「循環が保たれている」とはどういう状態か、と研修医に聞くと、たいてい「収縮期血圧が90以上」と返ってくる。10点、といったところだと思う。確かに我々はそのあたりを目指して動くのだけれど、それは結果としてそこに落ち着くという話であって、定義ではない。
この記事の答えを先に書く。循環が保たれている=重要臓器が十分な好気代謝をするために必要な組織灌流が担保されていること。ここから2本の軸が出てくる。組織まで血液が届くための圧(perfusion)と、その血液に酸素が乗っているか(oxygen delivery)。どちらか一方が欠けた時点で、循環は保たれていない。
この記事はその2本の軸を生理学から組み立て直す。②の輸液反応性、③の輸液の中身は、すべてこの土台の上に乗る話になる。
この記事でわかること
- 灌流圧が「入口の圧 − 出口の圧」でしかないこと、そして半径の4乗が乱暴に効くこと
- 出口の圧が臓器ごとに違うこと。脳はICP、腹はIAP、心内膜下はLVEDP、右心系(右冠・右室・CPR)では右房圧
- 「脳血流は50〜150 mmHgでプラトー」が1959年の古典説で、現代の再解析ではその幅が5〜10 mmHg程度しかないこと
- MAP 65が初期目標であって最終目標ではないこと。慢性高血圧と高齢者で振れ幅があること
- DO₂が心拍出量とHbとSaO₂の3つの掛け算でしかなく、打てる手もその3つしかないこと
- DO₂ 1,000/VO₂ 250/O₂ER 25%という正常値と、critical DO₂の意味
- SvO₂は低値だけでなく高値も異常であること
- ScvO₂がSvO₂の代用にならないこと。ずれの向きが病態で反転すること
1灌流圧は「入口の圧 − 出口の圧」でしかない
血圧が保たれていれば、あとは血液が流れに乗って組織に届く。おおむねそうなのだが、そうならない場面がある。動静脈シャントがあれば、圧が十分でも組織はバイパスされる。
逆に言えば、血流に乗って運ばれるものは全部、圧と心拍出量に依存している。酸素も、抗菌薬も、血糖も、乳酸のクリアランスもそうである。だから低灌流の患者では、末梢で測った値が中枢の実態から乖離する。
最後の関門は毛細血管である。ここを越えるには「毛細血管の入口の圧 − 出口の圧」が要る。おおまかに言えば動脈圧 − 静脈圧で、これが灌流圧である。
図1:灌流圧の定義と、半径の4乗依存
半径の4乗は、直感よりずっと乱暴に効く
内腔が半分になれば流量は16分の1になる。実測でも20Gを18Gに替えると重力落下の流量はおよそ60から90〜105 mL/minへ上がる。r⁴が予測する3.7倍には届かないが、これはカテーテル長と乱流のためで、方向としては同じ話である。
ただし、この式が厳密に成り立つのは「定常流・層流・ニュートン流体・剛体の円管」の場合だけで、血液と血管はそのどれも満たしていない。数字を当てはめて計算するための式ではなく、「圧較差と内腔径がすべてを決める」という感覚を持つための式だと思っておくとよい。
我々が介入できるのは、このうち圧較差ΔPである。入口の圧を上げる。それが「収縮期血圧90」「平均血圧65」の正体で、毛細血管を越えるのに要る最低限の圧がそのあたりにある、という経験則にすぎない。
2臓器によって、引く圧が違う
一般化すると、臓器灌流圧は平均血圧(MAP)− 出口の圧となる。この「出口の圧」が、多くの場面では中心静脈圧(CVP)である。
ただし、脳や腹部のようにCVPから遠い臓器では、CVPよりもその臓器自身の内圧のほうが高くなることがある。そのときは乗り越えるのがしんどいほう、つまり高いほうが実際の出口の圧になる。臓器圧のほうが高ければ、灌流される圧はその分だけ低くなる。これが「臓器ごとに引く圧が違う」ということの中身である。
図2:臓器ごとに、引く圧が違う
脳:50〜150でプラトー、という話をどう扱うか
