整形外科

鎖骨骨折ー整形外科初療シリーズ

転倒して肩をついた患者の鎖骨に段差を触れれば、前後像1枚で診断がつくところまでは迷わない。迷うのはその先で、三角巾とクラビクルバンドのどちらを当てるのか、短縮を測って手術の話をするのか、遠位部なら肩鎖関節脱臼と見分けられるのかという判断が、施設ごとにも医師ごとにもばらついている。

この記事は成人の鎖骨骨折と肩鎖関節脱臼の初療を扱う。読者は整形外科医ではないので、何を当てて、誰を、いつ送るかまでを書く。手術の術式は扱わない。

この記事の芯

転位した中央部骨折を保存で管理すると、12カ月で偽関節が14%、二次手術が13%に起きる。それでも機能は戻り、DASHは3カ月で16.1、12カ月で6.3まで下がる。初療で当てるのは三角巾で、紹介の緊急度を決めるのが仕事である。

手術と保存を比べたメタ解析は手術が優るとするが、DASHの平均差は1.72点で、原著自身が臨床的に意味のある最小差に届かないと書いている。差がはっきり出るのは骨癒合のほうで、骨関連合併症のリスク比は0.21である。

この記事でわかること

  • 鎖骨骨折の70〜80%は中央部。部位が決まれば固定と紹介の緊急度が決まる
  • 初期固定は三角巾でよい。8の字包帯と比べたRCT296例で最初の4週の疼痛とDASHは三角巾が良好、変形治癒は8の字で多かった
  • 単純X線での短縮の計測はCTより平均8.2 mm長く出る。18 mmという閾値をX線で判定しない
  • 転位型を保存で管理すると12カ月で偽関節14%、二次手術13%
  • 手術の上乗せはDASHで1.72点。原著が臨床的な最小差に届かないと述べている
  • 偽関節の危険因子は高齢、女性、喫煙、高エネルギー外傷、転位、短縮
  • 肩鎖関節脱臼のRockwood III型は、手術と保存で機能スコアに差がない。保存の22.3%が後で手術になる
  • 近位部骨折の後方転位は縦隔の血管と気道に接する。胸部CTを撮る

1部位が決まれば方針が決まる

鎖骨は3つに分けて読む。中央部、遠位部、近位部で、固定も紹介の緊急度も変わる。

図1:鎖骨の3区画

胸鎖関節肩鎖関節近位部まれ中央部70〜80%遠位部中央部に次ぐ転倒して肩をついたときに折れる。鎖骨骨折は成人の骨折の3〜4%を占める中央部以外の割合は、取得できた文献に記載がない

部位 見るところ 初期固定 紹介
中央部 皮膚のテンティング、軋轢音、骨折部の動き。前後像1枚で大抵は足りる 三角巾 完全転位、粉砕、同側の肩甲骨頚部骨折は数日以内
遠位部 肩鎖関節周囲の圧痛。肩鎖関節脱臼と見分けがつかないことがある 三角巾 烏口鎖骨靱帯が切れて近位骨片が上方に転位する型は数日以内
近位部 胸鎖関節の疼痛と腫脹。後方転位では胸腔内の損傷を疑う 三角巾 転位が大きいもの、胸鎖関節脱臼を伴うものは数日以内

表1:部位別の初療。部位の割合と固定は標準的な記載による

中央部が70〜80%を占める。鎖骨骨折そのものは成人の骨折の3〜4%にあたり、多くは肩をついて転倒したか、鎖骨に直接外力が加わったものである。

2初療で先に探すもの ― テンティングと後方転位

鎖骨骨折の大半は保存で治るので、初療の仕事は治すことではなく、保存で済まないものを拾うことになる。

図2:初療の流れ

鎖骨部の疼痛と変形皮膚のテンティング、開放骨折、神経血管障害、呼吸困難、近位部の後方転位のいずれかがあるかひとつでもあれば30〜60分以内に整形外科へいずれもなければ三角巾を当てて鎮痛する完全転位、粉砕、同側の肩甲骨頚部骨折数日以内に整形外科へ後方胸鎖関節脱臼は縦隔の血管と気道に接しているそれ以外は1〜2週で再診

皮膚のテンティングを見逃さない

骨片が皮膚を内側から押し上げてテントのように突き出していれば、放置すれば皮膚が破れて開放骨折になる。神経血管障害、開放骨折とあわせて、評価から30〜60分以内のコンサルトの対象である。

