型31%、C型19%、圧迫骨折9%だった。単純で再現性がよいが、syndesmosis損傷の範囲までは予測しない。

Lauge-Hansenは受傷機転の分類で、回外-内転(SA)、回外-外旋(SER)、回内-外旋(PER)、回内-外転(PA)の4型。前半の語が受傷時の足の肢位、後半が加わった力の方向を指す。救急外来の足関節骨折の40〜75%がSER型である。

Weber Lauge-Hansen 頻度 初療での意味
A(syndesmosisより下) SA 31% 多くが安定
B(syndesmosisの高さ) SER(一部PA) 42% 安定・不安定の見極めが要る(本記事の主対象)
C(syndesmosisより上) PER(一部PA) 19% syndesmosis損傷を伴い不安定なことが多い

表1:両分類の対応。Sci Rep 2020の記述による

記録はWeberで書く

観察者間の一致度はWeberのkappaが0.49で最も高く、AOが0.38、Lauge-Hansenが0.32で最も低い(Rev Bras Ortop 2018)。カルテと申し送りはWeberで書き、Lauge-Hansenは靱帯損傷の推定に使うのが現実的である。

2撮るか撮らないか ― Ottawaは「骨折なし」を保証しない

足関節外傷の全例にX線は要らない。ただし精度の推定には幅がある。

出典 対象 数値
BMJ 2003
27研究・15,581例
成人・小児 陰性尤度比0.08(足関節)/0.08(中足部)、小児0.07。有病率15%で陰性後確率<1.4%。不要な撮影が30〜40%減る
BMC Musculoskelet Disord 2022
15研究・成人8,560例
成人 感度0.91(95%CI 0.89〜0.92)、特異度0.25。異質性が大きい(感度I2=94.3%)
Eur J Gen Pract 2015
系統的レビュー
成人 感度92〜100%、特異度16〜51%。急性期のMRI・CTを支持する根拠は見つかっていない

表2:Ottawa ankle rulesの精度、3つの推定

感度の推定は「ほぼ100%」から0.91まで開いている。ここは丸めない。歩行可能で圧痛がなければ撮らないという判断には使えるが、陰性は骨折がないことを意味しない。

小児にはLow Risk Ankle Ruleがある。カナダ6施設・2,151児(3〜16歳)の実装研究では、導入により撮影が対照施設比で21.9%減り(95%CI −28.6〜−15.2)、患者・医師の満足度に差はなかった。実装中の感度は100%、特異度53.1%だった。

感度100%を独り歩きさせない

Low Risk Ankle Ruleの感度100%は、95%信頼区間の下限が85.4%である。対象となった骨折数が限られることの反映で、点推定だけを根拠に「絶対に見逃さない」とは扱わない。

3エコーはどこまで使えるか ― 代替ではなく補助

POCUSの感度は、研究を統合した値と実地に近い設定の値で大きく開く。

出典 デザイン 感度 特異度
Med Ultrason 2020
10研究・1,065例
メタ解析 0.96(0.90〜0.99) 0.94(0.88〜0.97)
CJEM 2016
成人足関節4研究
メタ解析 89.5%(77.0〜95.6) 94.2%(86.1〜97.7)
J Foot Ankle Res 2020
242例
前向き単施設 80.0%(63.0〜91.6) 90.3%(83.7〜94.9)

表3:足関節骨折に対するPOCUSの診断精度

統合すると0.96に届く感度が、救急外来の前向き単施設研究では80.0%まで落ち、熟練者に限っても82.8%にとどまった。この乖離は丸めない。メタ解析の側も、含まれた研究の多くに患者選択・参照基準・flow and timingの方法論的限界があると明記している。現時点の位置づけはX線の代替ではなく補助である。

4安定型か不安定型か ― 内側の圧痛は当てにならない

外果単独骨折の治療方針は、三角靱帯が保たれているかで決まる。

評価法 感度 特異度 判定
臨床所見(内側圧痛・腫脹・皮下出血) 0.20〜0.90 0.38〜0.97 単独では使えない
単純X線(mortise像) 0.33〜0.57 0.60〜0.94 不十分
MRI 0.57〜0.85 0.81〜1.00 急性期の優先度は低い
gravity stress撮影 0.71〜1.00 0.72〜0.88 推奨
エコー 1.00 0.89〜1.00 推奨

表4:SER型骨折における三角靱帯損傷の評価法(Injury 2022、12研究のメタ解析)

