生理学

循環管理 ③ 輸液の基礎

前回(②)は「入れるか、入れないか」の話だった。今回は中身の話をする。輸液そのものについて系統的に学ぶ機会はあまりない。国家試験で「細胞内:間質:血管内は8:3:1」と覚えて、そこで止まっている人が多いと思う。

その知識も要る。ただ、ボリューム管理を本気でやるなら、そこよりずっと大事な生理学がある。浸透圧の話が出てくるので身構える人がいるかもしれないが、実務に効くところだけをかいつまんで書く。

この記事の芯を先に書いておく

教科書に載っている「細動脈側で濾過され、細静脈側でアルブミンが水を引き戻す」という図は、定常状態では成立しない。

これが分かると、アルブミンやHESが期待どおりに効かない理由が、臨床試験の話ではなく生理学の話として腑に落ちる。

この記事でわかること

  • 「8:3:1」と「等張液の1/4が血管内に残る」が別の話であること
  • 静脈側での再吸収が定常状態では成立しないこと(no absorption rule)
  • 半透膜が血管壁ではなくグリコカリックスであること
  • 膠質液が血管内に留まる効果は、毛細血管圧が高いときにしか現れないこと
  • 注射用水の害が溶血だけでなく、ヘモグロビン起因性の腎不全まであること
  • 酢酸を代謝しているのが主に骨格筋と心筋で、「腎不全なら乳酸リンゲル」が逆であること
  • バランス晶質液が敗血症では腎代替療法を減らすこと(SSC 2026、高い確実性)
  • 外傷性脳損傷だけは、バランス晶質液もアルブミンも不利であること
  • HESについて、日本の添付文書のほうがEUより厳しくなっていること
  • アルブミンが明確に有害と言えるのはTBIであること

1「8:3:1」と「1/4しか残らない」は、別の話

体重の60%が水分で、その分布は細胞内液:間質液:血管内=8:3:1(体重の40%:15%:5%)である。細胞外液は間質+血管内なので、その中の比は3:1、合わせて体重の20%になる。

ここから出てくるのが、よく言われるもう一つの数字である。等張晶質液を1L入れると、血管内に残るのはおよそ1/4、250 mL

図1:体液の区分と、等張晶質液1Lの行方

8細胞内液体重の40%3間質液体重の15%1血管内体重の5%細胞内:間質:血管内 = 8:3:1細胞外液体重の20%、内訳3:1等張晶質液 1L750 mL間質へ250 mL血管内に残る細胞外液の中で 3:1 に配られる。血管内に残るのは約1/4ただし、この1/4は健常時の理想値でしかない投与30分で最大50%が失われうる。敗血症では1時間後に5%未満投与直後250 mL(1/4)30分後最大で半減1時間後・敗血症5%未満

この2つを混ぜない

8:3:1は体液区分の比、1/4は投与した等張液の行き先である。

「血管内:間質:細胞外液=1:3:8」という並べ方をしている資料を見かけるが、細胞外液は血管内と間質の合計なので、この3つを並べると定義が矛盾する。

そして「1/4」も健常時の理想値でしかない。volume kineticsの研究では、投与後30分で血管内効果の最大50%が失われうるとされる。②で書いたとおり、敗血症患者では1時間後に5%未満しか残らない。

2OsmolalityとTonicity ― 何が水を、どこへ引くか

指導するときは、まず「晶質と膠質の違いは分かりますか」から始める。

晶質浸透圧と膠質浸透圧

晶質浸透圧 電解質やブドウ糖がつくる。細胞外液(間質+血管内)に水を引く
膠質浸透圧 アルブミンなどの蛋白がつくる。血管内に水を引く

晶質は毛細血管を自由に行き来できるが、細胞膜は自由には通れない。だから細胞内と細胞外のあいだで水を動かす。膠質は分子量が大きく、健常な血管壁からはまず出ていかない。だから血管内と間質のあいだで水を動かす。

膠質の性質で押さえるべき3つ

  • 晶質と違い、自由に出入りできない
  • 分子量が莫大に大きいので、モル数(mOsm)としては小さく、浸透圧差そのものは大きくない
  • 晶質は細胞内から間質へ、膠質は間質から血管内へ、水を引く

effective osmole と non-effective osmole

ここから少しレベルが上がる。ポイントは「細胞膜を透過するかどうか」である。

2種類の浸透圧物質

effective osmole 細胞膜を透過せず、tonicity(細胞外に水を引く力)をつくる
non-effective osmole 勝手に透過してしまうので、tonicityをつくらない

血漿浸透圧を計算するときは全部足すが、tonicityを考えるときはnon-effective osmoleを差し引かなくてはならない。

血管内外の水の分布を考える場面では、実質的にNaとブドウ糖だけを見ればよく、実臨床ではほとんどNaだけで足りる。理由は2つある。数値としての寄与が桁違いに小さいこと、そしてブドウ糖は血管内に入ると比較的速やかに代謝されることである。