教科書に必ず出てくる「脳血流は平均血圧50〜150 mmHgの範囲で自動調節される」。出典はLassenの1959年の総説だが、これは近年かなり強く批判されている。
Lassenの曲線が示していたもの
- あの曲線は7つの研究・376人をプールしたもので、曲線上の各点は別々の被験者・別々の生理状態から来ている。つまり示しているのは個人の中での血圧と脳血流の関係ではなく、集団間の関連にすぎない
- プラトー上の一部の点は、脳血管の緊張を直接変える薬剤(hexamethonium やノルエピネフリン)で血圧を動かしたデータである
- Lassen自身が、曲線に合わせるために元データを約20%減じている
- 現代の再解析では、健常・非麻酔のヒトで脳血流が本当に一定な平均血圧の幅は5〜10 mmHg程度とされる。教科書の50〜150(幅100 mmHg)の、10分の1から20分の1である
だから「脳は何mmHgまでなら大丈夫」という固定閾値は、臨床的には成立しない。これは弱い結論ではなく、むしろ実務的に重要な結論だと思う。プラトーがあると思って安心する根拠は、もともと無いのである。
実務で使う数字はガイドラインから取る
| CPP目標 | 重症頭部外傷で60〜70 mmHg(Level IIB)。60と70のどちらが最小至適値かは不明で、患者の自動調節能の状態に依存しうる |
| ICP | 22 mmHg超で治療(Level IIB) |
| やらないこと | 輸液・昇圧薬でCPPを70 mmHg超に積極的に維持することは、ARDSのリスクがあるため避けてよい(Level III) |
| Seattle(SIBICC) | 最低CPP 60 mmHgを採用。上限目標は置いていない |
心:拡張期血圧から、左室の中の圧を引く
冠動脈は、拡張期に心筋の圧迫がゆるんだときに血液が流れる。だからここだけは平均血圧ではなく拡張期血圧に依存する。
引くのはCVPではなく左室拡張末期圧(LVEDP)である。左室の中から押し返してくる圧が、心内膜下にとっての「出口の圧」だからである。心不全でLVEDPが上がっている患者の心内膜下が虚血に弱いのは、これが理由になる。
ただし、右房圧を引くのが正しい場面もある
- 右冠動脈・右室:右室は壁内圧が低いので収縮期にも灌流される。後方圧は右室内圧・右房圧に近い
- 心停止/CPR:この領域の慣行は「大動脈拡張期圧 − 右房拡張期圧」で、CPP 15 mmHg以上がROSCの予測因子になる
- 右室梗塞、大量肺塞栓、肺高血圧のように右房圧が上がっている状況
「唯一の正解」があるのではなく、どちらの心室の話をしているかで引く圧が変わる、と覚えるのが正確である。
腹部・腸管:測れないので膀胱内圧で代替する
腹腔内圧(IAP)は直接は測れないので、膀胱内圧で代替する。仰臥位、腹筋の収縮がない状態、生理食塩水の注入量は最大25 mLで、呼気終末に読む。トランスデューサは中腋窩線でゼロ校正する。ここを間違えると値がまるごとずれる。
WSACS 2013の定義
| 重症成人の正常IAP | 5〜7 mmHg |
| 腹腔内圧上昇(IAH) | 持続的・反復的な IAP 12 mmHg超 |
| Grade I/II/III/IV | 12-15/16-20/21-25/25超(mmHg) |
| 腹部コンパートメント症候群 | 持続的 IAP 20 mmHg超 + 新規の臓器機能障害 |
WSACSはAPPの目標値を推奨していない
ガイドライン本文は「重症患者の蘇生・管理における腹部灌流圧の使用について、推奨を作ることができなかった」と明記している。
よく見る「APP 60 mmHg以上を目標に」は、2006年のWSACSコンセンサスが蘇生エンドポイントとして推奨していた数字で、2013年版はこれを維持せず「推奨なし」に後退させた。いまAPP 60を目標に置くのは、撤回された旧版の推奨を引きずっていることになる。