近位部骨折で鎖骨が後方へ転位している場合も同じ扱いになる。後方胸鎖関節脱臼は縦隔の血管と気道のすぐ前にあり、閉鎖整復ができなければ観血的な再建が必要になる。胸腔内損傷を疑うときは胸部CTとCT血管造影を撮る。

鎮痛については、救急外来で超音波ガイド下の神経ブロックを使った後ろ向き研究がある。介入群12例と背景を揃えた85例の通常治療を比べ、疼痛の軽減が有意に大きく(p<0.001)、意味のある疼痛軽減に到達するまでの時間が3.41倍速かった(ハザード比3.41、95%信頼区間 1.47〜7.90、p=0.004)。オピオイドの追加投与、救急外来の滞在時間、入院期間に差はない。介入群が12例の研究であり、選択肢のひとつという以上には読めない。

3何を当てて帰すか

保存治療の目的は骨折部の動きを抑えることで、肩の外転、前方屈曲、伸展をいずれも30°以下に制限したときに最も安定する。これを達成する手段が三角巾と8の字包帯の2つである。

部位・型 当てるもの どこをどう覆うか 期間 再診
中央部・非転位 三角巾 前腕を吊り、上腕を体側につける。肩の外転と屈曲を30°以下に抑える 4〜8週、または骨折部の圧痛が消えるまで 1〜2週、以後2〜3週おき
中央部・完全転位 三角巾。8の字包帯を併用してもよい 8の字包帯は両肩の後ろを8の字に回し、気を付けの姿勢を保たせる 4〜8週、または骨折部の圧痛が消えるまで 1〜2週、以後2〜3週おき
遠位部・転位なし 三角巾 中央部と同じ 3〜6週、または痛みが改善するまで 1〜2週、以後2〜3週おき
遠位部・近位骨片が上方転位 三角巾と包帯で上腕を体幹に巻き込む 8の字包帯は使わない。そのまま整形外科に送る 紹介先が決める 数日以内に整形外科
近位部 三角巾 中央部と同じ 3〜6週、または骨折部の圧痛が消えるまで 1〜2週、以後2〜3週おき
小児の中央部 三角巾 中央部と同じ 3〜6週 1〜2週

表2:初療で当てるもの。範囲と期間は標準的な手技による。最終的な固定と期間は紹介先が決める

どちらを当てるかを直接比べたランダム化比較試験がある。中央1/3骨折296例を8の字包帯152例と三角巾144例に割り付けたところ、最初の4週のVASとDASHが三角巾群で有意に良好で、以後は同等だった。2年時点のNottingham Clavicle Scoreも三角巾群が有意に良好で、変形治癒の頻度は8の字包帯群で有意に高かった。癒合までの時間や短縮といったX線上の指標に差はない。

小児でも同じ向きである。41例の後ろ向き比較では、全例が初回再診までに癒合し、1年後の筋力と可動域に差がなかった(いずれもp=1.00)。著者らは装着しやすさから三角巾を第一にしてよいとしている。

8の字包帯を選ぶ理由が残る場面

8の字包帯は肘と手が自由になるので日常生活は送りやすい。転位を抑える力があり、短縮がある完全転位では選ぶ理由になる。ただし適切な強さで巻き直す介助が要るので、独居の患者には向かない。

8の字包帯を当てるときは、良肢位を保ち、固定の緊張が緩まないように巻き直すところまで指導してから帰す。三角巾を併用すると支持は増す。

4短縮を単純X線で測らない

完全転位、粉砕、著明な短縮は紹介の理由になる。その短縮を単純X線で測ってよいかを調べた研究がある。

鎖骨の長さを単純X線とCTで測り比べたところ、単純X線はCTより平均8.2 mm長く見積もっていた(標準偏差10.2、p<0.001)。級内相関は単純X線でもCTでも0.96で、再現性そのものは高い。著者らは、短縮を手術の判断材料にするなら単純X線での計測は勧められないと述べている。

精度が高いことと正確であることは違う

同じ人が何度測ってもほぼ同じ値が出る(再現性が高い)が、その値はCTより一貫して長い(正確ではない)。18 mmや14 mmという閾値を、単純X線の実測で判定しない。紹介状には「短縮あり」と書き、数値で線を引くのは紹介先に任せる。