だから5%ブドウ糖はtonicityを持ちそうに見えて、入った直後からfree water扱いになる

蒸留水を静注してはいけない理由と、5%ブドウ糖でよい理由

蒸留水は浸透圧ゼロなので、赤血球が膨張して破壊される。ここまではよく知られている。ただ、話はそこで終わらない。

溶血の、その先がある

FDAの注射用水の添付文書には「溶血が起こりうる。溶血に続くヘモグロビン起因性の腎不全が報告されている」と明記されている。

溶血そのものより、その先の腎不全のほうが患者を殺す。

5%ブドウ糖は約278 mOsm/Lで、輸液する瞬間は等張である。だから溶血しない。しかしブドウ糖は速やかに代謝されるので、結果として自由水を入れたのと同じになる。「等張液の顔をした自由水」と覚えておくとよい。

実務の補足

5%ブドウ糖は電解質を含まないため、同じルートで血液製剤と前後・同時に投与すると溶血や偽凝集を起こす。

等張輸液と低張輸液

等張とは、輸液のosmolalityが血漿とほぼ同じという意味で、代表が生理食塩水である。浸透圧比(生食を1としたときの比)は1になる。

では低張輸液はどうか。浸透圧比が低ければ、血管内に入って溶血しそうなものである。実際には、低張輸液は「電解質が占める浸透圧が足りていない」だけで、そこにブドウ糖を足して浸透圧比を1に揃えてある。蒸留水ではなく5%ブドウ糖を使うのと同じ理屈である。

osmolalityとtonicityが混線しやすいところだが、輸液製剤の浸透圧比はいずれも1に設定されている、というのが答えになる。ただしこれは晶質浸透圧の話にすぎない。

3教科書のStarlingの図は、定常状態では成立しない

膠質浸透圧の話を続ける前に、前提を1つ更新しておきたい。我々が習ったのは、こういう図だったと思う。

古典的なStarlingモデル

毛細血管の動脈側では静水圧が膠質浸透圧を上回るので、水が濾過される。静脈側では静水圧が下がるので、今度は膠質浸透圧が勝って水が引き戻される。

この「静脈側で引き戻される」が、成立しない

図2:古典的Starlingモデルと、グリコカリックスモデル

古典的Starlingモデル(教科書の図)動脈側静脈側濾過再吸収定常状態では成立しない4つのStarling力を同時に測ると、正味の吸収力は存在しなかったグリコカリックスモデル半透膜はグリコカリックス濾過は一方向リンパへ濾過された液は、静脈側ではなくリンパとして還るグリコカリックス直下の蛋白濃度は、間質よりはるかに低い臨床的な帰結膠質液が血管内に留まる効果は、毛細血管圧が高いときにしか現れない。低い毛細血管圧から蘇生する場面では、晶質液のほうが生理学的に理にかなうそして敗血症では、グリコカリックスそのものが剥落するsyndecan-1やheparan sulfateが剥がれ、透過性が亢進する。アルブミンを血管内に保持する能力そのものが落ちる

3つの訂正

Levick & Michel(2010)とWoodcock & Woodcock(2012)が整理した内容である。

(1)半透膜は血管壁ではなく、内皮グリコカリックスである

膠質浸透圧の差がかかっているのは血管壁の内外ではなく、グリコカリックス層の内外である。グリコカリックスの直下(subglycocalyx space)の蛋白濃度は、間質の蛋白濃度よりはるかに低い。濾液が外向きに流れ続けるので蛋白の拡散平衡が妨げられるためで、条件によっては間質濃度の10%程度まで下がる。

つまり実際に効いている膠質浸透圧差は、血漿と間質の差ではなく、血漿とsubglycocalyx spaceの差である。

(2)no absorption rule ― 定常状態での再吸収は起こらない

Levick & Michelの原文はこうである。「心臓の高さでは、皮膚の静脈側毛細血管にも細静脈にも、正味の吸収力は存在しなかった」(There was no net absorptive force in the cutaneous venous capillaries or venules at heart level)

4つのStarling力を同じ組織で同時に測ると、静脈側での再吸収は成立しない。一過性の吸収は起こりうる。ただし濾過が減ると間質の蛋白濃度が上がって浸透圧勾配が消えるので、定常状態としては続かない。

(3)濾過された液はリンパとして還る

静脈側で戻るのではない。だから、ほとんどの組織で体液バランスはリンパ機能に決定的に依存している

何が変わるか

臨床的な帰結

膠質液が「血管内に留まる」効果は、毛細血管圧が高いときにしか現れない。低い毛細血管圧から蘇生する場面では、晶質液のほうが生理学的に理にかなう。

Woodcockらの結論そのままである。ショックで血圧が下がっている患者は、まさに「毛細血管圧が低い」状態にいる。つまり我々が膠質液を一番使いたい場面が、膠質液の理屈が最も効かない場面になる。

もう1つ。敗血症などの重症病態ではグリコカリックスが崩壊する。syndecan-1やheparan sulfateが剥がれ落ち、透過性が亢進して、アルブミンを血管内に保持する能力そのものが落ちる。健常なグリコカリックス(intact)は凝固を制御しアルブミンの漏出を防いでいるが、重症病態では剥落(degraded)し、細胞間接着が緩んで蛋白が漏れ出る。