3カテコラミンは、犠牲にする臓器を選んでいる
循環が破綻した患者を診ていて、経過中に腸管壊死・NOMIになった、という経験はしばしばある。ここでは2つのことを分けて考えたほうがよい。
分けて考える2つ
- ショックそのものによる交感神経性の血流再分配。古典的な生理で、脳と心臓は自己調節が強いので温存され、腹部内臓(splanchnic)領域が真っ先に犠牲になる
- 我々が投与するカテコラミンによる血管収縮。これは薬理作用である。血管収縮薬は細動脈を収縮させ、結果として微小循環の灌流を落としうる
昇圧できたことと、組織灌流が増えたことは、同じではない。
薬剤選択で、犠牲の程度が変わる
De Backerらは、アドレナリンはノルアドレナリンより内臓灌流を障害すると明記している。「カテコラミンを使うかどうか」だけでなく「どれを使うか」でも、犠牲になる量は変わる。
非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)の総説は、進行した敗血症におけるNOMIの主要な原因を「高用量の強心薬に対する腸間膜血管の収縮による内臓循環の減少」としている。
ただし因果とまでは言えない
カテコラミンがNOMIを起こすという因果を証明した質の高い研究は見当たらない。関連が示唆され、機序としてももっともらしい、というところまでで止めておくのが正確である。
実務としては、高用量の昇圧薬を使っている患者で、腹部所見が乏しいまま乳酸が下げ止まる、という状況をNOMIの窓として持っておくとよい。
4MAP 65 という数字はどこから来たか
「平均血圧65以上」は根拠のある数字だが、全員に65という意味ではない。
SEPSISPAM(敗血症性ショック776例、MAP 80-85 vs 65-70)
- 28日死亡 36.6% vs 34.0%(p=0.57)。高い目標に利益はなかった
- 慢性高血圧のサブグループでは腎代替療法の必要性が 31.7% vs 42.2%(p=0.046)と高値群で少なかった
- 一方、新規心房細動は 6.7% vs 2.8%(p=0.02)と高値群で多かった
65 trial(65歳以上2,600例、MAP 60-65 vs 通常ケア)
- 90日死亡 41.0% vs 43.8%、差 −2.8%(p=0.15)で主要評価項目は有意差なし
- あらかじめ規定した共変量で調整するとオッズ比0.82(95%CI 0.68-0.98)だが、未調整では0.89(0.76-1.04)で有意ではない。主要評価項目は差なしと読むのが正確である
キーワードは initial である
Surviving Sepsis Campaign 2021の推奨文は “an initial target MAP of 65 mm Hg”(強い推奨・中等度の質)である。初期目標であって最終目標ではない。
だから実務では、まず65を目指す。そのうえで、慢性高血圧の患者ではもう少し高めを検討する余地があり、高齢者では60〜65でも押し切ってよい。「65に届いたから終わり」でも「65では足りないはずだ」でもない。
5DO₂は3つの掛け算でしかない
もう1本の軸に移る。組織が好気代謝をするには、酸素が届いていなければならない。単位時間あたりに全身へ送られる酸素の量がDO₂である。
2つの式と、単位の話
DO₂ = CO × CaO₂ × 10 (mL/min)
CaO₂ = 1.34 × Hb × SaO₂ + 0.0031 × PaO₂ (mL/dL)
ここで単位を確認しておく。心拍出量(CO)の単位はL/minである。回/minは心拍数の単位で、CO = 心拍数〔回/min〕× 一回拍出量〔mL/回〕÷ 1000 で L/min になる。CaO₂はmL/dLなので、掛け合わせるときに10(dL/L)を掛けてmL/minに揃える。式の「×10」はこの単位換算である。