腫脹・皮下出血・内側圧痛・受傷時X線・Lauge-Hansen分類は、いずれも三角靱帯損傷の予測因子として不十分である(Arch Orthop Trauma Surg 2008、9研究・423例)。徒手ストレスより苦痛の少ないgravity external rotation stress撮影が基準になる。ただしこの領域は参照基準のコンセンサスがなく、研究間でカットオフも異なる。

非荷重X線1枚で「安定」と決めない

安定型Weber Bを対象にしたRCTの組み入れ過程で、初診の非荷重X線では安定に見えた患者の16%に、荷重位X線で関節の転位が判明し除外された(Eur J Orthop Surg Traumatol 2023)。保存療法を選ぶ前提が、この1枚で崩れる。

図2:安定型Weber Bと判断するまでの順番

外果単独骨折(Weber B)荷重位X線で距骨の転位をみる非荷重1枚では16%を取り違える転位なし = 安定型gravity stress撮影かエコーで裏づけ転位あり = 不安定型整形外科へシーネを当てて整形外科へ

5手術は要るか ― 安定型では機能が変わらず害が増える

距骨転位が最小限の孤立性Weber Bには、手術の上乗せがない。

CROSSBAT(BMJ Open 2017)は、18〜65歳の孤立性閉鎖性AO 44-B1骨折436例を、ランダム化コホート160例(手術80・保存80)と、ランダム化を辞退した観察コホート276例に分けて12カ月追跡した。

項目 手術 保存 差
機能スコア(FAOQ) 49.8 53.0 平均差3.2(95%CI 0.4〜5.9)。著者らは臨床的に意味のある差ではないとしている
SF-12 身体面(PCS) 53.7 53.2 平均差0.6(−2.9〜1.8)。差なし
有害事象あり 23例(32%) 10例(14%) リスク比2.3(95%CI 1.2〜5.4)

表5:CROSSBAT(BMJ Open 2017)ランダム化コホートの12カ月成績

著者らの結論は「短期において手術は保存に優越せず、有害事象を増やす」である。重大な有害事象に限れば有意差はなかった(リスク比2.0、95%CI 0.5〜7.8)。盲検化が不可能な設計であることと、主観的スコアのみで評価されていることが限界として挙げられている。

孤立性Weber Bの手術対保存を統合したメタ解析(J Orthop Surg Res 2024、6研究)も、OMAS・FAOQなど主要な機能スコアで有意差なし、合併症と再手術は保存側で少ない方向と報告している。ただし症例数の記載に内部矛盾があり、著者ら自身も既存研究のバイアスを理由に確定的な推奨を避けている。方向性がRCTと一致することの確認にとどめたい。

この結論は距骨転位が最小限の安定型に限る。不安定型には当てはめない。

6何を当てて送るか ― 三面固定のシーネ

整形外科につなぐまでの固定を表にする。範囲は「下腿の副子」では足りないので、骨指標で書く。

場面 当てるもの どこからどこまで 肢位 荷重
足関節骨折を疑う、あるいは診断した時点 三面固定のシーネ
(後方+内外側シュガートング)
後方は腓骨頭の3横指下から母趾2横指下まで。内外側のシュガートングは腓骨頭の3横指下から足底を回って反対側の同じ高さまで 足関節は良肢位 免荷
脱臼を整復したあと Robert Jones包帯とシーネ 同上 足関節90°。前方脱臼ならわずかに底屈位 全免荷
小児の低リスク骨折 Air-Stirrup型装具 下腿遠位から足部を内外側から挟む 中間位 可
不安定型 シーネで仮固定し、その日のうちに整形外科へ

表6:初療で当てるもの。範囲と肢位は標準的な装着手技による。小児の装具はCochrane 2016による

初日に全周性の固定をしない

受傷直後は腫脹が進む。全周を囲む固定は初日には向かない。三面固定のシーネなら腫脹があっても当てられる。軟部組織損傷が大きい患者や、挙上の指示に従えない患者ではなおさらである。踵、踝、脛骨粗面など骨の隆起にはクッション材を余分に入れる。

この先どれだけ固定が続くかは紹介先が決めるが、見通しを伝えられると患者の納得が違う。安定型Weber Bなら3週で6週に非劣性で、固定具もギプスと取り外し可能装具で16週・2年とも差がない。早期の荷重を許す試験もある。「数週間で外れる見込みです」と言える程度には根拠がある。

小児の低リスク骨折

腓骨遠位の非転位性Salter-Harris I型を中心とする「低リスク」骨折では、硬い固定より可動を許す装具が支持される。Cochraneレビュー(2016、3RCT・189児)では、装具群で4週時点の自己報告機能の回復が早い。代表的試験(104例)では機能スコア91.3%対85.3%、平均差6.00%(95%CI 1.38〜10.62%)で、この数値は原著ではなくレビュー経由である。ただし低質エビデンスで、別の系統的レビュー(Ann R Coll Surg Engl 2019、4試験・256児)は可動を許す装具で6〜7.5日早い機能回復を報告しつつ「明確な最良治療はない」と結論している。