「アルブミンなら血管内に留まるはず」という前提が、二重に崩れているわけである。

膠質浸透圧の数字

Landis-Pappenheimer式

COP(mmHg)= 2.1×TP + 0.16×TP² + 0.009×TP³ (TPは g/dL)

標準式で、実験データへの経験的な多項式フィットである。血漿蛋白の非理想性を補正するためにこの形をしている(単純なvan’t Hoff式では17.3 mmHg程度にしかならないのに、実測は25 mmHg前後になる)。

健常成人の血漿COPはおよそ25 mmHg(Morissette 1977の実測で平均25.4 mmHg)。

実臨床ではアルブミンの値に引っ張られがちだが、式が使っているのはTP(総蛋白)である。ここは押さえておきたい。

4実際に輸液を入れると、どこへ行くか

3種類に分けて見る

① 低張輸液 5%ブドウ糖なら完全にfree waterとして全身の水分に分布する。1号液のように[Na⁺]が90程度あれば、その分は細胞外液にも分布する
② 等張輸液 理論上は十分なtonicityを持ち、細胞膜を透過せずに細胞外液内に分布する。つまり間質と血管内に3:1で配られる
③ 血漿増量剤 アルブミン製剤やHES製剤。血漿のみに分布し、膠質浸透圧として水を血漿内に引く。HESやデキストランはグルコースの重合体で、分子量が5桁に達するために膠質として働く

③については、3章で書いたとおり「理論上は」という前提がついている。

5高Cl性アシドーシスと、リンゲル液の緩衝剤

なぜ生食で代謝性アシドーシスになるのか

血管内脱水に生理食塩水を入れ続けると、血漿の電解質がNa 154/Cl 154に近づいていく。すると陰イオンがClで埋まっていき、陰イオンとしてのHCO₃⁻の居場所がなくなる。

これはStewartのstrong ion difference(SID)による説明である。生食はNa 154/Cl 154でSIDがゼロなので、大量に入れると血漿SIDが下がり、電気的中性の帳尻としてHCO₃⁻が減る。

ただし、この説明には批判がある

「Stewartのアプローチは数学的には妥当だが、機序的な洞察を与えない。電気的中性の原理もSIDの変化も、機序としての役割を果たしていない」

より素朴な説明はこうである。生食には緩衝塩基が入っていないので、HCO₃⁻だけが希釈される。一方、緩衝酸であるCO₂は呼吸によって一定に保たれる。塩基側だけが薄まるので、アシデミアに傾く。

どちらも同じ現象を別の言葉で記述している。両方を持っておくとよい。

生食のpHが低いことは、ほぼ無関係である

生理食塩水のin vitroのpHは約5.5(PVCバッグでは4.6程度まで下がる)と低いが、滴定酸度は0.126〜0.152 mEq/Lで無視できる。

乳酸リンゲルと酢酸リンゲルは、どちらを使えばいいのか

これらはClが少ない代わりに、陰イオンとして乳酸イオンや酢酸イオンを使っている。どちらも代謝されるとHCO₃⁻に変換されるので、結果として血漿に近い組成になる。

結論から言うと、どちらでもよい。ただし、その理由づけは訂正しておきたい。

「乳酸は肝臓、酢酸は腎臓」は間違っている

酢酸を代謝しているのは、主に骨格筋と心筋である。acetyl-CoA synthetaseの組織分布から、ACSS1は心筋・骨格筋・褐色脂肪に、ACSS2は筋・腎・小腸・大腸・脂肪組織に高発現している。そしてケトン産生が亢進した状態では、肝・腎・腸はむしろ遊離酢酸の産生側に回る(条件によっては肝や腎が取り込み側になる報告もある)。

乳酸のほうは肝が第一、腎が第二である。外因性の高乳酸血症では投与乳酸のおよそ20〜30%を腎が処理し、その寄与はアシドーシス下で上がる(pH 7.45で16%、pH 6.75で44%)。ただしこのpH別の数値は動物実験に基づくもので、原著自身が「ヒトのアシドーシスでもおそらく重要だろう」と書いている段階である。

したがって「腎不全なら乳酸リンゲル」は生理学的にむしろ逆である。腎は投与乳酸の20〜30%を処理しているので、腎不全では処理能が落ちる。酢酸の主な利用臓器は心筋・骨格筋であり、乳酸ほど肝腎に依存しない。理屈だけなら腎不全でも肝不全でも酢酸のほうが通りやすい。

ただし、ここで止めるのが正確である

HEMACETAT試験(Crit Care 2019) 待機的心臓弁手術148例(酢酸75/乳酸73)の単施設二重盲検RCT。主要評価項目である血行動態安定化までの平均inopressor投与量は酢酸2.1 µg/kg/h(IQR 0.5-8.1)vs 乳酸1.7(0.7-8.2)、p=0.989。酸塩基パラメータの推移も同様だった
スコーピングレビュー(BJA 2020) 29研究(うち25がRCT)。「いずれかの溶液が有益/有害であるという確たるエビデンスはない。エビデンスの量・質ともに低い」