CaO₂の後ろの項(血漿に溶けている酸素)はPaO₂ 100 mmHgでも約0.3 mL/dLで、DO₂に換算しても15 mL/min程度、全体の1〜2%にすぎない。実務では落としてよい。すると DO₂ = 13.4 × CO × Hb × SaO₂ と書ける。この13.4は 1.34 × 10 で、さきほどの単位換算を吸収したものである。
図3:DO₂は3つの掛け算。届けた酸素のうち普段使っているのは4分の1
つまりDO₂を決めているのは、心拍出量とヘモグロビンと酸素飽和度の3つだけである。ベッドサイドで「DO₂が足りていない」と思ったとき、打てる手はこの3つのどれかしかない、という整理になる。式のうえでいちばん動かしやすいのはHbだが、輸血閾値は7 g/dLが標準で、DO₂の数字を上げるためだけに輸血する根拠はない。そのうえで心拍出量を上げる余地はないか、酸素化を上げる余地(除水、呼吸器設定)はないかを見ていく。
1.34という定数の正体
Hb 1 gが結合できる酸素の量を表す。1.39が理論値で、Hbの分子量64,458.5から算出したもの(4分子 × 22.4 L ÷ 64,458.5)である。最後の1分子まで酸素が結合するという到達不能な前提の数字なので、実測値とは合わない。1.34は1894年のHüfnerの実測値1.336を丸めたものである。
乖離の理由は、総Hbには酸素を結合できないdyshemoglobin(メトHb、CO-Hb、スルフHb)が含まれること、Hb濃度と酸素含量の測定法が違うこと、100%飽和・完全結合という仮定が成り立たないこと。臨床上はどちらを使っても差は4%程度で、結論は変わらない。
正常値を持っておく
| DO₂ | 約 1,000 mL/min(500〜600 mL/min/m²) |
| VO₂ | 約 250 mL/min(120〜160 mL/min/m²) |
| O₂ER | 約 25%(VO₂ ÷ DO₂) |
普段、我々は届けている酸素の4分の1しか使っていない。逆に言えば、DO₂が減っても抽出率を上げることで当面はVO₂を維持できる。その抽出率が上限(およそ70%)に達した点がcritical DO₂で、そこから先はVO₂がDO₂に引きずられて落ち、嫌気性代謝に移行する。
6SvO₂は「余った酸素」を見ている
DO₂を上げる手は打った。効いているかをどう見るか。
混合静脈血酸素飽和度(SvO₂)は、全身を回って帰ってきた血液にまだ酸素がどれだけ残っているかを見ている。つまりDO₂とVO₂の帳尻である。
図4:SvO₂の読み方と、ScvO₂との関係
抜けやすいのは「高値も異常」のほう
高値には2つの機序がある。抽出できていない場合(敗血症、動静脈シャント、細胞レベルの酸素利用障害)と、需要そのものが落ちている場合(低体温、深鎮静)である。危ないのは前者で、ScvO₂が高いのを見て「酸素は足りている」と読むと、敗血症で最も危険な場面を見落とすことになる。
ScvO₂はSvO₂の代用ではない
正確に測るならSwan-Ganzカテーテルだが、現実には中心静脈カテーテルから中心静脈血酸素飽和度(ScvO₂)を測ることが多い。これがSvO₂の代わりになるかというと、ならない。
3つの研究が示したずれ
| Reinhart 2004(重症32例) | ScvO₂ は SvO₂ より平均 7 ± 4 ポイント高い |
| Varpula 2006(敗血症性ショック16例) | バイアス +4.2%、95%一致限界 −8.1 〜 +16.5% |
| van Beest 2010(重症敗血症53例) | バイアス +1.7 ± 7.1%、95%一致限界 −12.1 〜 +15.5% |
一致限界は0を中心に対称ではなく、幅にして25〜28ポイントに及ぶ(van Beestで−12.1〜+15.5%)。つまり「ScvO₂に何ポイント足せばSvO₂になる」という固定のオフセットは、個々の患者には当てられない。