8の字包帯で保存治療した122例を追った研究では、受傷時の短縮と粉砕は骨癒合に影響しなかった。予測因子になったのは固定後に残った転位で、鎖骨幅の104%を超えると癒合しにくく、140%を超えると偽関節に傾いた。初診時の短縮そのものより、固定したあとどれだけ戻ったかを見る。

5手術か保存か ― 差はあるが小さい

転位型の中央部骨折を保存で管理したらどうなるかを、18件のRCT1,201例から統合した解析がある。

図3:保存治療のDASHの経過

16.13カ月9.96カ月6.312カ月DASH(0が最良、100が最悪)18件のRCT1,201例の統合値。3カ月でほぼ戻り、6カ月から先の変化は小さい

アウトカム 保存治療(18件のRCT、1,201例) 読み
DASH 3カ月 16.1(95%信頼区間 11.4〜20.7) 回復の途中
DASH 6カ月 9.9(5.8〜13.9) ほぼ戻る
DASH 12カ月 6.3(3.0〜9.5) ほぼ戻る
VAS 3カ月 4.4(0.0〜9.1) ばらつきが大きい
VAS 12カ月 2.6(0.0〜8.8) ばらつきが大きい
12カ月の偽関節 14% 説明して帰す
12カ月の二次手術 13% 説明して帰す

表3:転位型中央部骨折に対する保存治療の成績(BMC Musculoskelet Disord 2026、18件のRCT1,201例)

手術と保存を比べたメタ解析は、31研究3,094例(平均36.7歳)で手術が優るとする。DASHの平均差は−1.72(95%信頼区間 −2.93〜−0.51、p=0.005)、Constant-Murleyスコアの平均差は3.64(1.09〜6.19、p=0.005)、骨関連合併症(偽関節、変形治癒、インプラント破損)のリスク比は0.21(0.1〜0.42、p<0.001)だった。

DASHの1.72点を患者は感じ取れない

DASHで臨床的に意味のある最小差は10点前後とされる。このメタ解析が出した1.72点はそれにまったく届かない。原著自身が、臨床的に意味のある最小差には達していないと書いている。

差がはっきりするのは骨癒合のほうである。骨関連合併症のリスク比0.21は大きい。手術の話をするなら、機能の上乗せではなく偽関節を避けるという軸で説明する。

6偽関節を誰に警告しておくか

保存で帰す以上、どの患者が癒合しにくいかを知っておくと説明が変わる。2,766例を集めた系統的レビューが挙げた因子は次のとおりである。

偽関節と関連した因子 備考
高齢 定性的統合であり、プール推定値は出ていない
女性 同上
喫煙 環境因子として最も多くの研究で挙がった
高エネルギー外傷 転倒より交通事故
転位と短縮 固定後に残った転位のほうが予測力は高い
X線での仮骨の状態と骨折部の動き 再診時の所見
中央部(骨幹部)であること 近位部や遠位部より偽関節が多い

表4:鎖骨骨折の偽関節と関連した因子(Trauma Surg Acute Care Open 2023、10研究2,766例)。定性的な統合であり、オッズ比などの統合値は示されていない

6週時点で癒合を予測できるかを調べた研究もある。転位型中央部骨折112例のうち偽関節は16.7%(18/112)で、受傷6週のエコーで架橋仮骨が見えたのは62.5%(70/112)だった。見えれば98.6%(69/70)が癒合し、見えなければ40.5%(17/42)が偽関節になった。癒合を予測する感度は73.4%、特異度は94.4%である。

帰宅時に伝えること

痛みの許容範囲で上肢を動かしてよい。臨床的にもX線でも癒合が確認できてから1〜2カ月までは、コンタクトスポーツと転倒しうる活動を避ける。骨の変形が残る可能性があることは先に伝えておく。

喫煙者には、禁煙が癒合の条件として挙がっていることを伝える。再診は1〜2週、以後は2〜3週おきで、6週の時点で仮骨を確認する。

7遠位部骨折と肩鎖関節脱臼

鎖骨遠位部の骨折は変形を伴わないことが多く、肩鎖関節脱臼と見分けがつかない。どちらも肩鎖関節周囲に圧痛があり、上腕を胸側に内転させると痛みが増す。

遠位部骨折は3つに分かれる。最も多い型は支持靱帯が無傷で骨片の大きな転位がない。烏口鎖骨靱帯が切れる型では近位骨片が上方に転位し、偽関節と不安定性が残りやすいので整形外科に送る。肩鎖関節内の骨折は所見が軽く転位もないことが多いため、初診で見落とされる。