臨床アウトカムの差は示されていない。

酢酸の心筋抑制は、透析液の話である

酢酸には心筋抑制・血管拡張の報告がある(Cardiovasc Res 1978)。ただしこれは酢酸ナトリウムの大量負荷または酢酸透析液での検討で、HEMACETATの著者ら自身が「酢酸緩衝リンゲル液の輸液で生じる酢酸負荷ははるかに小さい」と釘を刺している。1〜2Lの輸液で問題になった臨床データはない。

6バランス晶質液は、生理食塩水に勝ったのか

ここは近年いちばん動いた領域で、なおかつ結論が「勝ったとも負けたとも言いにくい」形に落ち着いている。主要RCTを時系列で並べる。

試験 結果
SPLIT
JAMA 2015、2,278例
AKI 9.6% vs 9.2%、p=0.77。差なし
SMART
NEJM 2018、15,802例のICU入室
MAKE30 14.3% vs 15.4%、調整OR 0.90(0.82-0.99)、p=0.04。院内死亡 10.3% vs 11.1%(p=0.06)、新規RRT 2.5% vs 2.9%(p=0.08)
SALT-ED
NEJM 2018、13,347例
主要評価項目のhospital-free daysは差なし(p=0.41)。副次のMAKE30は 4.7% vs 5.6%、調整OR 0.82(0.70-0.95)、p=0.01
BaSICS
JAMA 2021、10,520例
90日死亡 26.4% vs 27.2%、HR 0.97(0.90-1.05)、p=0.47。差なし
PLUS
NEJM 2022、5,037例
90日死亡 21.8% vs 22.0%、OR 0.99(0.86-1.14)、p=0.90。差なし

図3:バランス晶質液 vs 生理食塩水 ― 1をまたぐかどうかで見る

1.0← バランス晶質液が有利生理食塩水が有利 →SMARTMAKE30 調整OR0.90(0.82-0.99)SALT-EDMAKE30 調整OR0.82(0.70-0.95)BaSICS90日死亡 HR0.97(0.90-1.05)PLUS90日死亡 OR0.99(0.86-1.14)メタ解析(ICU全体)90日死亡 RR0.96(0.91-1.01)SSC 2026 敗血症死亡 OR(中等度)0.94(0.85-1.04)SSC 2026 敗血症新規RRT OR(高い確実性)0.86(0.74-0.99)TBIサブグループ90日死亡 HR1.48(1.03-2.12)敗血症では、死ぬかどうかは変わらないが、透析にかかる人は減る。ただしTBIだけは逆方向である

ICU患者全体を対象にしたメタ解析

  • 13 RCT・35,884例で90日死亡 RR 0.96(0.91-1.01)。ベイズ解析では「balancedが死亡を減らす事後確率89.5%」
  • 個別患者データメタ解析(BEST-Living、6試験34,685例)でも院内死亡 OR 0.962(95%CrI 0.909-1.019)、有益の事後確率0.895

点推定はbalanced寄りだが、信頼区間は1をまたぐ。有意差がついたMAKE30の2試験(SMART・SALT-ED)はいずれも単施設群・非盲検のプラグマティック試験で、多施設二重盲検で死亡をアウトカムにしたBaSICS・PLUSはいずれも陰性だった。

ただし、敗血症に絞ると景色が少し変わる

ここが今回いちばん書きたいところである。Surviving Sepsis Campaign 2026は、この2つのレビューの敗血症サブグループを自分たちでGRADE評価し直している

SSC 2026 パネル自身の推定値

死亡 OR 0.94(95%CI 0.85-1.04) 中等度の確実性
新規の腎代替療法 OR 0.86(95%CI 0.74-0.99) 高い確実性
人工呼吸器非装着日数 差なし(低い確実性)

死亡は依然として信頼区間が1をまたぐ。しかし腎代替療法は信頼区間が1をまたがず、しかも確実性が「高い」である。

つまり敗血症では「死ぬかどうかは変わらないが、透析にかかる人は減る」。ICU全体を対象にしたメタ解析の「効果はあっても小さい」という総括より、敗血症に限れば一歩踏み込める。

SSC 2026の推奨(輸液の種類)

推奨43 蘇生の第一選択輸液として晶質液を使うことを推奨する(強い推奨・中等度の確実性)〔2021年から据え置き〕
推奨44 初期蘇生を受ける成人では、0.9%生理食塩水よりバランス晶質液を使うことを提案する(弱い推奨・中等度の確実性)〔再評価〕
注記:敗血症と外傷性脳損傷を合併する患者では0.9%生理食塩水を提案する
推奨47 ゼラチンは使わないことを提案する(弱い推奨・中等度の確実性)〔据え置き〕

2021年版では「弱い推奨・低い質のエビデンス」だった。2026年版で確実性が中等度に上がっている。パネル自身が「データが追加されたことで2021年から確実性が強まった」と書いている。なお、この推奨は2024年のESICM輸液ガイドラインと一致するとも明記されている。