ずれの向きが病態で反転する
健常時はScvO₂のほうがSvO₂より2〜3ポイント低い。下半身の抽出が控えめだからである。ところが重症になると逆転して、ScvO₂のほうが高くなる。腎や腹部内臓領域の抽出が亢進して、下半身から帰ってくる静脈血が脱飽和するためである。
オフセットの向きすら病態で反転するのだから、固定値で換算できるはずがない。
ただし「ターゲット」にはしない
ScvO₂ 70%以上を蘇生目標に据えたEGDTは、ProCESS・ARISE・ProMISeの3つの大規模RCTで通常ケアへの上乗せ効果を示せなかった。Surviving Sepsis Campaignも2016年版以降、ScvO₂を蘇生ターゲットから外している。
読む指標としては残るが、追いかける目標にはしない、という線引きになる。
ではScvO₂は使えないのか
そうではない。Reinhartの研究で示されたのは、SvO₂が5%を超えて動いたとき、90%でScvO₂も同じ方向に動いた、というトレンドの追随性である。
ScvO₂は「今いくつか」を読む指標ではなく、同じカテーテルで繰り返し測って「どちらに動いたか」を読む指標である。この線引きさえ守れば、十分に実用的なモニターになる。
7やりがちな失敗
圧は2本ある軸の片方でしかない。DO₂が落ちていれば、血圧がいくつであっても組織は好気代謝をしていない。血圧と乳酸とSvO₂を別々の指標として並べるのではなく、perfusionとoxygen deliveryのどちらを見ているのかで整理する。
出口の圧は臓器で違う。脳はICP、腹はIAP、心内膜下はLVEDP。CVPと臓器圧の高いほうが採用される。腹腔内圧が20 mmHgある患者で「MAP 70だから灌流は足りている」と読むと、実際の腹部灌流圧は50しかない。
左冠系の話をしているなら、引くべきはLVEDPである。CVPを下げても心内膜下の後方圧は下がらない。逆に右室梗塞やCPRの文脈なら右房圧が律速になるので、そこでは正しい。どちらの心室の話かを先に決める。
あの図は7研究376人をプールしたもので、個人内の関係を示していない。現代の再解析ではプラトー幅は5〜10 mmHg程度。固定閾値で安心する根拠はもともと無い。TBIならCPP 60〜70を目標に置く。
SSCの推奨文は “initial target” である。慢性高血圧ではRRTの必要性が高値目標で減った一方、心房細動は増えた。65歳以上では60〜65でも死亡は増えていない。65は出発点であって到達点ではない。
回/minは心拍数である。COはL/min。DO₂ = CO × CaO₂ × 10 の「×10」はdL/Lの単位換算で、ここが揃っていないと計算が3桁ずれる。
80%超は「抽出できていない」のサインである。敗血症、シャント、ミトコンドリア障害、低体温、深鎮静。低値と同じくらい危ない。
95%一致限界は±12〜16ポイントで、ずれの向きすら健常時と重症時で反転する。絶対値の換算はできない。読むならトレンドである。
8早見表とTake home
| 領域 | 押さえること |
|---|---|
| 定義 | 循環が保たれている=重要臓器が十分な好気代謝をするために必要な組織灌流が担保されていること。軸はperfusionとoxygen deliveryの2本 |
| 灌流圧 | 入口の圧 − 出口の圧。Hagen-Poiseuilleでは流量が半径の4乗に比例する。内腔が半分で流量は16分の1 |
| 出口の圧 | CVPと臓器圧の高いほうが採用される。脳=ICP、腹=IAP、心内膜下=LVEDP、右心系(右冠・右室・CPR)では右房圧 |
| 脳 | CPP = MAP − ICP。「50〜150でプラトー」はLassen 1959の古典説で、現代の再解析ではプラトー幅5〜10 mmHg程度。TBIではCPP 60〜70、ICP 22超で治療(BTF第4版) |