Rockwood 肩鎖靱帯 烏口鎖骨靱帯 鎖骨の転位 初療の扱い
I型 捻挫 無傷 なし 保存
II型 断裂 捻挫 肩鎖関節の開大と烏口鎖骨間の亜脱臼 保存
III型 断裂 断裂 肩鎖関節脱臼。烏口鎖骨間が健側より25〜100%広い 議論がある
IV型 断裂 断裂 鎖骨が水平方向に不安定で後方へ転位する 整形外科へ
V型 断裂 断裂 肩鎖関節脱臼。烏口鎖骨間が健側より100%超広い 整形外科へ
VI型 断裂 断裂 鎖骨が烏口突起より下方に転位する 整形外科へ

表5:肩鎖関節脱臼のRockwood分類(BMC Musculoskelet Disord 2017の表1による)。III型以降は三角筋と僧帽筋が鎖骨から剥がれる

画像については、垂直方向の不安定性を単純X線だけで判定する再現性は高い。一方で水平方向の不安定性はばらつきが大きく、重りをぶら下げた撮影を足す価値については結論が出ていない。まず前後像を撮り、後方転位を疑うなら軸位像かCTを足す。

III型は手術と保存で機能が変わらない

10研究397例を統合した解析では、Constantスコア(p=0.31)、DASH(p=0.52)、ASES(p=0.66)、SSV(p=0.21)のいずれにも差がなかった。差が出たのは肩鎖関節のスコアと関節間距離で、手術のほうが整復は良い。保存で始めた患者の22.3%が後に手術を受けている。保存群がスポーツに復帰するまでは平均7.7週だった。

18〜20年追跡したRCTでも、Constantスコアは手術83に対し保存85、UCLAは25に対し27で差がない。保存群のほうが鎖骨の突出と関節の開大は残る(8.3 mmに対し3.4 mm、p=0.004)。変形性関節症の所見は両群で同等だった。

変形性関節症を避けるために手術を選ぶ根拠は弱い。3,812例を集めた解析では関節症の頻度が7つの治療カテゴリで6.7〜29.3%に分布し、治療法によらず経過年数とともに増えた。受傷側と健側で関節症の頻度に差がない(p=0.120)。

中央部骨折に同側の肩鎖関節損傷が隠れることがある

肋骨骨折、血気胸、肩甲骨骨折、神経血管損傷を伴う例や、中央部骨折の転位の仕方が典型的でない例では、同側の肩鎖関節損傷を疑う。遠位骨片が浮いているため、ピアノキーサインは陰性に出て当てにならない。

後方へ転位する型は前後像で過小評価される。軸位像かCTを足す。

8やりがちな失敗

1皮膚のテンティングを「腫れている」で片づける

骨片が皮膚を押し上げていれば開放骨折になりうる。神経血管障害や開放骨折と同じく、30〜60分以内にコンサルトする

2単純X線で短縮を実測して手術の線引きをする

単純X線はCTより平均8.2 mm長く出る。紹介状には「短縮あり」と書き、数値での線引きは紹介先に任せる

3クラビクルバンドを巻いて、巻き直しの指導をせずに帰す

緊張が緩むと固定にならない。独居の患者では巻き直す介助が得られない。三角巾のほうが最初の4週の痛みもDASHも良好だった

4転位型を保存で帰すときに「そのうち治ります」とだけ言う

12カ月で偽関節が14%、二次手術が13%に起きる。喫煙者にはとくに、癒合しないことがあると伝えてから帰す

5鎖骨近位部の痛みで前後像だけ撮って帰す

後方転位は縦隔の血管と気道に接する。胸腔内損傷を疑うときは胸部CTとCT血管造影を撮る

Take home

  1. 初期固定は三角巾。8の字包帯は最初の4週の痛みで劣り、変形治癒が多かった
  2. 30〜60分以内に送るのはテンティング、開放骨折、神経血管障害、近位部の後方転位
  3. 単純X線で短縮を実測して手術の線引きをしない
  4. 転位型を保存で帰すなら、偽関節14%と二次手術13%を先に伝える
  5. 肩鎖関節脱臼のIII型は手術と保存で機能が変わらない。IV型以降は送る
参考文献
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