ただし、外傷性脳損傷では話が逆になる

これは実務に直結するので、必ず押さえておきたい。

TBIではバランス晶質液が不利

BaSICSのTBIサブグループ 90日死亡 31.3% vs 21.1%、HR 1.48(1.03-2.12)
個別患者データメタ解析 19.1% vs 14.7%、OR 1.424(1.100-1.818)、害の事後確率0.975

SSC 2026も本文で「外傷性脳損傷の患者では、バランス晶質液でもアルブミンでも害を示唆するエビデンスがある。そのためパネルはこの集団に0.9%生理食塩水を使うことを助言する」と書いている。

機序としては、バランス晶質液が生食よりわずかに低張であることが挙げられる。TBIでは生理食塩水を使う。

7手術室で見る輸液 ― 重炭酸リンゲルとフィジオ

手術室で一番よく見るのはビカネイト/ビカーボンやフィジオ、次がボルベンだと思う。

ビカネイト/ビカーボン

重炭酸リンゲル液である。乳酸や酢酸の部分に、直接HCO₃⁻が入っている。非常に生理的で、切迫する状況ならこちらのほうがよいに決まっている。ただし、少し時間が経てば乳酸リンゲルも酢酸リンゲルも同じように振る舞うので、それほど大きな差にはならない。

実務のポイント

Mgを含むのはビカーボン・ビカネイト・フィジオ140の3つで、いずれも高マグネシウム血症と甲状腺機能低下症の患者が禁忌である(高マグネシウム血症が悪化する、または誘発されるおそれがあるため)。フィジオ70はMgを含まないので該当しない。

フィジオは、140と70で別物である

「フィジオ」と一括りにできない。フィジオ140はNa 140でMg 2を含み、緩衝剤は酢酸25。フィジオ70はNa 70でMgを含まず、ブドウ糖2.5%を含む低張液である。Naが血漿に近く生理的、という話が当てはまるのはフィジオ140のほうで、フィジオ70は位置づけがまったく違う。

製剤 Na K Ca Mg Cl 緩衝剤 その他
生理食塩水 154 154
ソルラクト 131 4 3 110 L-乳酸 28
ソルアセトF 131 4 3 109 酢酸 28
フィジオ140 140 4 3 2 115 酢酸 25 グルコン酸3、クエン酸6、ブドウ糖1%
フィジオ70 70 4 3 52 酢酸 25 ブドウ糖2.5%
ビカーボン 135 4 3 1 113 HCO₃ 25 クエン酸5
ビカネイト 130 4 3 2 109 HCO₃ 28 クエン酸4

単位はmEq/L。各製剤の電子添文による

8HES ― 日本の添付文書のほうが厳しい

ボルベン(分子量13万)とヘスパンダー(分子量7万)が国内のHES製剤である。分子量が大きいので血管外に出にくい。ただし大きければよいわけではない。かつては分子量45万・置換度0.75の第1世代HES(海外のhetastarch。国内でも1973年に承認されていた)が使われていたが、置換度が高くαアミラーゼによる分解が遅いため体内に蓄積し、腎障害と凝固異常を起こすことから使われなくなった。

何が問題だったのか

試験 結果
VISEP
NEJM 2008、重症敗血症537例
28日死亡に差なし。急性腎障害 34.9% vs 22.8%(p=0.002)、RRT 31.0% vs 18.8%(p=0.001)。安全性懸念で早期中止
6S
NEJM 2012、重症敗血症804例
90日死亡または透析依存 51% vs 43%、RR 1.17(1.01-1.36)、p=0.03
CHEST
NEJM 2012、ICU 7,000例
90日死亡に差なし(RR 1.06)。RRT 7.0% vs 5.8%、RR 1.21(1.00-1.45)、p=0.04
Cochrane
2018
死亡 RR 0.97(0.86-1.09)。RRTの必要性 RR 1.30(1.14-1.48)

死亡そのものは動かないが、腎代替療法は一貫して増える

SSC 2026 推奨46

成人の敗血症・敗血症性ショックでは、蘇生にstarchを使わないことを推奨する(強い推奨・高い確実性)〔2021年から据え置き〕

ガイドラインの推奨で「強い推奨・高い確実性」が付くものは多くない。ICUの蘇生でHESを使う理由は、現時点で存在しない。

図4:HESの規制史 ― FDA・EU・日本の3レーン

VISEP6S・CHESTFDAboxed warning 新設改訂「代替がなければ使うな」EMA/EU重症・敗血症で制限停止勧告EC決定:管理下アクセスで決着EC決定:販売承認停止日本重症敗血症を禁忌へ追加販売継続ドイツは18か月の猶予条項を行使し、条件付きで市場に残した200820122016202020232026「日本は遅れている」の逆である。日本は禁忌まで踏み込み、EUは猶予条項で骨抜きになった