| 心 | 冠灌流圧 = dBP − LVEDP。左冠系は拡張期優位。右冠・右室は収縮期にも灌流される。CPRではCPP 15 mmHg以上がROSCを予測 |
| 腹部 | APP = MAP − IAP。膀胱内圧で代替(生食25 mLまで)。IAH 12超、ACS 20超+新規臓器障害。WSACSはAPPの目標値を推奨していない |
| カテコラミン | 昇圧できたことと組織灌流が増えたことは別。腹部内臓領域が犠牲になりやすい。NOMIは関連が示唆されるが因果は未証明 |
| MAP目標 | SSC 2021は “initial target 65″(強い推奨・中等度の質)。SEPSISPAMは慢性高血圧でRRT減・心房細動増。65 trialは65歳以上で60〜65でも死亡増なし |
| DO₂ | DO₂ = 13.4 × CO × Hb × SaO₂。COはL/min。打てる手はCO・Hb・SaO₂の3つだけ |
| 1.34と1.39 | 1.39が理論値(分子量64,458.5から算出)、1.34が実測値(Hüfner 1894の1.336)。臨床上の差は約4% |
| 正常値 | DO₂ 約1,000 mL/min、VO₂ 約250 mL/min、O₂ER 約25%。抽出率の上限は約70%で、そこがcritical DO₂ |
| SvO₂ | 正常65〜75%。65%未満で抽出亢進、50%未満で嫌気性代謝、80%超は抽出できていない |
| ScvO₂ | 重症患者ではSvO₂より高くなるが(研究により平均+1.7〜+7ポイント)、95%一致限界の幅は25〜28ポイントに及ぶ。健常時は逆に2〜3ポイント低い。絶対値の換算は不可、トレンドで読む |
Take home
- 循環が保たれているとは、重要臓器が好気代謝できるだけの組織灌流があること。血圧はその代理指標にすぎない
- 灌流圧は「入口の圧 − 出口の圧」でしかない。そして出口の圧は臓器ごとに違う
- 流量は半径の4乗に比例する。内腔が半分になれば流量は16分の1になる
- 「脳血流は50〜150 mmHgでプラトー」は1959年の古典説である。現代の再解析ではプラトー幅は5〜10 mmHg程度で、しかも個人差が大きい。固定閾値で安心する根拠はもともと無い
- 冠灌流圧で引くのはLVEDPである。右房圧を引くのは右冠・右室・CPRの文脈に限られる
- WSACSは2013年版で腹部灌流圧の目標値について「推奨を作れなかった」としている。よく見る「APP 60以上」は2006年版の推奨の名残である
- MAP 65は初期目標であって最終目標ではない。慢性高血圧ではもう少し高め、高齢者では60〜65でもよい
- DO₂を決めるのはCO・Hb・SaO₂の3つだけで、打てる手もその3つだけである
- 普段、我々は届けている酸素の4分の1しか使っていない。抽出率が約70%に達した点がcritical DO₂で、そこから先は嫌気性代謝に移行する
- SvO₂は低値も高値も異常である。80%超は「抽出できていない」のサインで、敗血症で最も見落としたくない場面がここにある
- ScvO₂はSvO₂の代用にならない。ずれの向きが健常時と重症時で反転するのだから、固定値で換算できるはずがない。読むならトレンドである
次回(②)は、この灌流圧を作りにいく最初の手段である輸液について、「入れる前に何を確かめるか」を書く。
参考文献
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循環管理シリーズ
- 循環管理 ①循環動態の基礎(この記事)
- 循環管理 ②輸液反応性
- 循環管理 ③ 輸液の基礎
- 昇圧薬・強心薬の使い分け ―どれを・いつ・どれだけ(循環管理③)