その損傷は本当に骨折か

Cochraneレビューは、これらの試験で扱われた低リスク損傷の多くが、MRI研究では骨端線骨折ではなく捻挫や骨挫傷だった可能性を指摘している。過剰に固定しない方向の傍証になる。

7足関節脱臼 ― 先に神経血管、それから整復

足関節脱臼は多くの場合、複数の骨折を伴う。骨折のない純粋な脱臼は、距腿関節窩の靱帯結合が強固で機械的安定性が高いため強大な外力を要し、稀である。踝を覆う組織が薄いのでしばしば開放性になる。自動車の衝突やジャンプを伴うスポーツなど高エネルギー外傷で起こるため、足関節だけを診て他の損傷を見落とさないようにする。

型 受傷機転 見た目 合併骨折 整復の方向
後方
最多
底屈位で筋の抵抗が不十分なところへ突然の大きな外力。若年に多く、転落・交通事故・スポーツ 足関節は底屈し短縮している 内果・外果の片側か両側を合併することが多い 底屈させつつ牽引し、足部を前方へ引く
前方
最少
足関節を固定した状態で脛骨を後方へ転位させる外力。高所墜落で足をついた強制背屈でも 足関節は背屈し足の長さが増す 大抵は脛骨遠位端前縁の骨折がある わずかに背屈させて下方牽引し、足部を後方へ押し戻す
側方 回旋を伴う強制的な外がえし 外側へ大きく変形し、内側の皮膚が非常に緊満する 常に外果または両果骨折を伴う 底屈位で長軸牽引し、距骨を内側から押し込む

表8:足関節脱臼の3型。いずれも膝関節を屈曲させた状態で整復し、助手が脛骨遠位部にカウンター・トラクションをかける

距骨下脱臼と取り違えない

距骨下脱臼は足関節脱臼と似た見た目になるが、整復方法が異なる。X線で明確に鑑別できるので、脱臼が足関節のものかどうかを先に確定させる。

整復を急ぐかどうかは神経血管所見で決まる

足関節脱臼で最も重要なのは神経血管障害の認識である。神経血管障害の徴候があり、整形外科医の診察がすぐに受けられない状況なら、関節内局所麻酔と骨折血腫ブロック、あるいは静脈内投与による鎮静と鎮痛のもとで非観血的整復を試みる。神経血管障害がなければ、整復の前にX線を撮って骨折の有無を確かめる。

整復したあとにすること

足部と足関節の神経血管診察をもう一度行う。整復が成功しても神経血管障害が明らかなら緊急手術である。

Robert Jones包帯を当て、足関節を90°屈曲位に保持する。アキレス腱の短縮を防ぐ意味もある。前方脱臼ではわずかに底屈位で固定する。整復位を保ったまま整復後X線を撮り、整形外科の診察を受けるまでは常時副子を装着して全免荷とする。多くの患者は手術が必要になる。

8やりがちな失敗

1Ottawa陰性を「骨折なし」と言い換える

陰性尤度比0.08は強い否定だが、感度の推定には0.91という値もある。「今日のX線は不要」と「骨折はない」は違う。

2内側の圧痛がないから三角靱帯は大丈夫と判断する

臨床所見の感度は0.20〜0.90と幅が大きい。gravity stress撮影かエコーで確認する。

3初診の非荷重X線だけで「安定型」と決めて保存療法に入る

16%が荷重位X線で転位していた。荷重位を撮ってから方針を決める。

4安定型Weber Bだから大丈夫と全周性に固めて帰す

初日は腫脹が進む。三面固定のシーネで当てて挙上を指示し、整形外科に送る。

5小児の低リスク骨折を硬く固定する

装具のほうが4週時点の機能がよい。そもそも骨折でない例が相当数含まれる。

Take home

  1. Ottawa陰性は撮らない根拠になるが、骨折がないことは意味しない
  2. 内側の圧痛では三角靱帯損傷は当てられない。gravity stress撮影かエコーを使う
  3. 「安定型」は荷重位X線で確認してから言う。非荷重1枚では16%外す
  4. 距骨転位が最小限の孤立性Weber Bに手術の上乗せはなく、有害事象は2.3倍になる
  5. 初療で当てるのは三面固定のシーネ。全周性の固定は初日に向かない
参考文献
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