規制の流れ

2013年6月 FDA:boxed warningを新設
2013年 EMA:重症患者・敗血症・熱傷での使用を制限
2018年1月 EMA/PRAC:販売承認停止を勧告
2018年7月 欧州委員会:停止ではなく、管理下アクセスプログラム+医療者研修義務+警告強化で決着
2021年7月 FDA:boxed warningを改訂。「代替治療が得られない場合を除き使用すべきでない」と明記
2022年2月 EMA/PRAC:制限が守られていないとして、停止を再勧告
2022年5月24日 欧州委員会:加盟各国にHES輸液製剤の販売承認停止を義務づけ

ここまで読むと「日本は遅れている」と思うかもしれない。実際は違う

まずEUの停止は完全実施ではない。この決定には最大18か月の猶予条項があり、ドイツはこれを行使した。BfArMは2023年11月21日のDHPCで「停止解除の条件は満たされた」として、承認適応内での使用と年次の医療者研修義務を条件に、HESを市場に残している。

そして日本

ボルベン輸液6%は2026年現在も販売されている。添付文書はこうなっている。

効能・効果 循環血液量の維持
用法・用量 1日50 mL/kgを上限とする
警告 「重症患者管理における相対的な循環血液量低下で本剤を使用した場合には、患者の状態を悪化させるおそれがあるため、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること」
禁忌 過敏症既往、重度の高Na血症/高Cl血症、水分過負荷(肺水腫・うっ血性心不全等)、頭蓋内出血中、乏尿・無尿を伴う腎不全、透析治療中、重症の敗血症の患者

「重症の敗血症の患者」は2023年1月に禁忌へ追加された

ボルベン・ヘスパンダー・サリンヘスの3剤すべてで同時に追加され、「敗血症の患者(重症の敗血症の患者を除く)」が慎重投与に加わった。根拠として6S試験が明示されている。

つまりこの論点は、27〜37本目で繰り返してきた「国際的にはこう、日本の添付文書はこう」とは逆向きになっている。日本は禁忌まで踏み込んでいて、むしろEUのほうが猶予条項で骨抜きになっている。

読むべきは添付文書である、という話に戻ってくる。

ヘスパンダー/サリンヘスは適応が狭い

効能・効果 出血多量、体外循環の血液希釈
用法・用量 成人1回100〜1,000 mL静注。小児は体重1 kgあたり10 mL以内。体外循環時は体重1 kgあたり10〜20 mL

ボルベンのような「mL/kg/日」の上限規定ではなく、1回投与量の上限で規定されている。ヘスパンダーはHES 70000(HES 70/0.55)を乳酸ナトリウム含有の電解質液(Na 105.6/K 4/Ca 2.7/Cl 92.3/乳酸20 mEq/L)+ブドウ糖1%に溶かした製剤で、デキストランは配合されていない。サリンヘスは同じHESを生理食塩液に溶かした製剤である。

9アルブミン ― 明確に悪いと言えるのはTBIである

HES製剤と比べて圧倒的に高価であることがデメリットとして挙げられる。適応については「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」がよくまとまっている。現行は2024年6月公表の改訂第3版である(2018年版は改訂第2版、初版は2015年)。

何が分かっているか

1998年 Cochrane(BMJ 317:235-240)は、もう根拠に使えない

30 RCT・1,419例で、アルブミン投与により死亡の相対危険1.68(1.26-2.23)、絶対リスク増加6%と報告して大論争になった。ただし発表直後から方法論への反論が相次ぎ、その後SAFEで実質的に否定された。

SAFE(NEJM 2004、6,997例)

  • 28日死亡 20.9% vs 21.1%、RR 0.99(0.91-1.09)、p=0.87。差なし
  • 重症敗血症サブグループ 30.7% vs 35.3%、RR 0.87(0.74-1.02)、p=0.09 → アルブミン寄りの傾向
  • 外傷+脳損傷 24.5% vs 15.1%、RR 1.62(1.12-2.34)、p=0.009 → アルブミンで有害

SAFE-TBI(NEJM 2007)

24か月時点の死亡 33.2% vs 20.4%、RR 1.63(1.17-2.26)、p=0.003。重症TBI(GCS 3-8)では 41.8% vs 22.2%、RR 1.88(1.31-2.70)、p<0.001。

機序として、4%アルブミン製剤が低張(約260 mOsm/L)で頭蓋内圧を上げた可能性が議論されている。

ALBIOS(NEJM 2014、1,818例)

28日死亡 31.8% vs 32.0%、p=0.94。90日死亡 41.1% vs 43.6%、p=0.29。

敗血症性ショックのpost-hocサブグループでは90日死亡 43.6% vs 49.9%、RR 0.87(0.77-0.99)、p=0.03。探索的で多重比較の問題があるが、「sepsisはよさそう」という臨床的な直感の出どころはおそらくここである。

アルブミンの抗炎症作用について

アルブミンには膠質浸透圧以外の作用(抗酸化、薬物結合、血管内皮保護)があるとされ、これが臨床効果に寄与するかは議論が続いている。よく引用されるCrit Care 2015;19:156は原著研究ではなく単著の論説なので、これを根拠に断定することはできない。

SSC 2026は、2021年から向きを変えた

ここは押さえておく価値がある。

2021年 推奨34 大量の晶質液を投与された患者では、晶質液単独よりアルブミンの併用を提案する(弱い推奨・中等度の質)
2026年 推奨45 成人の敗血症・敗血症性ショックでは、輸液蘇生に晶質液+補充アルブミンより晶質液単独を提案する(弱い推奨・中等度の確実性)〔再評価〕
注記:すでに大量の晶質液を投与された患者、または肝硬変のある患者では補充アルブミンが適切な場合がある。外傷性脳損傷の患者では避けるべきである

推奨の向きが反転している。

パネル自身の解析

敗血症・敗血症性ショックの6 RCT・4,383例(うち69%=3,013例がALBIOSとSAFEから)で、28日死亡 RR 1.01(0.90-1.14)、中等度の確実性。90日死亡、新規臓器障害、人工呼吸器・血管作動薬非使用日数、腎代替療法の必要性、いずれにも効果がなかった。利益が証明されていないこととアルブミンの高コストを踏まえた、と書かれている。

ただし注記は、単なる逃げ道ではない

パネルは、アルブミンで血圧が高くなること、静的充満圧が高くなること、正味の輸液バランスが少なくなることを根拠に、すでに大量の晶質液を受けた患者にはアルブミンを提案する、と明記している。肝硬変については別の推奨として残っている。

日本のガイドラインは何と言っているか

改訂第3版の推奨は、一段強い。

CQ1(1) 集中治療を要する重症患者での循環血液量減少における血管内容量補充を目的とした等張アルブミン製剤の使用は推奨されない(使用しないことについての強い推奨:1A
CQ1(2) 循環血液量減少性ショックでは、病態を考慮した上での膠質液(アルブミン製剤またはHES)の使用が提案される(2B)
CQ2(1) 敗血症および敗血症性ショックに対する等張アルブミン製剤の使用は、晶質液と比べて死亡率を改善する効果はない(使用しないことについての強い推奨:1B
CQ2(2) 敗血症の初期治療ではアルブミン製剤ではなく晶質液を使用し、大量の晶質液輸液が必要な場合に限り循環動態を安定させる目的でアルブミン製剤を使用することが提案される(2C)
CQ7(重症熱傷) 総輸液量減少や腹腔内圧上昇の抑制、合併症予防を目的とする場合に等張性電解質輸液にアルブミン製剤を併用することが考慮される(2C)

熱傷については「悪そう」ではなく、限定つきで「考慮される」である。

まとめると

アルブミンが明確に悪いと言えるのはTBIである。1998年のメタ解析ではなく、SAFEとSAFE-TBIを根拠にする。

そしてこれは6章のバランス晶質液のTBI例外と揃う。TBIの輸液は、他の病態とは別に考える必要がある。

10やりがちな失敗

1「血管内:間質:細胞外液=1:3:8」と覚えている

細胞外液は血管内+間質なので定義が矛盾する。正しくは細胞内:間質:血管内=8:3:1。「等張液の1/4が血管内に残る」は別概念で、混ぜない。

2教科書のStarlingの図のまま、膠質液を選んでいる

静脈側での再吸収は定常状態では成立しない。半透膜はグリコカリックスで、濾過された液はリンパとして還る。膠質液が血管内に留まる効果は毛細血管圧が高いときにしか現れない。

3敗血症でアルブミンなら血管内に留まると考える

グリコカリックスが剥落して、保持能力そのものが落ちている。

4「腎不全なら乳酸リンゲル、肝不全なら酢酸リンゲル」と教える

酢酸を代謝しているのは主に骨格筋と心筋で、ケトン産生が亢進した状態では肝腎はむしろ産生側に回る。腎は投与乳酸の20〜30%(アシドーシス下では最大44%)を処理するので、腎不全ではむしろ乳酸の処理が落ちる。結論(どちらでもよい)は正しいが、理由づけが逆になっている。

5SALT-EDを根拠に「バランス晶質液のほうが予後がよい」と言う

SALT-EDの主要評価項目は差なしで、有意だったのは副次のMAKE30である。BaSICSとPLUSはいずれも陰性。ICU全体のメタ解析でも信頼区間は1をまたぐ。ただし敗血症に絞れば、SSC 2026の解析で新規RRTはOR 0.86(0.74-0.99)、高い確実性である。

6TBIにバランス晶質液を使う

BaSICSのTBIサブグループでHR 1.48、個別患者データメタ解析でもOR 1.42。SSC 2026も推奨44の注記でこの集団には0.9%生理食塩水を提案している。

7TBIにアルブミンを使う

SAFE-TBIで24か月死亡 RR 1.63、重症TBIでは1.88。SSC 2026の推奨45も注記で「外傷性脳損傷の患者では避けるべきである」と書いている。

8「フィジオ」で一括りにする

フィジオ140はNa 140でMgを含み、フィジオ70はNa 70でMgを含まない低張液である。

9Mgを含む製剤の禁忌を確認しない

Mgを含むのはビカーボン・ビカネイト・フィジオ140の3つで、いずれも高マグネシウム血症と甲状腺機能低下症が禁忌である。フィジオ70は該当しない。

10「日本はHESに無警戒」と思っている

2023年1月に重症敗血症が禁忌に追加され、警告欄には「重症患者管理での使用は患者の状態を悪化させるおそれがある」と明記されている。むしろEUのほうが猶予条項で骨抜きになっている。

111998年のCochraneを根拠に「アルブミンは有害」と言う

SAFE(6,997例)で実質的に否定されている。アルブミンが明確に悪いと言えるのはTBIである。

12注射用水の害を溶血だけだと思っている

FDAの添付文書には、溶血に続くヘモグロビン起因性の腎不全の報告が明記されている。

11早見表とTake home

項目 押さえること
体液区分 細胞内:間質:血管内=8:3:1(体重の40:15:5%)。等張晶質液1Lで血管内に残るのは約1/4=250 mL。これは別概念
5%ブドウ糖 278 mOsm/L。投与時は等張だが代謝後は自由水。血液製剤と同一ルートで溶血・偽凝集
注射用水 溶血に加えてヘモグロビン起因性の腎不全の報告あり(FDA添付文書)
Revised Starling 半透膜はグリコカリックス。定常状態での再吸収は起こらない(no absorption rule)。濾過液はリンパとして還る
帰結 膠質液が血管内に留まる効果は毛細血管圧が高いときのみ。敗血症ではグリコカリックス剥落で保持能力自体が落ちる
COP Landis-Pappenheimer式 2.1×TP+0.16×TP²+0.009×TP³(TPはg/dL)。健常成人で約25 mmHg(実測平均25.4)
高Cl性アシドーシス StewartのSID説と、緩衝塩基のみ希釈される説。両方持っておく
乳酸 vs 酢酸 酢酸の主な利用臓器は骨格筋・心筋で、ケトン産生亢進下では肝腎は産生側。乳酸は肝が第一、腎が第二(20〜30%、アシドーシス下で44%。pH別の数値は動物実験)。HEMACETATでは血行動態に差なし
バランス晶質液 SMART・SALT-EDはMAKE30で有意、BaSICS・PLUSは陰性。ICU全体のメタ解析はRR 0.96で信頼区間は1をまたぐ。ただしSSC 2026の敗血症サブグループ解析では死亡 OR 0.94(中等度)、新規RRT OR 0.86(0.74-0.99、高い確実性)
SSC 2026 推奨44 バランス晶質液を提案(弱い推奨・中等度、2021の低い質から格上げ)/推奨45 晶質液単独をアルブミン併用より提案(2021から向きが反転)/推奨46 starchは使わない(強い推奨・高い確実性)
TBIの例外 バランス晶質液もアルブミンもTBIでは害。SSC 2026は推奨44・45の注記でいずれも0.9%生理食塩水を助言している
フィジオ 140はNa 140・Mg含有、70はNa 70・Mg非含有の低張液。別物
Mg含有製剤 ビカーボン(Mg 1)・ビカネイト(Mg 2)・フィジオ140(Mg 2)は高Mg血症・甲状腺機能低下症が禁忌
HES VISEP・6S・CHESTで腎代替療法が一貫して増える。日本では2023年1月に重症敗血症が禁忌へ追加。1日50 mL/kg上限
アルブミン SAFEで全体は差なし。明確に有害と言えるのはTBI(SAFE-TBIで24か月死亡 RR 1.63)。日本のGLは改訂第3版(2024年)でCQ1・CQ2とも「使わない」が強い推奨

Take home

  1. 「8:3:1」と「1/4しか残らない」は別の話である
  2. 教科書の「静脈側でアルブミンが水を引き戻す」図は、定常状態では成立しない
  3. 半透膜は血管壁ではなくグリコカリックスで、濾過された液はリンパとして還る
  4. 膠質液が血管内に留まる効果は、毛細血管圧が高いときにしか現れない。我々が一番使いたい低血圧の場面が、理屈が最も効かない場面である
  5. 敗血症ではグリコカリックスが剥落し、アルブミンの保持能力そのものが落ちる
  6. 酢酸の主な利用臓器は骨格筋と心筋である。「腎不全なら乳酸リンゲル」は逆
  7. バランス晶質液は、ICU全体では効果があっても小さい。ただし敗血症に絞ると腎代替療法はOR 0.86(0.74-0.99)で高い確実性。死ぬかどうかは変わらないが、透析にかかる人は減る
  8. TBIだけは逆で、バランス晶質液もアルブミンも不利である。SSC 2026も推奨44・45の注記で0.9%生理食塩水を助言している
  9. フィジオ140とフィジオ70は別物である
  10. HESについては、日本の添付文書のほうがEUより厳しい。読むべきは添付文書である
  11. アルブミンが明確に悪いと言えるのはTBIである。1998年のメタ解析ではなくSAFEとSAFE-TBIを根拠にする

これで循環管理シリーズの①②③がそろった。①で灌流圧と酸素運搬という2本の軸を立て、②で入れるかどうかの判断を、③で何を入れるかを扱った。

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